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簡易合併テコ

2005.2.7/2010.8.14

KATOの旧系列の蒸機(1/140系)では合併テコが省略されていたので、何とかしたくなったものでした。
昔から鉄道模型雑誌や色々なWebサイトで紹介されているため、目新しいものはありませんが、市販パーツから適当な自作までいくつかご紹介します。
最近の製品には最初からいろいろなパーツがついているので、このような工作もあまり見なくなりました。


合併テコの追加

最近始めた方なら、格好いいKATOのD51を手にして、「あれっ欠品かな?」と思う部分があるかもしれません。
合併テコと結びリンクがありません。現行製品ならC11もそうです。

d51のクロスヘッド周辺 しかもこれは少し古いロットのため、バルブスピンドルガイドとシリンダーの間にすきまが1mmほどあります。関水金属時代からの珍しい寸法ミスです。

C57のASSYパーツを利用する

c57のパーツ取り付け例 C57が発売されてから、よく行なわれている方法です。
既製品を利用するという点で、ちょっともったいない気もします。
c57のパーツに由来する部分 ASSYパーツの「C57ロッドセット」を購入し、バルブスピンドルガイドを切り取ってC57のものと交換します。
さらに、C57のクロスヘッド(結びリンク+合併テコ付き)を外して取り付けます。
左の写真の赤い部分がC57由来のパーツです。

プラ板のバルブスピンドルガイド

前の方法でなぜバルブスピンドルガイドも交換したかといいますと、D51のバルブスピンドルガイドには、合併テコを差し込む穴が開いていないからです。
従って自分で穴を開けるか、次のようにプラ板を貼り付けて工夫すれば、それでも結構です。

プラ板を張り重ねたバルブスピンドルガイド 厚さ0.3〜0.5mmのプラ板2枚を、バルブスピンドルガイドの表面に間隔を空けて貼り、間に合併テコが差し込めるようにします。
表にはもう一枚のプラ板を貼り重ねます。
接着剤には少量のゴム系接着剤を使えば少し厚みが出るので、同じ厚さのプラ板で合併テコを作っても大丈夫です。

ロッドセットの廃物利用

さて、C57ロッドセットの一部を使って残ったエキセントリックロッドと両側の関節(加減リンク側とリターンクランク側)を利用して、別な合併テコを作ることもできます。
つまり、下の写真の赤枠の部分を利用します。

使える部分を示している図 自分自身から切り取って移植するんじゃありませんので念のため。先ほどの加工で残ったロッドセットの、図に相当する部分を使おうというのです。
エキセントリックロッドと加減リンクを利用した例

エキセントリックロッドはそのまま合併テコとし、それにつながった加減リンクを結びリンクとの関節として利用します。
加減リンクは金属用ニッパーで適当な長さと幅にカットして、表から厚さ0.3mmの細いプラ板を張り重ねて結びリンクに見せます。

クロスヘッドの下部は平らに削り、そこに結びリンクのプラ板を重ねてゴム系接着剤で接着し、針先でごく少量の瞬間接着剤を付けて固めています。

形はこの程度ですが、動きはおかしくないので、ずぼら工作としては使えます。
なおこの方法を取るのなら、別にC57のロッドセットでなくても構いません(合併テコとは関係ない部分を使うので)。

ワールド工芸のパーツを利用

ワールド工芸のD51重装備パーツセットを買うと、合併テコのパーツがついてきました。これを説明書のとおりに取り付けると次のようになります。

ワールド工芸のパーツ利用例

これはどうなっているかといいますと、合併テコと結びリンクのくっついたL字型のパーツが付属しています。

合併テコの上部の溝と、結びリンクの右端の穴を、それぞれバルブスピンドルガイドとクロスヘッドに真鍮線を差し込んで止め、 表に飛び出した真鍮線の先端を、ヤットコでかしめます(強くはさんでぎゅっとつぶす)。

一応走りますが、ご覧のような構造なので、合併テコの上部がスリットに沿って大きく上下し、とても奇抜な動きをします。あまり満足感はなかったのでこれ以外には施していません。

合併テコのためにC57ロッドセットを丸ごと買っていたのではもったいないですし、本当に修理のためにASSYパーツが欲しかった人が買えなくなったら気の毒だと思ったりします(そもそも、欲しいときには買えませんが)。
そこで、ここからはプラ板と真鍮線だけを使った例です。類似例はいくつか紹介されていますし、材料もさまざまです。

プラ板を使った自作(1) 単純な例

プラ板で合併テコと結びリンクを作り、真鍮線で両者を留めた例です。

プラ板を真鍮線で止めた例

方法自体は単純です。
合併テコと結びリンクは、厚さ0.3mmのプラ板を細く切って作り、それぞれの片側に穴をあけます。そこに直径0.3mmの真鍮線を差し込んで先端をつぶし、取り付けただけです。
穴の周りの強度を確保するため、あまり細く作れないのが難点で、いかにも手作りという感じがしてしまいます。

がんばってもなかなか細くできずにがっかりするかもしれませんが、気分だけ味わう工作ですから、気にしないことです(どう考えても自分に言い聞かせています)。
うまくいかなくても何個も作っていれば、そのうち使えそうなものが出てきます。
また、将来作り直すこともできますし、飽きて取り外すことだってあるわけですからね。

プラ板の端に穴を開けてから、周りを切り出している

(1)細い帯に穴を開けるのが難しいときは、先に穴を開けてから周りをデザインナイフで切り出します。0.3mmドリルのない方は、木綿針などで表裏から穴を開けてもなんとかなります。
普通のカッターなどで一度に切ろうとすると、せっかく開けた穴がつぶれるので、刃の薄いデザインナイフで軽く何度か引いて切ります。
何個か試して、よいものを選びました。

