タミヤからR35が出るって聞いて、嬉しかったです。
実は十年以上前にエレールのキットを頑張ってリサーチして作りかけてたんだけど、モデルカステンのキャタピラが切れまくって挫折してたのです。で、最近、フリウルからようやく金属キャタピラが出たので買って、作りかけのエレールを引っ張り出したらなんかボロボロに壊れてて・・・そんなときにタミヤからのアナウンスがあったのですよ。大喜びで買ってきて、シェリダン作りかけだったので急いで完成させてこのキットに取り掛かったのでした。
この戦車は歩兵への火力支援目的で、歩兵が進撃する際にじゃまになる敵の火点などに近接して、その37ミリ砲で潰してやるっていう・・・いわゆる歩兵戦車なんですが、軽戦車ってとこがフランス的なこだわりらしい。
歩兵砲に二人以上の人員を割く気はないと。
第一次大戦後の金欠にあえいでいたんで、しょうがないっすな。
装甲は40ミリって言うことですが、操縦手ハッチとかはそんなに厚くなさそう。
車体とか砲塔を鋳造でポンポン作ろうって発想は先進的ですね。
惜しむらくは欲しかった戦車へのイメージが貧弱だったということであって、アメリカ的に行けばシャーマンになったわけですよ。
サスペンションはゴム!黒いジャバラは金属バネのブーツじゃありません。無垢のゴムです!
そろばん玉的なゴムを、間に金属製のワッシャを噛ませて重ねてるの。中には金属のピストンとシリンダが通って型くずれを防いでます。
後ろの4個の転輪は、二輪で一組のボギーで連動しますが、第一転輪は独立してます。この第一転輪のサスの仕組みがわかれば可動にしたんだけどな(棒)!・・・負けです。それがわかるまでもう十年とか待てなかった・・・
うしろから。かわいいおしり。
タミヤの塗装指定の車両は、確か後ろに超壕のための、ルノーFT以来伝統のソリがついてたような気がするのですが、キットでは無視されてます。
売れたらソリ付きバージョンとか出るかな?
真上から。迷彩は適当。
砲塔と車体は塗装業者が別って聞いたんで微妙に違う色にしてみた・・・
乗員ハッチは全部可動にしました。この戦車のハッチは可動部多くて、謎も多くて、エレールに取り組んでた頃にはわからないことだらけだったんですが、ようやく一つづつ謎が解けていったのです。
長生きしてよかった!
フランス戦車の愉快なところは、この砲塔のキューポラです。
車長が頭突っ込むだけで、出入りする場所ではない。
視察するのはいいけど、砲を操作するときは砲塔のバイザー使わないといけないから、頭引っ込めてもう一回目標を探さんとならない・・・
上の換気ブタを上下できるようにして、正面の覗きスリットカバーも上下してスリットを出したり隠したりできるようにしました。
キューポラの可動工作。覗きスリットのシャッターは真鍮板。
天井の換気部はプラバンを丸く削り出して作った。
元のパーツは削っちゃった。
このキットは普通に組んでも、実車同様に、砲が砲塔から独立してわずかに左右に振れるように、可動に組めます。すばらしい!とても素晴らしい!なんでここはそのまま作った。
車長ハッチ。 この戦車の砲塔は、軍の官給で、オチキスの軽戦車と共通の規格品なのですが、エレールのR35もH35/38も、あとから出たブロンコとかのH39も、この車長ハッチの内側は再現されていなくて、のっぺらぼうで、この部分がわからないのもキットに手がつけられない理由のひとつだったのです。
ウォークアラウンドとかでもこの部分はほぼ無視されてたし、戦争中の写真も不鮮明でフラストレーションが溜まる。
今回のタミヤのキットは、このハッチの裏をちゃんと再現した初のインジェクションキットなのではないでしょうか!(アップしたあとで検索したらホビーボスのほうが細かく再現してました・・・)
ハッチを持ち上げるときの、ハッチの重さを軽減するトーションバースプリングまでモールドされています!すばらしい!
