2015.7.20
昨年の産業用Bタンクに続く、アルナインのフリー蒸気機関車の新製品です。
工場の構内から田んぼの脇の私鉄まで、どこにあってもおかしくなかったような「普通の汽車」です。こういう製品は今まで意外となかったように思います。
動力部は組み立て調整済みで、特別な工具も必要としない嬉しいキットです。
これは私がキットを組み立てた過程をメモ書きしたもので、途中で失敗もしています。正しい組み立て方については説明書をご参照ください。
キットの構造は昨年のBタンクとほぼ同じです。この記事も基本的にはBタンクのコピーになっています。
車体は真鍮エッチングの展開図を折り曲げ、要所をツメで固定する方式です。
ボイラーはウェイトを兼ねたホワイトメタルです。煙突・ドーム・安全弁も一体ですから組み立ては非常に楽です。
左下に写っている小袋には、カプラー台やカプラーポケット、各種ネジなどの小パーツが入っています。
必要な工具はプラモデル用のニッパー、ヤスリ、ヤットコかラジオペンチ、細いプラスドライバー、そして接着剤です。瞬間接着剤のほか、ナンバー貼り付け用にゴム系接着剤(Gクリヤーなど)を使いました。
付属の動力ユニットです。実績のある昨年のBタンクと構造は似ています。小型モーターを横置きし、平ギヤで落としてからウォームで伝達するのが特徴です。
組み立て調整済みなのですぐ走ります(テスト時には何かウェイトを載せたほうがよいです)。
個体差はあると思いますが、走りは期待したとおりで非常に安定していました。ブレが全然なく、ロッド関連のぎこちなさもありませんでした。これはやる気が出ます。ちゃんと使える機関車ができあがるのですから。
Bタンクの前方に1軸足したような形ですが、動輪の軸距離はBタンクより短く、単なる足し算ではありません。
大ギヤは第2・第3動輪間にあり、前方の長いウォームギヤで第1・第2動輪に、後方のウォームギヤで第3動輪に伝達しています。
車軸のギヤがど真ん中にないのは車高を下げるための工夫でしょうか。
第1動輪にはクランクピンがない無難な構造です。
天井・左右の側板・タンク上面まで一体の板です。
ニッパーでランナーから切り離し、切り口に軽くヤスリをかけて平らにしておきました。
ところどころにある小さい突起(ツメ)を、誤って切り落とさないように注意します。→誤ってカットしても、部品同士を直接接着固定すればよいので致命的ではありません。
折り曲げはエッチングによる折り線が内側になるようにして行いますが、例外箇所は説明書に記載があります。
まず左右の側板を、天井との境目から直角に曲げました。
曲げには細いヤットコやラジオペンチ(くわえる部分にギザギザのないもの)を使っています。
出入り口の上部の細い部分が歪まないよう、そこをくわえて曲げました。
あまり折り線ぎりぎりの位置をくわえると、きちんと直角に曲げにくいので、心持ち離してくわえています。
サイドタンクの上面、次いで前面を曲げました。
先に前面を曲げてしまうと、上面を曲げにくくなると思います。
上面と前面の合わせ目には、あとで瞬間接着剤を裏から付けておきました。付けすぎると表に流れ出すのでご注意…。
キャブの後部妻板には、中央部と床部分の2箇所に曲げが必要です。いずれもエッチングの折線を内側にして(谷折り)、直角に起こしました。
中央部の板はちょっと引き起こしにくいです。ヤットコの先を引っ掛けて少し起こし、少しずつ曲げました。
折り曲げた後部妻板を、キャブの天井付近から出ているツメに通し、ツメを折り曲げて固定しました。
ツメ1箇所による固定ではぐらぐらですし、左右の側板とも固定されていないのでまだ安定しません。瞬間接着剤で固定したほうが楽かと思います。
一番後ろに付く炭庫背板です。後ろに少し傾斜させるので、下側(端梁)との境界線から少し斜めに曲げました。
上廻りの中ではここだけが「山折り」になります。