(2)真鍮線を結びリンクの穴に数ミリ通して接着し、固まったら表から合併テコを差し込んで、真鍮線の先端をヤットコの根元で強く挟んでかしめます。
細いラジオペンチのように弾力のある道具では、うまくいきません。

(3)バルブスピンドルガイドに合併テコを差し込み、結びリンクはクロスヘッドに接着します。
結びリンクと重なる部分のクロスヘッドは削って平らにしておき、ゴム系接着剤で仮止めしてから、ごく少量の瞬間接着剤を付けるとよいかもしれません。メインロッドを一緒に接着しないように…。

    …ずぼら版

プラ板を接着剤で止めた例

5〜6歩戻ったずぼらな方法もあります。
穴を開けるのが面倒なので、接合部(橙色の矢印)をゴム系接着剤でゆるく止めただけ!
ぴったり接着してはいけません。

とても人に見せられない方法ですが、接着剤の付き具合によっては案外もちます(いずれガッチリ固まってしまいます)。
お遊びなので、あまりに情けなかったらやめましょう。

プラ板を使った自作(2) 実用タイプ

穴の周りだけ別な部品にし、合併テコを細くした例です。

プラ板2枚で合併テコを作った例 同じく、斜め後ろから

基本的には先ほどの方法と同じですが、合併テコの穴の周りだけ別の部品にして表から張り重ねています。
裏側からL字型の真鍮線を沿わせて接着し、表面から顔を出させているので、先端をかしめなくても大丈夫です。

何が有意義かといいますと、穴の部分の幅が少々広くても、それ以外の部分を細く作れば、結構それらしく見えることです。
ただし結びリンク側はそのままです。

プラ帯を重ねて、裏から真鍮線を接着

(1)穴の開いた合併テコ先端と、合併テコ本体を別々のプラ帯で作り、接着します。
重なる部分がある程度長くなるように作れば、工作しやすいです。

(2)結びリンクと合併テコの穴を合わせ、裏からl字型に曲げた真鍮線を通します。
長い軸の部分は、合併テコ裏側にゴム系接着剤で接着します。

ここから先は同じです(このタイプのずぼら版も可能。
この方法も人によって、プラ板の重ね方や真鍮線の使い方にいろいろなバリエーションがあります。

プラ板を使った方法は手を出しやすいのですが、外観や強度などが気になりだすと、腕を上げて金属で…という具合になっていくかもしれません。
しかしクロスヘッドがそもそもプラなので、そこまで求めないことが多いのではないかと思います。

やえもんデザインのパーツを利用

最後はまた市販パーツです。やえもんデザインから洋白製の「クロスヘッド+合併テコ」パーツが発売されたので、これを使ってみました。

Y-050 クロスヘッド+合併テコ

「クロスヘッド+合併テコ(品番Y-050)」の中身です。
合併テコ、ユニオンリンクとクロスヘッドがセットされており、左右1対が含まれています。

これは1/150蒸機のKATOのC62やトミックスのC57 135のクロスヘッドと交換してディテールアップさせるためのパーツのようで、1/140蒸機へ取り付けるにはスライドバー等の加工が必要です。

加工する箇所

(1)スライドバーを裏側から削り、薄くします。
そのままではクロスヘッドの溝に通らないので、ここを削ることが必須です。

(2)メインロッドの先に穴をあけます。
これは1/140蒸機でなくても同様ですが、メインロッドの先を平らにヤスって0.5〜0.6mmの穴をあけ、クロスヘッドに取り付ける構造になっています。

このほか、バルブスピンドル側の加工は他の例と同じです。プラ板を貼り重ねる方法がよいと思います。

スライドバーの加工

はじめにスライドバーです。軟質プラのためヤスリが効きにくいので、裏側からデザインナイフで薄皮をはぐように少しずつ削りました。
ナイフが深く入って切断してしまうとおしまいなので、慎重にやります。
丸く削っているような図を画きましたが、角のほうから削ったためで結果的なものです。

クロスヘッドをスライドバーに通す

なかなか均一に削れずにデコボコになりましたが、表面の上辺・下辺が温存されていれば走行に支障はないようです。
クロスヘッドの溝のほうも、極細のヤスリで上下に気持ちだけ広げました。左右に軽く動けばOKです。

メインロッドに穴をあける

次にメインロッドに穴をあけます。
もともとメインロッドの先端にはポッチ状の出っ張りがあって、これをクロスヘッド内側の穴にはめ合わせる造りになっていますが、 今回使用したパーツは凹凸関係が逆なので、メインロッド側に穴をあけます。

最初にヤスリでもとのポッチを削り落としてから、その中央付近に0.5mm〜0.6mmドリルで穴をあけますが、材質がステンレスのため硬くて大変です。 普通の鉄用のドリルを使ったところ、ほとんど歯が立たず、片側の開口に30分ぐらいかかって1本は折りました。次のためにステンレス用ドリルを買っておきます。

クロスヘッドのピンに差し込んでみて、よく動くようメインロッドの形を整えてから、ヤットコで表裏から軽くはさんでピンの先をつぶします。つぶしやすいように先端の形が工夫されています。

取り付け

あとは取り付けるだけです(写真は未塗装)。
クロスヘッドが一番前に来るときに、合併テコの角度がかなり急になり、当たりそうになります。 バルブスピンドルガイド内に余裕を持たせて前後にガタが出るようにしておけば、大丈夫のようです。

取り付け完了したD51

元の模型に合併テコがないことばかり注目していると、このパーツが付いただけで急に精密度が増して見えるので不思議です。
KATOからフルリニューアルのD51 498も予定されていますが、それとこれとはまた別ということで遊んでおります。


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