奥田英朗 24


噂の女


2012/12/04

 約2年ぶりの奥田節は、難しいことなど何も考えずに読める。ミステリーではないと言い切っていいだろう。だって、先の展開が見え見えなんだもの。

 地方都市のしがらみを描いたという点では『無理』を彷彿とさせるが、全体的な乗りは『ララピポ』に近いだろうか。これはブラックジョークだ。地方都市を舞台に暗躍する、1人の女。そして「彼女」にあっさり手玉に取られる人間たち。

 全10編からなる連作長編は、各編のタイトルが「○○○の女」で統一されている。序盤では本性を出さない「彼女」だが、地方の有力者に次々に取り入ってパトロンにし、しかも彼らは怪死を遂げていく…と、あまりにも露骨なのである。

 男たちは言い含められ、女たちは怪しいと確信しつつ証拠がないので動けない。全編で同じパターンが徹底され、「彼女」のパトロンもどんどん大物になっていくのだった。展開の予想が容易なので、来るぞ来るぞと思いながら苦笑してしまう。

 あまりにもベタな展開以外の読みどころとしては、やはり地方都市の描写が挙げられるだろう。誇張しているが、地方出身者なら頷く点が多いのでは。

 娯楽といえばパチンコか麻雀か酒か。談合は悪と言うけれど、公共工事を分け合わなければ生きていけない建設業者。寺に頭が上がらない檀家。ヤクザ以上に賄賂まみれな公務員、警察、政治家…。しかし、不思議と彼ら地方の人間たちが憎めない。

 帰省して地元の同級生と飲んで思ったのだが、僕に帰る場所があるのは震災後も地元に残って支える人たちがいるから。というのは脱線だが、やはり郷里は愛おしい。

 僕の勝手な想像だが、「彼女」の原動力は、都会に対するある種のコンプレックスなのではないか。1人の女が地方都市でのし上がるにはどうするか。「彼女」の結論が、あれらの行動だった。普通に起業しても成功しそうな気がするが。

 「彼女」が目指す到達点は、果たしてどこか。



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