森 博嗣 16

人形式モナリザ

Shape of Things Human

2000/07/25

 新シリーズ第2作。ここからが本番だ。後から知ったのだが、このシリーズの主人公は曲者の保呂草潤平ではなく、瀬在丸紅子らしいので、「瀬在丸紅子」シリーズと呼べばいいのかな。森さんのページでは「V」シリーズと称している。

 避暑地に建つ私設博物館「人形の館」を訪れた一行。そこにある常設ステージで、衆人環視の中「乙女文楽」の演者が謎の死を遂げる。被害者の一族では、二年前にも新婚の青年が殺されていた。悪魔崇拝者だった彼は、「神の白い手」に殺されたと、若き未亡人は主張するが…。

 新シリーズに突入しても、何だかんだで森さんは密室がお気に入りのようだ。森作品としてはオーソドックスな部類に入るだろう。悪魔崇拝云々についても一応謎は解ける。悪魔崇拝者だったのは、実は…。

 瀬在丸紅子を含めた三角関係らしきエピソードが出てくるが、シリーズの今後に関わる伏線なんだろうか。犀川と萌絵の仲ほど興味を惹かれないけど。そして、今回もやはり保呂草は曲者だった。彼の便利屋という肩書きには、〇〇稼業も含まれているのか? でも、〇〇としては間抜けだな。だから大目に見ておこう。

 ラストの一行で、読者を襲う衝撃の真実―と裏表紙には書いてあるが??? さっぱりわからない。この割り切れないところが森さんらしいんだけど。『すべてがFになる』を読んだ後のような、釈然としない感覚を味わった。意味を問うのは森ファンとしては野暮なんだろうけど、誰か教えて。

 シリーズの既刊作品の中では一番面白かったかな(注・第4作『夢・出逢い・魔性』刊行時点の感想です)。



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