北山猛邦 01


『クロック城』殺人事件


2002/03/18

 今年は歴代メフィスト賞受賞作家による『密室本』の刊行が予定されており、既に何作かは刊行済みである。そうこうしている間にもメフィスト賞受賞作品は続々と誕生しており、第24回受賞作品である本作は早くも今年二作目の受賞作品だ。

 この作品、謎解き部分が袋綴じになっている。メフィスト賞受賞作ではもちろん初の試みであり、僕が知る限り他の国内作品では例がない。こりゃ『密室本』との相乗効果を狙ったとしか思えないではないか。そしてあっさりと講談社の軍門に下る僕。

 松田聖子風に言うとビビビときました、これ(ネタが古いな…)。こういうトリック命な作品は久しぶりだ。袋綴じにするだけのことはある。馬鹿にする人は徹底して馬鹿にするだろう。どうぞ馬鹿にしてください。僕は拍手喝采を送るぞ。

 カバーに描かれた三つの時計。本作の舞台は、三つの大時計を持つ『クロック城』だ。終焉間際の世界設定とか、登場人物とかはこの際どうでもよろしい。主役は『クロック城』だ。IT時代の現代にだってまだネタは残っていたんだ。嬉しいじゃないですか。

 『クロック城』と聞くとどうしても思い出すのが綾辻行人さんの『時計館の殺人』である。著者の北山猛邦さんが綾辻さんの「館」シリーズを愛読しているのかはわからないし、意識して書いたのかもわからない。けれども、僕は両作に同じスピリットを感じる。本作は偉大な先人へのオマージュだ。と勝手に思うことにしよう。

 嬉しさを感じると同時に北山さんの今後の苦労が予想される。この路線で勝負するのかわからないが、匹敵するネタはそう簡単には思いつくまい。『消失!』一作のみを残して作者も消失(失礼…)してしまった中西智明さんを思い出さずにはいられない。

 綾辻さ〜ん、『暗黒館の殺人』待ってますよ! 中西さ〜ん、元気ですか! そして北山さ〜ん、期待してますよ!



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