京極夏彦 39

ルー=ガルー2

インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔

2011/10/19

 前作『ルー=ガルー 忌避すべき狼』から実に10年ぶりとなる続編である。単行本、ノベルス、文庫、電子書籍の4形態同時発売も大きな話題となったが…。

 少女たちを襲ったおぞましい事件から3ヵ月。前回の事件の被害者・来生律子のもとを、謎の毒を持った作倉雛子が訪ねてくる。彼女は小壜を律子に託し姿を消した。というわけで、作中ではあれから3ヵ月しか経っていない。節番号が032から始まっていることからもわかるように、本作はガチガチに前作を引き継いでいる。

 …でもねえ、前作を読んだのは10年前だし、内容はもちろん、6人の少女のキャラクターもまったく覚えていない。そんな状態で読み始めたのはちょっと厳しかった。前作が先月にようやく文庫化されたのは、予習してねというメッセージだったのか。

 前作を再読しなかった僕が悪いのだけど、序盤はとにかく乗れないのが辛かった。6人の少女の周囲で、何やら新たな陰謀が渦巻いているのはわかるのだが。しかし、凶暴化する児童や未登録住民の暴動など、伏線はしっかり張られていたのである。

 「毒」の正体は。そして神崎ケミカルコーポレーションは何を研究しているのか。それが物語の根幹をなす謎だが、ようやく核心に迫ってくるのは残り100p近くになってから。つまり、盛り上がるのもそこからである。裏切りに呆れる理屈。そんな効果は嬉しくないぞ。残り少なくなるほど真相は二転三転する。派手なアクションのおまけつき。

 で、最後の最後に明かされた真相は…めちゃくちゃ個人的な理由じゃないかよっ!!!!!!!!!! 約600pを割いてきて何じゃそりゃ。が、脱力してふと思う。京極堂シリーズだって基本的にはこんな感じだよねえ。だから京極作品らしいといえばらしい。カバー表裏の萌えイラストを見るに、漫画やアニメへの展開も考えているのか。

 立ち読みした講談社の文庫情報誌「IN★POCKET」によると、本作は前作の続編であると同時に、『邪魅の雫』の続編でもあるらしい。……。あの点くらいしか繋がりがないような気がするが、構図は似ているか? 本作は本来10年前に書かれるはずだったという。予告されている第3作は、記憶が残っているうちに刊行していただきたい。



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