山口雅也 14


続・垂里冴子のお見合いと推理


2000/07/21

 本作に収録された4編の初出は、すべて集英社の「小説すばる」である。しかし、単行本はなぜか講談社刊。前作『垂里冴子のお見合いと推理』が講談社ノベルス化されたことといい、どういう事情があったのやら。

 4編中で印象に残ったのは、「薫は香を以て」である。綺麗になりたいと願う、女性の願望を逆手に取った話だ。エステや美容整形に関わるトラブルは時々ニュースになるが、ここまで悪意を持った例は聞いたことがない。表に出てこないだけかもしれないが。最近は男性でも化粧をする時代だし、メンズエステなるものも存在するが、やはり女性が読んだ方が怖い話かな。

 これ以外は…うーん、あまり印象に残っていない。申し訳ないが可もなく不可もなしといったところである。勝手なことを言うようだが、二作目ともなるとひねりを抑えすぎて山口さんの作品としては物足りない。

 本作も前作と同様に、垂里家の長女冴子の縁談にまつわる事件を描いているのだが、純粋に事件簿という趣きが強く、冴子の縁談話はおまけみたいなものである。冴子自身に積極性が感じられないのは前作と一緒なのだが、もう少し事件と縁談に深い関わりがあったように思う。「お見合いと推理」という、シリーズとしての特徴があまり出ていないような気がする。

 今回も冴子の縁談はまとまらないが、冴子がある決意をして終わる。まあ、結婚だけがすべてではないし、それもいいんじゃない? ただ、これでシリーズとして続けるのは確実に苦しくなっただろう。

 次から『〇〇垂里冴子の事件簿』になったりして…。



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