PART2  崩壊の予兆  〜Whispered

 

  人殺し医師で、あまつさえ自分の殺した人間から臓器を取り出して、闇ブローカーに平然とした顔で売り飛ばす、極悪医師Dr.LED。  ストーカーなうえに、ロリコンで、護衛している目標を、「庇う」という名目で押し倒してしまう、ド変態ボディガード小嶋  かけらほどもやる気を見せないくせに、料金だけは激しくボッタくるうえに、他人の家を勝手に漁って、その上堂々とその場でメシを食い出す、迷惑チンピラ探偵笹沼政伸。

 

 ・・・・・・誰か、こいつらをどうにかしてくれ!!!

 

  ・・・むぅ、突然驚かしてしまって申し訳ない。  当時のキャンペーンのことを思い出していたら、何だか腹が立ってきて、思わず取り乱してしまった。  こんな連中をうまくまとめて、シナリオをまともな方向に持っていくのが、どれほど大変なことだったか・・・・・・・・・  真面目な話、私の苦労を察してもらいたいものだ(特に、このキャンペーンに参加していた連中にな・・・・・・)

 

  さて、序盤から波乱に満ちた、N◎VAキャンペーンの二回目である。  このセッションで、私が考えていたギミックが発動するはずだったのだが・・・・・・

  私がDr.LEDを主人公に仕立て上げようとしたのは、彼が特殊なIANUS、ブレイブハートを装備していたからである。  私はこのブレイブハートにちょっと細工することにした。  実は彼のブレイブハートは、プロトタイプと呼ばれる、極めて特殊で貴重なものであるという裏設定を付け加えたのだ(当然、プレイヤーには内緒で)  このプロトタイプには、人間の脳の潜在能力を覚醒させ、移植者の知能を驚異的に上昇させる(至極簡単に説明すると、天才を生み出すのだ)特殊能力を有しているという設定を行った(私は大脳生理学なんて全然知らないので、今まで書いてきたことは、間違いだらけかも知れないが、その辺りのツッコミは御容赦頂きたい)  そして、その能力は<ささやき声>という形で現れ始める・・・・・・・・・  こう書けば、私がどこからネタをパクったか、わかる人もいるだろう(笑)

  ところが、不運なことに(本来ならば、幸運にも、なのだろうが・・・・・・)プレイヤーどもの中に、元ネタを知っている奴は一人もいなかった。  なぜそれが不運なのかというと、知っているプレイヤーが一人でもいれば、これから語る出来事は起こらなかったのではないか・・・?  私としては、どうしてもそう思ってしまうからである。

 

  今回のシナリオで、私はテロ事件を起こした。  そのテロリスト達を捕まえるのが、このセッションの最終目標であった。  捕まったザコテロリストに、広瀬がいきなり神業≪真実≫を使ってしまい、序盤から主犯の正体がバレてしまうというハプニングがあったものの、リサーチフェイズはおおむね順調に進んでいった。

  そして、クライマックスシーン。  そこでの戦闘において、私はウォーカーを登場させた。  キャスト達が普通に戦ったところで、まず勝てない相手である(神業を使えば話は別だが、私はそれを見越して、この戦闘の前に、神業を消費させるための戦闘をさせておいた)  当然だが、このままパーティーを全滅させるつもりはない。  そのための前述したギミックを用意したのだ。

 

 ・・・・・・だが、今にして思えば、全滅させておいても問題なかったかもしれない。  私の心の平安のために・・・・・・・・・

 

  私はプロトタイプ・ブレイブハートの<ささやき声>を通じて、Dr.LEDに目の前のウォーカーの弱点を教えた。 ところが、である。   彼は何を思ったのか、いきなり「やかましい!!」と叫んで、自分の腕にメスを突き刺し、「興醒めした」と一言呟いて、他のキャストや目の前の敵を無視して、退場してしまったのだ。

  当然、私は慌てた。  このままでは、ウォーカーは倒せないのだから・・・・・・・・・  結局、半ば強引にウォーカーを残りのキャストに倒させて、その回のセッションをなんとか終わらせた。  なんとも、やりきれない気分だった・・・・・・

 

 セッション終了後、私はDr.LED(のプレイヤー)に、先程の不可解な行動の理由を尋ねた。  彼の答えは、「戦闘を邪魔されて面白くなかった」という内容のものだった。  その上、彼は自分のブレイブハートが、何者かにハッキングされたと勘違いし、それを廃棄してしまったのだ。

 私のシナリオの作りが甘かったのだろうか?  それとも、キャストの行動があまりにも突飛すぎたのか?  どちらにせよ、その時の私には、絶望感しか残されなかった・・・・・・・・・


今だから言える! Prof.Oの私的災厄レポート☆その2

 

 結論から言えば、私のジャッジが甘かったのと、Dr.LEDの行動が傍若無人過ぎたことの両方だろう。  退場すると言って、それを黙認してしまったのは、さすがにマズかった(あまりにも突拍子もない宣言に、思考が停止してしまったのだ)  「逃がすか!」とでも言って、ウォーカーで機銃掃射でもするべきだった。  もっと言ってしまえば、ルーラーの意に添おうとしないキャストなど、この時点で抹殺すべきであった。  もっとも、彼を抹殺してしまうと、シナリオが崩壊するという恐れがあったので、当時の私はそれができなかった(結局、シナリオは崩壊する運命だったが)  それと、別にウォーカーが倒せなくても良かったのだ。  キャストが「逃げる」と宣言でもすれば、何かしらの簡単な判定(アスレチックが妥当だろう)に成功すれば逃げられるとでもすれば良かったのだから。

 

 どうも当時の私は柔軟性に欠けていたようだ。  まぁ、今でもそうかもしれないが(笑)  しかし、未熟である事は罪ではない。  そこから成長しようと思わない事のほうが罪である。