京極夏彦 31 | ||
冥談 |
前作『幽談』と比較すれば、凝っている装丁。装丁はともかく、内容も前作よりは読み応えがあるか? とはいえ、評価に困るのは相変わらず。
『幽談』に対する僕の評価はかなり辛い。シリーズはこれで終わりにするのが賢明だとまで書いてしまったが、続編が出たとなると条件反射で買ってしまう。前作よりは、全8編に共通性を感じる。『冥談』というタイトル通り、日常にぽっかり空いた冥界への入口をテーマにしている…という理解で正しいんでしょうか、京極先生。
病気療養中の友人を訪ねてみると…「庭のある家」。怪談とはいえ無茶苦茶な展開だが、1編目から結末の余韻がなかなかで、これは期待していいかも? と読み進める。「冬」。幼い頃は、盆や正月には親戚が集まって賑やかだったものだが…うーむ。
本作の一押しを挙げるならこれか、「風の橋」。浅川マキの「赤い橋」をBGMにすると、さらに盛り上がるだろう。というか、この曲の方がはるかに怖えよ…。興味がある方は検索してみよう。なお、タイトルの「風」は「几」の中に「百」が入るのが正しい表記である。
岩手出身なので興味深く読み始めた「遠野物語より」。遠野は実家から近いので知っている地名が多く出てくるが…遠野を誤解していませんか??? 「柿」から虫が出てくる方が、下手な怪談よりよっぽど怖いと思うのは僕だけか。
全体から浮いている気がする「空き地のおんな」。恋人(?)の罵倒がメインで、これは怪談と言えるのか…。「予感」。ぐだぐだ家についての持論を述べておいて、この結末。「先輩の話」は、どちらかというとしんみりするんですが。
シリーズ2作を読み終えて思った。怪談とは読むものではなく聴くものだと。熟達した語り口があってこその怖さなのだと。京極さんは『どすこい(仮)』『南極(人)』で小説でお笑いをやる難しさを実証したが、『幽談』『冥談』では小説で怪談をやる難しさを実証したように思う。本作収録の各編も、朗読を聴けば怖さが違ってくるのだろう。