アルモデル(アルナイン)の「とても簡単な」シリーズとして発売された、「とても簡単な 産業用Bタンク」です。
動力は組み立て調整済み、価格も1万円を切るという、待ち望んでいた商品です。
2014.7.19
これは私がキットを組み立てた過程をメモ書きしたもので、途中で失敗もしています。正しい組み立て方については説明書をご参照ください。
まず完成済み動力ユニットが含まれているのが目を引きます。
車体は真鍮エッチング1枚です。曲げ済み・プレス済みの部分は残念ながらありません。
ボイラー関連はウェイト兼用のホワイトメタルで、他にカプラーポケットやネジ類が付属します。
付属の動力ユニットです。アルモーター(このサイトで言うところのBトレモーターと同サイズ)を横置きし、スパーギヤで1段落としてから、台枠内のウォームで落としています。
このままですぐ走りますが、テストのためにはボイラーのウェイトなどを載せたほうがよいです。
これが結構よく走ってくれます。スローもなかなか効きます。超スローというわけではないですが、この価格のキット製品なら十分かと思います。 安定性もよく、変なうねりやロッドのぎこちなさもありませんでした(製品のばらつきの有無についてはわかりません。一般的には、多少あると思いますが)。
つまり、上廻りさえがんばれば必ずレイアウトで走れる小型機関車が手に入るというわけで、組み立てる前からわくわくします。
裏から見たところです。国内のNゲージ蒸気機関車では珍しい伝達方式かと思います。
2枚目の大きなギヤが台枠の左右から露出していますが、コンセプトが「組み立て簡単な機関車」ですから、個人的には気にならないどころか面白いです。小型化最優先の設計ではないと思いますが、全体的にはこのスタイルにうまく収まっています。
車体は見たとおりの展開図になっています。「簡単」とされている理由は、ツメによる仮留めでおよその形ができ、ディテールパーツが少ないということを指しているようです。
ワールド工芸製品なども車体は折り曲げ済みですし、屋根などもプレス済みですから工作要素は簡単であり、どこに注目するかということかもしれないですね。
車体は天井・左右の側板・タンク上面までが一体です。
ニッパーでランナーから切り離し、切り口に軽くヤスリをかけて平らにしておきました。
ところどころにある小さい突起(ツメ)を、誤って切り落とさないように注意します。
折り曲げはエッチングによる折り線が内側になるようにして行いますが、例外箇所は説明書に記載があります。
まず左右の側板を、天井との境目から直角に曲げました。
曲げには細いヤットコやラジオペンチ(くわえる部分にギザギザのないもの)を使っています。
次にサイドタンクの上面を曲げました。
水平部と傾斜部があり、どちらを先に曲げてももう一方が邪魔になりますが、気にせず少しずつ曲げました。
水平部の後半には、車体内側に突き当たるように薄い板が出ていますが、ここは曲げないように注意します。
最後にタンク前面を曲げました。
折り曲げたそれぞれの切片の合わせ目は、ハンダ工作なら裏側からハンダを流してヤスリで仕上げればきれいなシームレスになりますが、何もしませんでした。
黒塗装すれば目立たなくなるはずですし、これは手間をかけない工作ですから。
キャブの後部妻板には、中央部と床部分の2箇所に曲げが必要です。いずれもエッチングの折線を内側にして(谷折り)、直角に起こしました。
中央部の板はちょっと引き起こしにくいです。ヤットコの先を引っ掛けて少し起こし、裏側からも根元付近を棒で押したりして、少しずつ曲げました。
折り曲げた後部妻板を、キャブの天井付近から出ているツメに通し、ツメを折り曲げて固定しました。
ツメ1箇所による固定ではぐらぐらですし、左右の側板とも固定されていないのでまだ安定しません。瞬間接着剤で固定したほうが楽かと思います。
一番後ろに付く炭庫背板です。後ろに少し傾斜させるので、下側(端梁)との境界線から少し斜めに曲げました。
上廻りの中ではここだけが「山折り」になります。
曲げたところです。曲げの角度も少しなので、うっかり直角に曲げないよう注意します。
曲げた背板を車体後部に合わせ、3箇所のツメを通して折り曲げました。
下部のツメにより、側板後部は左右に開かなくなって多少安定します。しかし背板上端の左右には隙間ができやすいです。うっかり引っ掛たりして曲げないように注意がいります。
キャブの前部妻板を取り付け、ツメを上に曲げて固定しました。
まだ前側の左右を固定するものがありませんが、下廻りとの固定の際、フロントデッキの後部のツメを差し込めば開かなくなります。
屋根は曲げられていません。曲げ工作が必要です。説明書でも車体の組み立ての中で、最も行数を割いて説明されています。
指先で直径32mmくらいの棒に押し付けて曲げるとあります。私はいつも使っている塗料ビンに押し当てました。余計な線が付かないように慎重にやります。
まだ均一に曲がっていないのですが、自分の場合は時間をかけても良くなるとはいえず、ほどほどで終えました。
屋根を取り付けました。
天窓の左右を直角に折り曲げ、その2本の足を屋根の穴に通して、さらに天井の穴に差し込みます。
車体をひっくり返し、天井の下に出た天窓の両足のツメを内側に曲げて固定しました。
ここで、車体の内側から各接合部に瞬間接着剤を流し、隙間ができないようにしっかり固定しました。
使用したのは普通のアロンアルフア(黄色いケースの)です。先端にひげノズルを付けて、合わせ目に少し付け、固まったら次の合わせ目に…という具合に固定しました。
部品をひとつずつ取り付けるたびに接着してもよいと思いますが、私は全体の具合を見てからにしました。
(写真を撮り忘れたので、取り付け後の写真です)
フロントデッキは端梁と一緒の板です。端梁の部分を、折り線が内側になるよう直角に曲げました。
後部には、あとでサイドタンク前面に差し込む突起があるので、誤って削り落とさないようにします。
この先はディテール工作なので省いて構わないと思います。
後部に付属のライトと、石炭??を接着しました。
給水口も丸型・長円形の2種が付属しています。これはごく少量のエポキシで接着しました。瞬間接着剤でもいいと思います。
ボイラーはホワイトメタル一体で、煙室扉のみ別パーツを接着します。
成型のときにできたヒゲのような余分のバリが残っていたら、ナイフで削り取っておきます。特に、後部がキャブの妻板の穴にきちんとはまるかどうかを確認しておきます。
底部に下廻りを固定する穴があります。ここに6mm長のタッピングネジ(ネジのピッチが粗いもの)をねじ込んで留めますが、最初はかなり固いものなので、組み立て前にネジだけを一度ねじ込んで、ネジ山を作っておきます。
ネジ穴が結構深く、ねじ込んでいても抵抗があります。
どこまでねじ込めばいいのかな…?