その志に答えるべく、更に先鋭化させて行きたく、ハッチに手を加えました。
写真は、ハッチを持ち上げるための取っ手が収まる部分の、取っ手とそのフタを再現したという・・・
車長はここに腰掛けるので、キットのように穴が空いていたら非常におしりが居心地悪いんじゃないかなって疑問でしたが、戦争中のR35やらH38の写真を見ると、どうも蓋があるっぽい。でもって、手持ちのオチキスの資料本を見たら、現存車にフタを確認できました。つ~か相当前から持ってる資料だった・・・orz
次に、長いこと謎だったのが、このハッチの表のでっぱり。
外からハッチを開けるための出っ張りなのかと思ってたら、ロックとかとは全く関係なく、ピストルポートでした! (ホビーボスはここも別部品だった・・・すごいな!)
ハッチ左舷側の黒いレバーは、ピストルポート開閉用だったのです!すげえ!もちろん連動で可動にしました!
ところで、ハッチのロック機構はというと、これは砲塔の天井にでっかいカンヌキがついてて、ハッチてっぺんの切れ込みに回転して食い込むっていう、外からは開けられないんじゃないかな・・・再現してません。負けです。(ホビーボスはこのカンヌキもパーツ化!すげえ!)
車長ハッチの工作記録。
実車のハッチの内張りは薄い打ち抜きの板金製。なんでこれを透明プラバンを切り抜いて作りました。
取っ手やフタは金麦缶。
あと、タミヤがせっかく再現してくれたハッチ開閉時の減力トーションバーは、実際は右下みたいなカバーで覆われてるようです。ソミュールでR35のわきにおいてあるオチキスも取材してれば・・R35にも痕跡は残ってます。
操縦手のバイザーやハッチも謎だらけでしたが、素晴らしいサイトを発見!構造を知ることができました。フランスのレストアラー偉大!大好き!
おかげで納得の行く可動工作をすることができました。2つ折れ式のつっかえ棒とかはエレールのときも頑張ってやってたんだけど、今回はもっとがんばれた!
操縦手ハッチは、2ピースで、キットでは操縦手の膝をカバーするハッチは一体だったんですが、もちろん切り離したです。可動にしたです。
そうすると開口部がでかいんで、内部もある程度作らないとねって、作りました。ある程度。
まず計器盤とかないと寂しいのででっち上げた・・・
穴開けたプラバンの裏に透明プラバンを貼って裏から塗っただけ・・・
取っ手も再現。ハンドブレーキレバーもつけたけどよくわかんないや。
ハンドブレーキはルノーのスポーツカーにもついてるような形でおしゃれ。
操縦桿。
エンジンとファイナルは見えないからオミットしたけどギアボックスとプロペラシャフトまでは作った。
上に写ってる金麦缶の部品はプロペラシャフトカバーと、その上のギアチェンジレバーのケース。
実車の操縦動画を見るとシフトチェンジはとても重たそうです。
できあがった駆動系部品。
左の太い部分はハンドブレーキで締め上げる部分。
操縦手シート。こんな構造だと思います。
このあとクッションを鉛板で作ってつけた。
組み込んだところ。なんか充実感があります。げへへ・・
嬉しくて何度も撮った・・・
フタしたら見えなくなっちゃうけど自己満足と臨在感は残るのです。
操縦手ハッチ!これは10年前じゃ全く資料なかったし、最近やっと出たものと思われ。
上から、ハッチの開閉回転軸(横の真っ直ぐな真鍮棒)、ハッチを開くときの折りたたみ式の取っ手(付け根がぐるっと曲がってる真鍮棒・折りたたみ状態・可動します)、バイザー開閉用のリンク(縦に二本ある真鍮棒)、バイザー開閉レバー(下に二本ハミ出てるプラ部品)。あと、左にぶら下がってる真鍮の長いのがストラット上部。
