恩田 陸 34


Q&A


2004/07/13

 …いやあ、こりゃすげえ。

 僕は恩田陸さんをどちらかといえばファンタジー系の作家と認識しているが、最もインパクトを受けた作品は『ドミノ』だった。『麦の海に沈む果実』のような「正統派」作品より、こうした異色作品の方が僕の感性に合致するようだ。

 そんな僕が、『ドミノ』を上回るインパクトを受ける作品に出会った。本当にすげえ。

 『Q&A』というタイトル通り、全編が質問とそれに対する答えという形式に貫かれているが、形式自体は決して目新しいとは思わない。なぜなら、宮部みゆきさんの『理由』は、事件の取材記録という形をとっており、本作の形式に近いと感じたからである。

 実際、序盤は事件関係者が記者から取材を受けたり、あるいは警察から事情聴取を受けているように思われる。しかし、読み進むにつれて『Q&A』という形式が本作の本質ではないことに気付かされる。そして、『理由』も不可解さが残る作品だったが、本作はより徹底して不可解だ。 

 『理由』の語り手、質問者は同一人物であり、マスコミ関係者やルポライターと考えることができるが、本作には何人の質問者がいるのか。彼らの正体とは、目的とは。そして…事件の背景とは、首謀者とは、目的とは。読めば読むほど不可解になっていくのに、奇妙にリアル。うーん、うまく言えないなあ。

 事件という非日常が、人を惑わせ、人を狂わせ、人を惹きつける様。それこそが本作の凄みだろう。その凄みを際立たせるために、『Q&A』という形式は打ってつけだったということだ。これは事件という魔物に魅入られた者たちのラプソディ。魔物はあらゆる者を飲み込み、また見る者によって姿を変える。最も魔物に愛でられたのは…。

 読者によってはブラックジョークと感じるかもしれない。個人的には☆☆☆なのだが、従来からの恩田陸ファンは本作をどう評価するだろう。



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