PART9  絶望と敗北  〜Fear in Deep Blue

 

 くだらない事を、ダラダラと続けるくらいなら、いっそのこと思い切って終わらせたほうが良い。  今回と次回のセッションは、私にそれを痛感させる事となった・・・・・・・・・

 

 今回のシナリオ概要。  生き残ったDAEDALUS社長、ブラック=マーキス。  彼は自らの野望を打ち砕いた、ICALUSとキャスト達に復讐を誓う。  そのために、単身ゴーストEYEランド(一言で説明すると、巨大な人工の浮島)に乗り込み、メインコンピューターにハッキング。  メインコンピュータを狂わせ、トーキョーN◎VAにゴーストEYEランドを衝突させるという、非常にはた迷惑な計画を実行しようとするのだった。  この大惨事を防ぎたければ、ICALUSリーダー、フェーダ=フライハイトとキャスト達を引き渡せ、と彼はN◎VA全市民に要求した・・・・・・・・・

 今回はキャスト達を巻き込みやすいように、民衆を敵に回すシチュエーションを考え出した。  こうすれば、キャストどもは嫌でもゴーストEYEランドに行かなければならない、と私は企んでいたのだが・・・・・・・・・

 

 私の考えは甘かった。  こいつら完全に民衆を無視してやがる。  いや、無視するくらいなら、まだマシな方かもしれない。  ひどい奴は、殺そうとすらしたのだから(それが誰であるかは、あえて言うまい・・・・・・)  黙って見ているわけにもいかないので、ICALUSを介入させて、何とか話を進めさせた。  ところが、私はここで予想外かつ最大級の障害にぶつかる事となる・・・・・・・・・

 今回のシナリオは、潜水艦内での戦いを想定して作った(この時期に映画「U−571」を見て、影響されてしまったため)  本格的な決着は次回に回し、今回は今までとは違う舞台での、いつもと一味違うシナリオをプレイヤー達に楽しんでもらいたかった。

 私はICARUSメンバーを通じて、今回の舞台となる潜水艦パラス・アテネへと導いた。  そして、ついに災厄は訪れた・・・・・・

 

 何を思ったのか、笹沼が勝手に潜水艦に乗り込み、勝手に操縦すると、とんでもないことを言い出したのだ。  当然、止めようとした。  しかし、N◎VAの世界において、キャストは超人だ。  非戦闘型の笹沼でも、そこらへんのザコ(この場合はICALUSメンバーのこと)では止められない。  おまけに、小嶋までそれに同調して、暴れ出す始末。  そして、追い討ちをかけるかのように、真面目なイヌである広瀬が、一企業がこんな兵器を所持するのは違法だなどど言い始めた。

 

 ・・・・・・貴様ら、この状況下でも、そんなにウケを狙いたいか!?

 

 そして、≪とどめの一撃≫・・・・・・いや、≪神の御言葉≫を笹沼は、ルーラーである私に対して言い放った。

 

「この潜水艦はもらってくぜ!  よし、みんな!  このままゴーストEYEランドに突撃だ!!」

 

 ・・・いい加減にしろ!!  まだそこまでシナリオ作ってないっ!!

 

 そう言って、怒ろうと思っていた。  しかし、度を越した怒りのエネルギーは、突如逆流した。  私は鬱状態に陥り、そのまま机に突っ伏した・・・

 私の形をした、どうしようもない無力感の塊が、そこに存在していた。

 そんな状態でルーラーが続けられるわけもなく、誰一人として予想しなかった形で、N◎VAは一時中断となった。

 

 そんな私に対し、一言たりとも謝罪しないプレイヤー達。  あたかも他人事であるかのように「そんな日もあるさ」などと、のたまうプレイヤーすらいた。  全てがバカバカしかった―――――

 

「世界は誰にも優しくない事―――

 生き物はちっとも平等なんかじゃない事―――

 人と人とが分かり合う事なんて、絶対にできっこないって事―――――」

 

