舞城王太郎 08 | ||
好き好き大好き超愛してる。 |
今話題の(もう古いか?)『世界の中心で、愛をさけぶ』というタイトルを目にしたとき、天邪鬼な僕はよくそんなタイトルをつけられるよなあと思った。もちろん本を読む気もなければ映画を観る気もない。ちなみに『冬ソナ』ブームってまだ続いているのか?
覆面作家による芥川賞候補作として話題となった『好き好き大好き超愛してる。』というタイトルを目にしたとき、舞城王太郎でなければこのタイトルはつけられないと思った。これは読まなくては。ちなみに芥川賞関係者は他の作品にも目を通しているのか?
いやはや。文体こそ舞城王太郎のものだが、内容は驚くほど綺麗なラブストーリー。この一見ふざけているようなタイトルが、舞城さんの照れ隠しなのは明らか。特に最後の演出は、読んだこともないくせに『セカチュー』よりうまいと思った。だが…読み終えて何だか物足りない。傑作とまでは言えないだろう。
結局本作は芥川賞受賞を逃した。芥川賞は直木賞以上に興味がない僕だが、正直なところ、本作が受賞していたら「また」話題作りかよと勘繰っていたに違いない。二人の史上最年少の女性受賞者が出た前回のように。
エグい作風の舞城さんがこんなラブストーリーを書いてしまった。僕が驚いたのはその落差に対してだったのではないか。本作は綺麗すぎて、『煙か土か食い物』はエグすぎると感じる僕は我ながら勝手なものだが、『阿修羅ガール』はエグさとハートフルな面がうまく融合した傑作だったと改めて思う。
本作で舞城王太郎を知り、恋愛ものの作家だと勘違いした読者が、同時収録の「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」を読んだらどう思うだろう。というより最後まで読み通せるか? かく言う僕自身難儀したが、こっちの方が生き生きしている気がする。