森 博嗣 15

そして二人だけになった

Until Death Do Us Part

2000/12/04

 本作は、新潮ミステリー倶楽部の一冊として刊行された。初めて講談社ノベルス以外から刊行された森ミステリィである。

 最初に、私見であることを断っておきたい。森作品のワースト1を挙げるとすれば、僕は迷うことなく本作を挙げる。読み始める前の期待と、読み終えた後の虚脱感。これほどの落差を感じた作品はない。

 何がそんなに気に入らないのか。困ったことに、それを書くのは完全なネタばれである。それでも敢えて一言で言うなら、本作が森作品であること、だろうか。

 盲目にして美形の天才科学者勅使河原潤と、そのアシスタントである森島有佳。二人を含めた六名の男女が、巨大な海峡大橋を支えるアンカレイジ(重りみたいなものか)の内部に作られた施設に集められた。海水に囲まれ、完全な密室となった施設内で起きる、連続殺人事件…。

 で…何だよこの結末は。こんなの、『すべてがFになる』どころじゃなく何でもありじゃないか。僕が一点だけ本作を誉めるとすれば、この結末にも関わらず最後まで引っ張ったことくらいである。実際、わくわくしながら読んでいた。結末に至るまでは…。

 本作は、「瀬在丸紅子」シリーズの第一作『黒猫の三角』の直後に刊行された。両者の結末は、似ていると言えなくもない。「黒猫の三角」は、それはないだろうと思いつつ渋々ながら消化できた。しかし本作は、森作品だからこそ受け入れられない。それはある意味で、僕が森作品にどっぷりとはまっている証拠なのかもしれない。

 最初にこの種のネタを使った作家は、一体誰なのだろう。このネタで読者を驚愕させ、なおかつ納得させられる作品があったら、お目にかかりたい。



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