西澤保彦 28 | ||
聯愁殺 |
中町信さんの『新人賞殺人事件』(創元推理文庫版は『模倣の殺意』に改題)に続き、書店で平積みになっている作品を手に取ったわけである。西澤保彦さんの作品はこれが初。『本格ミステリ・ベスト10』では常連であり、その筋の評価は高そうだが…。
連続無差別殺人犯に狙われ唯一生き残った女性が、大晦日の夜、〈恋謎会〉の集まりに招待された。推理作家や警察OBなどのメンバーが、それぞれ自説を語る。事件発生から4年。女性が何より知りたいのは、犯人の動機だった。
まず本質ではない批判をすると、どうして登場人物が難読な珍名ばかりなのだろう。おかげで、さほど込み入った設定ではないのに、読み進めるのに難儀した。途中から誰が誰だか確かめるのも面倒になった。珍名好きなのは本作に限ったことではないようだが。
様々な説が披露されてはひっくり返され…という一幕劇は、恩田陸さんの『木曜組曲』など、僕も読んだ作品にも例がある。こういう構成では、どうせ最後の最後以外は外れなんだろうと思うと、読むのに身が入らないのが難点である。しかも珍名揃いだし。
作中の推理作家の発想は、推理作家らしくこじつけっぽい。では、警察OBの説に説得力があるかというと…。珍名人物が珍説を語るのは何だか滑稽だ。話としてはシリアスなはずなのに。わらにも縋る思いでやって来た女性が、苛立つのも無理はあるまい。
終盤に近づくほど新しい情報が出てくるのはまあいい。極論すれば、ミステリーとは情報の出し惜しみで成り立っているのだから。そして真相。まったく驚かないということはないが、警察はなぜ見抜けなかったのかとか、突っ込みどころばかり浮かんでくる。
本作の本当の驚きは、おそらく真相が明らかになった後なのだろう。読者によっては戦慄するだろうが、僕はただ唖然とした。おいおい、どうしてそんなにあっさりと…。論理の無茶苦茶さという点では、確かに僕が読んだ作品中No.1かもしれない。
難物だったが、勝負していることは認めなければならない。