貫井徳郎 12


妖奇切断譜


2000/06/11

 九条惟親、朱芳慶尚のコンビが登場する第二弾。前作『鬼流殺生祭』は、個人的に納得できない点が多かったのだが、こちらはたっぷりと楽しめた。さしずめ、貫井節爆発といったところか。

 オープニングから、いきなり無残な死体の山である。その後もバラバラ死体のオンパレードだ。考え得るだけの猟奇的要素がすべて詰め込まれていると言えるだろう。そのあまりの徹底ぶりに、全身が粟立つほどぞくぞくすると同時に滑稽ささえ感じた。こういう猟奇的な作品が苦手な方は、最初から読まない方がいいだろう。

 戊辰戦争の傷跡が色濃く残る「明詞」の帝都東京で、美女の斬殺死体が次々と発見された。奇妙なことに、死体は必ず一部が持ち去られ、稲荷神社に捨てられていた。またしても事件に関わることになった九条は、今回も朱芳の推理に頼ろうとするのだが…。

 前回の事件の影響で、さらに病状が悪化した朱芳が痛々しい。しかし、前回は朱芳はあくまで部外者だったが、事件が進むにつれて他人事ではなくなってくる。朱芳を待ち受けていたのは、病状に追い討ちをかけるような過酷な結末だった。朱芳の心中、察するに余りある。

 真犯人のあまりにも身勝手な犯行動機に、驚くと同時に呆れてしまった。家系に対する異常なまでのプライドの高さ。これには、公家の三男坊である九条惟親としても、苦虫を噛み潰すような思いだっただろう。『天使の屍』における「子供の論理」以上に、「公家の論理」は理解しがたい。

 このシリーズは今後も継続するようである。果たして朱芳は立ち直れるのか、気がかりでならない。



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