なお、この部品の裏側には、自分で解放テコなどを取り付ける人のために(だと思います)、いくつか穴あけ用の下穴がエッチングされています。
曲げた背板を車体後部に合わせ、3箇所のツメを通して折り曲げました。
下部のツメにより、側板後部は左右に開かなくなって多少安定します。しかし背板上端の左右には隙間ができやすいです。うっかり引っ掛たりして曲げないように注意がいります。
実は最初、背板の表と裏を間違えてしまい、間違えたまま曲げて車体に固定してしまいました。外すために一度曲げたツメを戻すのは怖かったです。ちぎれやすくなっていますから…。
キャブの前部妻板を取り付け、ツメを上に曲げて固定しました。
曲げたツメは、ヤットコでこんな風に軽く挟んで密着させています。
屋根は残念ながらプレス曲げなどはされていないので、曲げ工作が必要です。
指先で直径32mmくらいの棒に押し付けて曲げるとあります。私はいつも使っている塗料ビンに押し当てました。これはBタンクのときの写真そのままです。
個人的には、屋根も天窓ごとホワイトメタル鋳造にして、接着のみで済むようにしてもらえると嬉しいです。面倒くさがり屋だからなぁ…。
端のほうが曲がりにくいので、ヤットコで少しずつ曲げたり戻したりして調整しました。
一見うまく曲げられたように見えても、前後でねじれていたりすることがあるので、ゆっくり直します。
前後の妻板の頂上の突起は屋根の裏のくぼみにはまりますが、突起が長すぎると屋根が浮きそうなので、少し削って調整しました。
屋根は天窓を刺し通して車体の天井に固定します。
天窓の左右を直角に折り曲げ、その2本の足を屋根の穴に通して、さらに天井の穴に差し込みます。
車体をひっくり返し、天井の下に出た天窓の両足のツメを内側に曲げて固定しました。
これだけでは屋根がぐらぐらしがちなので、あらかじめ少量のゴム系接着剤などで、屋根と前後の妻板を接着しておけば安心かもしれません。
ここで、車体の内側から各接合部に瞬間接着剤を流し、隙間ができないようにしっかり固定しました。
使用したのは普通のアロンアルフア(黄色いケースの)です。先端にひげノズルを付けて、合わせ目に少し付け、固まったら次の合わせ目に…という具合に固定しました。
部品をひとつずつ取り付けるたびに接着してもよいと思いますが、私は全体の具合を見て歪みなどを直してからにしました。
フロントデッキは端梁と一緒の板です。端梁の部分を、折り線が内側になるよう直角に曲げました。
後部には、あとでサイドタンク前面に差し込む突起があるので、誤って削り落とさないようにします。
なおこの部品の裏側には、カプラー解放テコや、つかみ棒を付けるための下穴らしきものもマークされています。
後部にライトと、石炭板を接着しました。
給水口は丸型・長円形の2種が付属しています。タンク上面に接着しました。このへんはお好みで省略してもいいと思います。
逆にディテールアップによって大幅に精密感を増すこともできそうです。
ボイラーはホワイトメタル一体です。成型の際にできたヒゲのような余分のバリが残っていたら、ナイフで削り取っておきます。後部の突起がキャブの妻板の穴にはまるかどうかも確認しておきます。
後部の裏側にはモーターのギヤが接近するので、邪魔なものを残さないように特に注意します。
底部に下廻りを固定する穴があります。ここに6mm長のタッピングネジ(ネジのピッチが粗いもの)をねじ込んで留めますが、かなり固いものなので、組み立て前にネジだけを一度ねじ込んで、ネジ山を作っておきます。
説明書によると、「深さ約3mmのネジ孔を作ります」とのことです。前回のBタンクのとき、固定に使う6mmタッピングネジをアホみたくねじ込んで切ってしまったので、今回は付属の3mmタッピングネジを慎重にねじ込みました。
煙室扉のパーツをボイラーに接着しました。
これだけでボイラーは完成です。やった!
