北山猛邦 05 | ||
『ギロチン城』殺人事件 |
メフィスト賞受賞作『『クロック城』殺人事件』でデビュー以来、物理トリックに注力し続ける男がいる。現在では数少ないその作家の名は、北山猛邦。
実は、第二作『『瑠璃城』殺人事件』はデビュー作のインパクトと比較して今ひとつに感じられた。その後さっぱり新刊のチェックもしていなかったところへ、最新刊『『ギロチン城』殺人事件』が刊行されているとの情報をいただいた。
いつの間にかデビューから約三年。久しぶりに手に取った。いやあ、最初から凄いなこりゃ。前置きも何もなく舞台となるギロチン城へ移動する。自称「探偵」の何たるふてぶてしさ。いくら登場人物を「記号化」するったって名前が一、二、三、四、五ってどうなのさ。
ここまでトリック以外に魅力を見出せないのはある意味見事だ。物語性ゼロ。不発に終わったら救いようがないぞ。潔いと言うべきか無謀と言うべきか。さっさと読み進める。
このジャンルは「そんなのありか」と言い出したらきりがないし、無粋というもの。大仕掛けを笑って楽しむくらいの度量は持ち合わせているつもりである。だからこれは「あり」だ。でも「やられた」とは思わなかった。こんなに凝っているのにである。
デビュー作の素晴らしかった点は、メインのトリックが一目瞭然だったことにある。図を多用して説明しなければならないトリックでは、あーだこーだ考えているうちに「やられた」感が薄れてしまうのだ。それ以前に、ちゃんと理解するのが面倒になったが。
最後に、期待しているからこそ言おう。物理トリックにこだわるのは大いに結構。しかし、トリックだけでなく内容にも深みを持たせていかないと、今後は苦しいだろうと思う。
あっ、『『アリス・ミラー城』殺人事件』買っておいたの忘れてた…。