道尾秀介 11 | ||
花と流れ星 |
デビュー作『背の眼』と続編『骸の爪』は、道尾秀介さんの唯一のシリーズ作品だったが、本作はそのシリーズキャラクターである3人、「真備霊現象探究所」主宰の真備、助手の凛、友人でミステリー作家の道尾が登場する連作短編集である。
『背の眼』に対する僕の評価は、我ながらかなり辛い。ちょっと言いすぎたかなあという気もしないでもないが、少なくともこのシリーズに思い入れはない。
最初の「流れ星の作り方」は、最後の落とし方といい、本作中では数少ない「らしい」1編と言える。少年の切なる願いは、流れ星に届くのか。
「モルグ街の奇術」は、マジシャンを名乗る男の怪しさがいいねえ。古今東西、消失トリックには枚挙にいとまがないが、彼が挑戦してきた、戦慄の消失トリックとは? このシリーズにしてはオーソドックスな本格かなあと思っていたら…。
子供心の複雑さに迫る「オディ&デコ」。小さな依頼者の真剣な悩みを、大抵の大人は笑い飛ばすだろう。何だかハートウォーミングにまとまっていて、「らしくない」なあ。いい意味で裏切られた好編。本作中唯一の心霊ものかと思っていたら…。
かつてある新興宗教の教祖を言い負かし、教団を潰したという真備が、本陣に乗り込む? 「箱の中の隼」は、ずばり宗教ネタ。苦笑しながら読んでいたが、一番裏をかかれたのは依頼者の女性の行動だった。終わってみれば合理的な1編。
最後の「花と氷」は…同情する点は多々あるのだが、その論理は勝手すぎるだろうよ。ラストを飾る1編は、本人が大真面目なだけに、滑稽さが際立つ。
探偵役の真備に霊現象の探求者としての出番はない。そういう意味ではシリーズを知らなくても支障なく読めるだろう。しかし、この3人が登場しなければならない必然性は弱い。道尾作品としては読み応えは軽いかなあ。