あっ ねじ切った(笑)
あっ ねじ切った(笑)
なんでもない
なんでもない
気を取り直して、煙室扉のパーツをボイラーに接着しました。
これでボイラーは完成です。
シリンダーの前蓋のエッチング板が付属しているので、接着してみました。
カプラーポケットは、付属の板をヤットコで折り曲げて形作り、別途用意したアーノルドカプラーやカトーカプラーを挟み込みます。
折り曲げ手順は説明書で詳しく説明されています。後端の180度折り返す部分のみ、エッチングの折線が外側に出る山折りになります。
私はカトーカプラーを使いました。
カプラーポケットを下廻りに取り付ける際、間に挟むカプラー台です。
前後でパーツが異なります。それぞれ両サイドを下側に直角に曲げるだけです。
後部カプラーを取り付けるため、後部カプラー台(R)を床板の穴に合わせて置きました。
付属のM1.4×5.5mmネジで、カプラーポケットとカプラー台を床板にねじ込みました。
車体を床板にかぶせ、後部の2箇所の穴にM1.4×3タッピングネジをねじ込んで留めました。
ここは事前のネジ切りは不要です。簡単に留まりました。
フロントデッキは後部の2箇所の突起を、サイドタンク前方下側にある穴に差し込みました。
ボイラーを車体の上に置き、後部の突起をキャブ妻板の丸穴に差し込みました。
ボイラーを載せるとき、モーターのギヤに周辺の部品が当たることがないよう、曲がりに注意します。
前方のカプラーも後方と同じく、間にカプラー台を挟み、ネジ留めしました。カプラー台とカプラーは、ゴム系接着剤などで床板に接着しておくと作業が楽です。
本来はM1.4×6mmタッピングネジを使い、ボイラー底部にねじ込みます。
私はタッピングネジをねじ切ってしまったので(笑)、別途用意した普通のM1.4×6mmネジを使いました。
これで生地完成しました。
一般のキットに比べディテールパーツが非常に少ないため、写真撮影や失敗のリカバー時間など全部含めても1時間少々でできました。
もう最終完成時と同じ性能で走ることができます。あとは塗装だけです。塗装をしない場合はここで終了です。
写真右は数日前に完成した伊予クラウス1号機です。同じBタンクとはいえ、コンセプトがまるで違うのが外観からもわかります。
塗装工程は通常のキットと同じです。ただ車体が小さく、パーツも少ないので気楽に塗れました。
簡単に済ますためプライマーを省略し(使ったほうがよいですが使う塗料や扱い方による)、アクリジョンのブラックとつや消しブラックを1:1ぐらいに混ぜ、それを2倍に薄めて吹き付けました。
ナンバープレートはランナーごと黒に塗り、乾いてからサンドペーパーで金属部分を磨き出しました。削りカスを水で洗い流し、好みからクリアーを筆塗りしておきました。
塗り終わった上廻り各部です。このあと、前後のライトに面相筆で銀色を塗りました(少しフチにはみ出したので、そこだけさらに黒をタッチアップしました)。
シリンダーブロックは動力ユニットから取り外して塗る方法も説明されていますが、私は付けたまま筆で塗りました。微妙な部分なので、せっかく調子よく走っている動力ユニットをいじりたくなかったのです。
上廻りはつや消しに光沢を混ぜましたが、シリンダーブロックはつや消しをそのまま塗りました。筆塗りすると少しツヤが増すので、上廻りと似た感じになります。
使ったのは手前の丸筆です。30年以上前に友人が買ってくれた筆セットの中の1本です。当時の普及品でしたが、これが自分には使いよく、代わりも見つけられないので大事に使っています。
シリンダーブロックの後ろ側は、可動部分に塗料が回らないよう、横から筆を入れて軽く1回塗る程度にしました。
各部を再度組み立てて完成です。塗装を入れても総作業時間は3時間ぐらいでした(乾燥待ち時間を除く)。
写真にするとやたら大きく見えてしまいますが、Nゲージサイズなので実際には小さいです。ただし最小の部類ではありません。
KATOのチビロコその他と比べると、こんな感じです。
私の17インチモニターとブラウザの100%表示で、ほぼ原寸大に表示されています(偶然)。
塗装を除けば休日の午後にでも十分楽しめます。昼食後に始めて、夕食までにはもう金色の車体がレイアウトを走っている可能性が大です。
簡単にするためドライな外観ですが、産業用と命名したのは上手だったと思います。本当にこんな感じのものがありましたよね。国鉄の本線から蒸機が消えても、まだ活躍しているものもありました。
この模型も入門用のほか色々な用途がありますから、長く生産されてほしいと思います。といいますか、こういう商品に対する需要もあってほしいです。