 上の言葉は、あるゲームに出てきたセリフの一部である。  そのときの私の気分を、実に的確に表現していると思う。  TRPGでこんな挫折感を味わう日が来るなんて、思ってもみなかった・・・・・・・・・

 そこで止めておけばよかったものを。  今にして思えば、自分の生真面目さを呪いたくなる。  だが、一時中断させてしまったことに変わりはないと、自分を戒め、私は再度ルーラーを始めた。  それが、最期のルーラーとなる事も知らずに・・・・・・・・・

 結局、新しいシナリオが思いつかなかったので、プレイヤーどもに、今回の舞台は潜水艦内であることをあらかじめ告げ、セッションを開始した。  だが、運命はさらに過酷な舞台を、私に対して用意していた・・・・・・・・・

 私はキャストどもに、潜水艦の中で徐々に追い詰められていく恐怖を味わせるつもりだった。  しかし、いちいち私の仕掛けた罠やギミックに、口うるさくツッコミを入れるプレイヤーのせいで、恐怖などかけらもなかった・・・・・・・・・

 そして、潜水艦のメインコンピュータルームまで来たキャストどもと、ブラックの手先との戦闘が始まった。  だが、この戦闘は前座に過ぎなかった。  真のクライマックスは、この後の狂ったコンピュータの操る兵器との戦闘であるはずだった。

 あっさりとキャストどもにやられた刺客。  彼は死に際に、メインコンピュータに対し、神業≪天変地異≫を使用。  メインコンピュータを破壊し、潜水艦もろともキャストどもを葬ろうとした。  私はこの神業を≪チャイ≫で防ぐであろうと勝手に予想していた。  私はこのセッションで、神業の真の恐ろしさを知る事となった・・・・・・・・・

 Dr.LEDが神業≪タイムリー≫を宣言。  メインコンピュータを作成すると宣言した。

 唖然とするしかなかった。  たった一つの神業で、ラストバトルがチャラになってしまったのだから・・・・・・・・・

 

 このセッションは、私のルーラー人生における、最悪のセッションであった。  これ以上、何も語るつもりはない。


今だから言える! Prof.Oの私的災厄レポート☆その9

 

 「何も語るつもりはない」なんて言っておきながら、こうして再び文章を書いているのだから、人間とはいい加減な生き物である(笑)

 とまぁ冗談はさておき、ここまで一挙にヘコまされる出来事が集中した時は、後にも先にもこの時しかないと思う。  よくもまぁ、ここまで精神的に立ち直れたものだとしみじみと思うよ。  こうして書きながら見ていても、マジで泣きたくなってくるから・・・・・・

 

 ブラックのゴーストEYEランド衝突計画をはた迷惑と書いているが、キャスト達のやっている事の方がよっぽどはた迷惑である(爆)  ここまでヒドイTRPGセッションはまずないだろうという奇妙な自信さえある。  全く、何を思って潜水艦強奪なんてトンチキな事を実行しようとしたのか。  よっぽど私をN◎VA嫌いにしたかったとしか思えない。  かの毒V◎ICE氏も、「傍から見てて、滅茶苦茶かわいそうだった」と言っているぐらいだ。

 

 神業≪タイムリー≫の事について、後輩のカラス君に「あんな神業の使い方、許可したらダメですよ!!」と叱られた(?)事があった。  御説ごもっとも。  いくら神業とて万能ではない(当時はそう考えられなかった、オロカな私・・・)  彼の言っている事は、理性的に考えれば至極当然の事である。  だが、人間が常に理性的に行動できると思ったら大間違いである。  カラス君はその事を完全に失念している。  あの時あの状況に仮にカラス君が身を置いたとき、彼は自分が言った通りの理想の行動ができるであろうか!?  私は無理だと思う。  残念ながら、人間とは未熟な存在であるし、何よりカラス君がブレカナのGMをした時、広瀬氏のプレイヤーの傍若無人な、しかし正論に基づく行動に、彼はキリキリ舞いさせられていたのだから。  あんな風にかき回されてしまうと、まず間違いなく冷静な判断力は失われてしまう。  まだまだ君も、そして私も未熟者である。  それを忘れないように・・・・・・