山口雅也 11


マニアックス


2001/02/11

 傑作と名高い『ミステリーズ』の姉妹編とのことである。内容は、ミステリーというよりブラックジョークのような、サイコホラーのような。僕はいけてると思うね、これ。 

 本作は、マニアックな人々の悲喜こもごもな話を集めた短編集である。初出時期はばらばらなのだが、いずれ単行本化することを視野に入れていたのか、収録順の妙なのか、うまいことまとまっている。

 最初の「孤独の島の島」がいきなりサイコホラー調の作品なので面食らうが、次の「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イブ」で笑わせてもらった。やや強引なところがまたいい。コレクションはまだまだ増えるんだろうか。「《次号に続く》」は、内容もオチも馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しいけど、僕は好きだな。

 続く2編はやや趣向が変わる。「女優志願」は、無声映画の時代が終わろうかという頃の話だが、現代に当てはめても書けそうだ。内容はサイコホラー。「エド・ウッドの主題による変奏曲」は、いわゆるB級映画に関するお話。言うなれば、B級小説を狙ったのか。わざと稚拙に書いたという実験的作品だが、かなり計算されている気がするぞ。

 「割れた卵のような」。悪趣味なタイトルといい、内容といい、本作の一押し。作中に出てくる鳥類の生態は、テレビで見た記憶があるが…。パジェル人なる人種の名誉に関わる気がするが、もちろん架空の存在なんだろうな。「人形の館の館」は、山口さんの密室物に対する現在の考え方を示しているそうである。クイーンなどの古典作品のファンには向かないか。確かにネタは出尽くしているけど。

 すっかり短編の作家になった山口さんだが、やはり山口さんの持ち味は短編でこそ発揮されるのか。実際、本作は長編に使ったら怒られそうなネタが多い。また、巻末のLINER NOTEからもわかる通り、山口さんご自身が筋金入りの「マニアック」であることを実感させられる。これも作家としての資質の一部なのだろう。



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