恩田 陸 01 | ||
六番目の小夜子 |
短編集『図書室の海』を買ったところ、本作『六番目の小夜子』にまつわる短編が収録されていることを知った。というわけで、この機会にデビュー作をまず読むことにした。
とある地方の進学校で受け継がれている奇妙なゲーム。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。「六番目の小夜子」が誕生する今年、謎めいた美しき転校生、津村沙世子がやって来た。
一言で述べれば実に「らしい」作品である。デビュー作にして、その後の作品に見られる恩田陸のエッセンスがぎゅっと詰まっている。当然ながら、そのように言い切れるのは僕がある程度恩田さんの作風を把握していたからである。
今でこそ、恩田陸の作品は読者の想像力が試されると理解しているが、デビュー作でいきなり試されるとは。しかも難易度は高い。もちろん詳しくは書けない。本作が最初に読んだ作品だったら、狭量な僕は果たして他の作品も読もうと思ったかどうか。
あれこれ考えずに青春物として読むのがいいのかもしれない。受験を控えた高校三年生という立場。誰もが通る道。学園祭のシーンに懐かしさが込み上げる。友情、そして…僕の苦手な恋愛。ああなんて純なんでしょ。そして旅立っていくのさ。
しかしごめんよ、僕はミステリー読みなのさ。だから、サヨコ伝説に没頭する関根秋の気持ちはわかる気がするなあ。だから、学園祭の芝居を最後まで聴きたいなあ。だから、だから、だから…。ある時はホラー、ある時はファンタジー。顔の数だけ「だから」が残された。
ところで、最初は気付かなかったのだが、主要人物の一人である関根秋は、『象と耳鳴り』に登場する関根一家の次男なのだった。ということは、歳の離れた兄と姉とは、春と夏。そして父は多佳雄。話が逸れるが、関根一家の再登場はあるのだろうか?
これから恩田作品を読もうと思っている方には、まず他の作品から読むのをお薦めしたい。もっとも、どうしても本作を最初に読みたいのならば止めはしないが。