この飛行機の脚は、紫電やキ-60などと同じく、いったん縮んでから引き込まれますが、その方法は簡単で合理的で力づくです。

離陸後、機体の重量から解き放たれて、フォーク部分と図中黄色と赤で示された圧縮ロッドは伸びきった状態になります。

脚柱が機外からでは見えないアクチュエータによって畳まれはじめると、機体中心線からの脚柱の回転軸と、圧縮ロッドの回転軸の距離の差の分だけ、圧縮ロッドは脚柱の回転から置いていかれはじめ、結果的に脚のフォーク部を外翼側に引っ張る形になります。すると結果的に脚柱は縮んだことに!注意してほしいのは、ここで脚柱の緩衝装置内の緩衝材の位置が弁によって切り替るほかは、脚柱のアクチュエータ以外、なにも動力を使っていないことです!圧縮ロッド自体はただの棒なのです!難しいことをして油圧ポンプを酷使して脚柱の回転と圧縮に別々の系統を用意した紫電とは大違い!コストも安かったに違いありません!

脚柱の回転軸は、タイフーンなどと同じように、進行方向にむかって平面では内向きに、垂直面では上向きに取り付けてあり、前桁と中央桁の間にうまく収まるようになっています。

ここまで書いといて、なんですが、よく見ると地上での荷重で縮んだ脚の長さと、畳むためにちぢめられた脚の長さってかわんないので、模型で再現する必要はないかも。そのまま畳むとはいっちゃうと思う。でも、1/32のキットとかではやってみたいですよね。

ところが上部脚カバーの複雑さは特筆ものの複雑さです!

地上状態で圧縮ロッドが脚カバーから外翼側にはみ出すために、翼側にその穴をふさぐ小カバーを持っていて、やはり圧縮ロッドのために脚柱固定式にできなかった上部脚カバーは前後のヒンジの形を変えて脚柱の回転軸とは違う回転軸で回転します。そのために、脚柱とのリンク部分は回転可動します。これは脚柱が畳まれる行程で見掛け上回転するのに対し、脚カバーはそのまま倒れるようになっているためです。テンペストやミグ15シリーズなどではこんなに凝ったことはしていません。この複雑な機構は頭で理解するのが難しいため、今まで発表されたP-47の図面の多くは背面図の脚カバー部分を間違えているものが大多数です。

下図(寸法とか比例はいい加減ですよ。〕の左のように描いてあれば正解。右のように描いてある機体では脚をまえに突張ってだすことができません。地上姿勢の時とカバーの形が違ってるのは、どうも...ちなみに、翼側につく小カバーは開いたときに、進行方向にむかって少し前すぼみになるように角度がつきます。

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