Fw190の主脚は前から見て直角に出きらずに半端な位置で出終わっているのが特徴ですが、これは、無駄に脚の長さを必要とし、(飛行中は意味のない)脚の収容容積が大きくなり、重くなる原因となるのに、なぜこのようなデザインなのでしょうか。

野原茂先生は「将来もっと大きな直径のペラにした時にまっすぐにすれば大改造をせずにかんたんに地上高が稼げるから」と推測されていますが、ペラを大きくしたら三点姿勢は変わっちゃうしトルクはでかくなるし前はもっと重くなるしで、いちから再設計したほうが早い気がします。じじつ、おっきくなったTa152は再設計になりましたが足の角度は斜めなままです。

Fw190の主脚にはダウンロックがありません。(アップロックはあります。)地上では主脚は斜めに突き出しているので、自重で機体から下に押されて脚柱は機体側に倒れようとします。機体から見れば地面に主脚を押し上げられて、たたむ方向へあえて力を加えられているといえます。

でも主脚折りたたみのアクチュエーターが折りたたみ時に曲がるのと逆の力を地面→主脚から加えられているので、主脚柱はロックされたのと同じ事になります。つまり自重を使ってダウンロックしているのですが、これは主脚が直角に近い場合だと力のかかりが弱い。斜めで常に倒れようとしているから逆にアクチュエータの関節に逆向きに掛かる力も強くなって都合がいいのです。

また、アクチュエータがわざわざ長い距離を回って機体側に折れるのもこれが理由なのではないでしょうか。

空中では、この「斜め」は緊急時の脚出しに効いてきます。

主脚が出きった時も、脚柱にはまだ重力によって横方向への力の成分が十分残っていて、外側への力がかかり続けています。アクチュエータも伸びきっているのでダウンロックはかかったも同然。緊急用脚出し空気バネもそんなに強い奴はいらない。

Ta152ではアクチュエータはダウンロック付きの油圧ジャッキになってるので斜めの理由は緊急時の脚出しのほうが重要なのかもね。

参考までに垂直な場合。

垂直な脚柱の飛行機なら、脚が出るにつれて横方向への力の成分がほぼなくなってしまうので重力による最終的な支援はほぼゼロです。だから緊急時には強力なバネを使ったり横滑りしたり垂直旋回したりしてダウンロックが掛かるまで主脚の展開方向に重力をかけてやらなければなりません。

タンク博士は緊急時の脚出しを重量や機体容積を犠牲にしても優先したわけでしょうね。

こういった点がサラブレッドじゃなくて「馬車馬」なんでしょうね。

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「飛行機の脚」
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