森 博嗣 28

墜ちていく僕たち

Falling Ropewalkers

2001/07/01

 むぅ…これ、ハードカバーで出しますか? 森博嗣のネームバリューがなければ到底商品にならない気がする…。

 『スカイ・クロラ』、『封印サイトは詩的私的手記』と三冊セットで購入したファンは多いと思うが、こりゃ森作品は無条件に好きというくらい重度の森フリークじゃないとついて行けない世界じゃなかろうか。悪いけど僕にはついて行けません。などと言いつつ、森作品だから無条件で買ってしまった僕だが。

 僕自身、森さんの小説にはすべて目を通しているし、一ファンのつもりでもある。だが、全作面白かったとは思っていない。既刊、新刊作品を読み漁りつつ、今一歩踏み込めないもやもやしたものの存在を感じてもいた。そんな僕にとって、本作はうまく言葉で表せないもやもやを凝縮したような作品だろう。

 どういうわけか、男が女に、女が男に…という内容の全5編を収録している。きっかけはある食べ物(隠すほどのことでもないのだが)。ネタ自体はそれはそれでいい。だが…オチがないのよ、オチが。そもそもオチを要求するのが間違いか?

 最初の数行を読んだ時点で、既に拒絶反応を示していたのだが、何とか読了しましたよ。全5編を読み通せば何かが浮かび上がるのでは、という淡い期待を抱きつつ。読み終えた結果、残されたのは膝カックンを食らったような脱力感のみ。

 未読の方に先入観を与えてはいけないと思うが、それでも断言せずにはいられない。『工学部・水柿助教授の日常』とは比較にならないほど、一般の読者にはお薦めできない作品である。「瀬在丸紅子」シリーズの小鳥遊練無が好きな方は楽しめるかもしれない。



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