私は使いませんでしたが、ナンバープレートを取り付けるための台座も付属しています。
ほか、自分で汽笛やベルなどを付け加えてみるのも面白いでしょうね。
ほか、シリンダー前面に貼り付ける蓋のパーツも付属していますが、ホワイトメタルのシリンダーに簡単な突起のモールド表現もあったので、今回は使いませんでした。
カプラーは前回のBタンク同様、アーノルドカプラーやカトーカプラーNが使えます。
今回はマグネ・マティックカプラーNo.2001の取り付け方も記載されていますので、そちらを使いました。
カプラーポケットを下廻りに取り付ける際、間に挟むカプラー台です。
前後でパーツが異なります。それぞれ前後の端を下側に直角に曲げるだけです。
マグネ・マティックカプラーの取り付け穴には、あらかじめタップが立てられているので、自分でタップ加工する必要はありません。
後部カプラー台(R)を床板の穴に合わせて置き、M1.4×5.5mmネジで留めました。
アーノルドカプラーやカトーカプラーを使うときは、このネジでカプラーポケットを共締めします。
カプラー台の上に付属の洋白スペーサー(小さいワッシャー)を置いてから、組み立てたマグネ・マティックカプラーを置き、M1.2×4mmネジで固定しました。
カプラー自体にもM1.2ネジが付属していますが、たいてい切り詰めが必要なうえ、マイナスネジなので使いにくいです。キットには代わりにM1.2プラスネジが付属しているので簡単に留められます。
なおワールド工芸も全部ではありませんが、キットによってはM1.2のプラスネジが付属していることもあります。付いているのを発見するとホッとするんですよ…。
車体を床板にかぶせ、後部の2箇所の穴にM1.4×3タッピングネジをねじ込んで留めました。
ここは事前のネジ切りは不要です。簡単に留まりました。
フロントデッキは後部の2箇所の突起を、サイドタンク前方下側にある穴に差し込みました。
ボイラーを車体の上に置き、後部の突起をキャブ妻板の丸穴に差し込みました。
ボイラーを載せるとき、モーターのギヤに周辺の部品が当たることがないよう、曲がりに注意します。当たっていると走行時に派手な摩擦音がするのですぐわかります。
今度は前側です。
カプラー台の後ろ側の穴に、M1.4×6mmタッピングネジを通し、ボイラーの下側の穴(あらかじめネジ切りしたところ)に差し込んで共締めします。これで上下が完全に固定されます。
カプラー台の前部の穴には、洋白スペーサーを挟んでカプラーを置き、M1.4×4mmネジでカプラーを固定します。
これで生地完成しました。塗装をしない方はここで完成です。おめでとうございます。
おおむね2〜3時間もあればほとんど完成するかと思います。
もう少しがんばって黒塗装しました。
一度分解し、クレンザーと中性洗剤で洗ってからアクリジョンで黒塗装しました。
今回はBタンクよりは少し艶を入れ、ブラック:つや消しブラック3:1ぐらい、それを専用うすめ液で1.2倍程度に薄めて塗りました。事前のプライマーは省略しています(金属なのでプライマー処理してラッカー塗装するのが
順当)。
下廻りではシリンダーブロックのみ黒で塗る必要があります。分解したくなかったので、付けたままそこだけ筆で塗りました。
ナンバープレートはランナーごと黒に塗り、乾いてからサンドペーパーで金属部分を磨き出しました。
削りカスを水で洗い流し、クリアーを筆塗りしておきました。
各部を再度組み立てて完成です。塗装を入れた総作業時間は約4時間でした(乾燥待ち時間を除く)。
これは昨年の産業用Bタンク。
以下、標準型Cタンクです。
いくつかのCタンクと並べてみると、こんな感じです。
C12と並べてみたところです。
標準型Cタンクは、自分で簡単な工作をしてみたい人のための製品ですが(ある意味、贅沢かも)、C12と同時期のため予算的に重なる人もいると思います。
ふと欲しくなったときに手に入るよう、定番化していただけるといいですね。
今回の「標準型Cタンク」は、特定モデルのない「ただの機関車」というニュートラルなものですから、色々な風景にマッチします。
何かを作るのはお好きでも、車両にはあまり手間をかけず、レイアウト製作のほうに労力を注ぎたいという方には特に喜ばれると思います。
昨年の産業用Bタンクよりも使い道が広いかもしれませんね。しかも確実に走るキットなので嬉しいです。牽引力も小型機なりの編成なら十分かと思います。
見ただけで、色々なディテールアップや改造をしたくなる方もいらっしゃると思います。