ちなみに、バイザー開閉レバーを閉位置にすると、レバーが下部ハッチ(操縦手の膝をカバーしてるハッチ)に干渉して開かなくなるっぽいので、このハッチが開状態のときはバイザーも開いてることが多いです。ハッチ開なのにバイザーが閉まってるときは、開いたあとから何らかの理由でバイザーレバーを下げちゃったと思われ。
バイザーは開閉レバーと連動するようにしたので、完成して見えなくなる前に動画にとってみました。
このキットは基本は素晴らしいスピリットで設計されているのですが、所々にとにかく安くあげようっていう省略を極力目立たないように盛り込んでて、左舷の工兵工具は一体部品で、これはさすがにちょっと褒めようがない・・・なんで、おもいきって・・・↓
一体の工兵工具は、あいだを縁日のカタヌキみたいに抜くんでなく、切り離して柄をこしらえたほうが早いです。
上からスコップ、ハンマー、バール、ツルハシの柄。
車体側にはこんな感じでラックを設けて、鉛板のベルトと真鍮線のバックルで固縛。
フェンダーに謎の四角い囲いがありますが、これはどうもハンマーの頭が収まるようで・・・
工兵工具取付部上の穴のあいた出っ張りは、吊り下げ用らしい。吊り下げるときはシャックルが付きます。くるくる回るっぽいので回転可動にしておきました
ジャッキ。フランス語だと「cric」っていうらしい。
留め具を作ってみました。
ちなみに、「ああ無情」の主人公のあだ名は「起重機のジャン」ですが、原語だと「Jean-Le-Cric」で、子供の頃読んで以来、起重機ってジャッキのことかと思ってた調べたらクレーンのことで、「le cric」を正しく訳すなら「扛重機」という耳慣れない言葉になるらしいけど、むかしはプロアマ問わず混同して使ってる?
リアハッチの取っ手は、クランク状のパーツの両端を潰した形なんでそんな感じに再現。潰した部分はプラ棒を埋め込んでそれっぽくごまかしてます。
フェンダーには折りたたみ式のバックミラーが付いてます。
エレールのときは諦めて固定しちゃったけど、今回は可動に。
鏡面が汚いのは気にしない。
完成時の展開写真撮り忘れた。
かっこいいフランス戦車兵のヒギャー。スカーフがおしゃれです。
ソミュアS35の車長と記念撮影。似たようなポーズでんな。もうちょっと緩んだ姿勢でも良かったんじゃないかな。
R35の人形はS35に載せれますが、逆はムリ。S35の車長脚広げすぎ。
どの軍隊にも閥はあって、無駄に張り合ったりしてるものですが、フランス陸軍は歩兵閥と騎兵閥が仲悪かったらしく、R35は歩兵用だから騎兵に分けてやらんみたいな意地悪をしたのか、騎兵側がバタ(歩兵)と同じ装備とかだせえから嫌だって嫌ったのか、騎兵はルノーとの競作で落ちたオチキスを騎兵軽戦車として採用します。はっきしいって税金の無駄づかいです。
結局、ドイツ軍が攻めてきて、R35も騎兵的な配置にも持ってかれることになりますが、長砲身の37ミリ砲を装備したR35が極端に少ないというのは歩兵戦車にこだわったせいで、騎兵的なオチキスには長砲身のものが多いというのは騎兵は歩兵よりはまだ対戦車戦闘を意識してたんだろうなということなのかもしれません。
作りかけたエレールはもうこのまま朽ちることになります。細かいとこ見るとぼくも当時なりに頑張ってたんだけどね。ごめんね。
わるくはないよね。エレール。
キューポラの吊りフックとかもちゃんと再現してたし。
そういえば、タミヤの、回転させて遊んでたら吊りフック全部折れちゃったんで、真鍮線を削り出したものを植え直しました・・・キットの設計はここは突っ走ってて好きです。生かせなくて残念。というかすいません。
さよならエレールのR35・・・ごめんね。