恩田 陸 36


夏の名残りの薔薇


2005/02/03

 いくら考えても貶す言葉しか浮かんでこない。さあどうしたものか。時間はどんどん経過していく。このまま感想を書かずに済まそうか。でも、後日感想を掲載しますと言ったし…。

 昨年は『Q&A』、『夜のピクニック』とまったくタイプの異なる傑作をものにした恩田陸さん。舞台は山奥のクラシックなホテル。次々と起こる変死事件。いいじゃなーい本格ぽくって。

 私恩田陸♪ 多彩な作風の恩田です♪ 本格だってお手の物♪ 巧妙な仕掛けで読者に挑戦する渾身の一作…って言うじゃなーい?

 オープニングの「第一変奏」から、近〇〇〇だの不〇だの同〇〇だの倒錯した展開が繰り広げられる。お暇な方は人物相関図でも書いてみてはいかがだろう。不思議と不潔な印象はなく、むしろ清廉ささえ漂うのは恩田さんの筆致のなせる業。

 つかみは完璧。さて続く「第二変奏」は…ん? 「第三変奏」は…んん?? とりあえず読み進める。もはや疑問符も浮かばない。そして、まったく期待せずにクライマックスであろう「第六変奏」に至る。読み進む前に、ふうと溜息。読み終わり、やっぱりふうと溜息…。

 でもアンタ、これって単に反則ですから! 残念!

 ところどころに挿入されている意味不明の断片は、『去年マリエンバートで』という映画からの引用らしい。恩田さん、あなたがその映画に思い入れを持つのは自由ですけどね、ただでさえ辛い出来の作品を余計に読みにくくしているだけだ。映画を知っていれば感じ方が変わってくるのかもしれないが、自己満足を読者に押し付けるのか?

 恩田陸さんの最新刊はまた本格のようである。角川書店から刊行される『ユージニア』。本格の書き手としての恩田陸の力量を判断するのは、新刊を読んでからにしておこう。



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