居酒屋U

また来てしまった。いつもの居酒屋に、雰囲気に誘われて それとも・・・・
フォークを語り 歌い 時代に浸り その日の疲れを 癒す為に時々訪れるようになっていた。

「?」今日は暖簾が・・・・「休み?」
スリガラスの向こうに 薄っすらと明かりが・・・でも 張り紙もないようだし ドアに手をかけてみた。
「?開いてる?」戸惑う気持ちより先にドアが開いてしまう・・・まさか鍵が掛かっているのもだと思った俺は 焦った。
「こっ こんばんは」とっさに叫ぶのが精一杯で店の中へと・・・
「えっ?あっ!・・・いっらっしゃい♪」
一瞬驚いた顔をした君は すぐいつものきみに戻り笑顔を見せた。
この時 一瞬君の頬に光ものを見た。
さりげなく 後ろを向き 何事も無かったようにまたこちらを向き微笑んだ。
「やすみ?暖簾が出ていなかったけど 明かりが点いていたので・・・・」
「うん 開けるつもりだったけど・・・今日は常連さんたち旅行とか みなさん予定があってみなさん来られないみたいなの・・・」
「暖簾出す前にちょっと うたた寝してしまったみたい うふふふ♪」
カウンターの上に置かれた暖簾の陰から 呑みかけのグラスが見える・・・・・・
「ねぇ せっかく来たのだから 飲んで行く?」
「えっ? いいの?」
「うん、そのかわり 暖簾ださないから 貴方の貸切でどう?」
「貸切?」「ドアの鍵閉めて ココへ座って!」
君は 暖簾を片付け 手早く布巾をかける。
いつになく 強めの口調と 先ほどの涙らしきものにも気になった俺は 言われるまま ドアをロックし カウンターに着いた。
「何 飲む?」「ビールで・・・」
「はい おビール♪」
先ほどは 気が付かなかったが かなり早い時間から ひとりで飲んでいたのだろ・・・
すでに 頬は ほのかに紅色し 目も虚ろに近い状況になっていた。
「じゃ 乾杯♪」「乾杯」
「駄目だよ! 一気に飲んじゃ」
ジョッキーを一気に飲み干そうとした君を 慌てて止めた。「もうかなり飲んでいるみたいだから・・・そんな呑み方しないで」
「やさしいのね」
そう言った顔が 一瞬暗くなって行くのがわかった。まるで 力が抜けるように 素顔に戻っていく・・・・・

しばし 君はうつむいたまま・・・ 俺も無言のまま ビールを飲んでいると
「さっき・・・・ 気付いた? 入ってきた時・・・」
君が つぶやくように 俺に聞いてきた
「う?・・なに?・・・別に・・・」
俺は何も言わなかった・・・・そしてまたグラスに手を伸ばす

「そう♪な〜んだ(笑)心配して損した。」間をおいて君がつぶやく
「え?」俺が 疑問の視線を向けると
「なんでも ないの♪さぁ 呑め♪」
君の明るさが戻って来たようだ・・・

それから いろいろ 話した・・・主に 俺の話がほとんどだった
彼女のことには 触れず・・・悩んでいる事は 事実だろう だから俺の昔話を 延々と

「昔 こんな事あってさ・・」
「うん、うん」 「どうしたのそれで?」
「こんな事して こうなったよ。」
「う〜ん そっか・・・大変だったね。」

「こんな事もあってね・・」
「うん うん」「大丈夫だったの?」
「こんな風に結論だしたよ。」
「う〜ん そうしたのか?・・・う〜ん」

そんな会話が続いていた時
急に 彼女が「ありがとう」
「うん? どうしたの急に?」
意味の判らない 俺は 君の顔を見つめる
「うふふ♪吹っ切れた♪ありがとう♪」
もう 君の顔から暗さは消え 最初にここで 歌い笑った顔に戻っていた。
「どうしたの 急に?」
「同じ事 言わないの(笑)でも貴方のおかげで吹っ切れたの ありがとう。」
「落ち込んでいたの・・・でも 貴方と話していて 急に晴れ晴れしたの♪」
「貴方は 見たはず私の涙・・・・」
やっぱり 涙だったんだ・・・
「でも 何も言わなかった。聞かなかった。ありがとう。」
「いっぱいお話してくれてありがとう。気付いていたんでしょう?私が落ち込んでいたのを・・・でも 言わなかった・・ やさしいのね♪」
「もう 大丈夫 明日はお店を開けるね♪ちゃんと来てね。明日も・・・ね」

もう時計の針は2時を回っていた・・・「おっと もうこんな時間」時間の流れの速さに躊躇いながら
「うん じゃ 今日はこれで・・・・幾らかな?」
「え? あっお勘定の事? 100万円」
「え!!」さすがに ビックリした・・・
「うふふ♪今日はお店お休み中 だから 私のオゴリよ♪・・・・でも」
「なに?」
「でも・・・また来てね・・・必ず。」
はにかむような 少女のような初めてみせる君のしぐさに
「うん また来ます。」弾んで答えた自分がいた。

果たして どの言葉が 彼女の悩み解決の手助けになったのだろうか?帰り道ずーっと考えていた・・・
もしかしたら 1つの言葉じゃなく
気遣った 言葉 態度が 彼女に届いたのかな?
(悩みさえ聞かなかったのに そんな事聞けないよな・・・)うん 自己納得して 空を見上げるよ 綺麗な星空♪
その星の光が 彼女の顔のように見えてきて視界に輝く (うふふ♪ あいつ可愛いな)
ちょっと 酔ったかな(笑)

つづく・・・・・・・・・・・・・・かな(笑)
戻る