舞城王太郎 17 | ||
短篇五芒星 |
講談社曰く、「今年もマイジョウの夏が来た! 真夏のMAIJO祭り2012」なのだそうだが、約2年ぶりの新刊は全5編からなる短編集である。「群像」2012年3月号に一括掲載されたばかりだが、第147回芥川賞候補に入ったためか緊急刊行された。
相変わらず、意味を深く考えてはいけない作品が並んでいる。「美しい馬の地」は、流産に激しい怒りを感じる男が主人公。流産の情報収集に没頭した結果、彼女とは別れた。流産を経験したが現在は子供がいる同級生に、水子供養をさせてくれと懇願する。こりゃ作中の同級生じゃなくても引くわ!!! 彼の必死さだけは伝わってきたが…。
「アユの嫁」。姉が鮎と結婚してしまった。紹介された相手はどう見ても人間にしか見えない。しかし、鮎だという…。その突拍子もない設定を除けば、至って日常的な家族の話なんだよなあ。ラストで夫婦に持ち上がった大問題とは。なぜ「鮎」???
「四点リレー怪談」。結構おなじみなこのネタを、舞城流に料理するとこうなる。名探偵本郷タケシタケシは『イキルキス』に出てきたっけ? 馬鹿馬鹿しいといえば馬鹿馬鹿しいが、おなじみのネタをここまで突き詰め、発想を飛躍した例は初めてかも。
比較的おとなしい作品が3篇続いたが、残り2篇はややエグい。「バーベル・ザ・バーバリアン」に登場する彼が、暴力的衝動に走るのは、過去のあの出来事のせいだという。不可解さと理不尽さがまかり通っているこの世の中を思えば、こういうのもありか?
ラストの「あうだうだう」に至ってはお手上げと言うしかない。それは神だが、悪だという。悪だが、殺す必要はなくちょっと叩くだけだという。しかし、その準備のために動物が殺される。あうだうだうとデートDVの話がどう繋がるのか。繋がらずに終わったし…。
舞城さんはこれで3回目の芥川賞候補入りだが、過去に候補入りした『好き好き大好き超愛してる。』や『ビッチマグネット』と比較して、一般受けはしないであろう本作は、やはり頭が固い選考委員諸氏には受け入れられなかったか…。