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3D雨宮タイプBタンク(トーマモデルワークス)

雨宮タイプBタンク2種

2021.5.14/2022.4.10

雨宮タイプBタンクの金属キットは、2012年にトーマモデルワークスから発売されていますが、その別バージョン的な製品です。
上廻りは一体造形のプラスチック(3Dプリンターによる光造形)、下廻りは塗装および組み立て調整済みのため、全体をまとめるのが非常に簡単です。Nゲージのキットはこれが初めてという方にも取り組みやすくなっています。
組み立ててみたところ、低速がよく効いて安定した走行でした。

[原形・密閉キャブ仕様(初回)] | 空制化仕様


キットの様子

今回は「#1091 3D雨宮タイプBタンク」「#1101 3D雨宮タイプBタンク〔密閉キャブ〕」の2種が同時に発売されました。
動力部がコアレスモーター採用、しかも組み立て済みで手間がかかっています。 3Dプリントの上廻りも量産によるコストダウンが見込めないはずですが、価格は2012年の金属キットと大体同じです。これがまず第一の驚きでした。

なおトーマモデルワークスでは、3Dプリンターで製造した製品のことを、シンプルに「3D○○」と称しているようです。

開放キャブの中身

「#1091 3D雨宮タイプBタンク」の中身です。「#1101 同〔密閉キャブ〕」も上廻りが異なるだけで同じです。

ご覧のように上廻りはドーンと一体造形で、組み立ての必要がありません。こういうのも私の夢というか、欲しかったキットのひとつだったので、ついに市販品で実現したかと大変嬉しく思いました。 …金属バラキットもしょっちゅう組み立てているくせに、それはそれとして、そういうことを考えるのでした。

動力ユニットには前後の端梁を接着し、バックプレート風のギヤカバーをかぶせます。カプラーとともに上下をネジ留めすれば完成します。

塗装は自分でするため、部品数は少なくても、やはりキットです。人それぞれちゃんと異なるものが出来上がると思います。

一体造形ボディー

ボイラーとキャブや、ボイラー上の煙突・ドーム類が最初から一直線に固定されているのが一体造形の良さです。個別のパーツを並べて一直線に組み立てるのはなかなか難しいですからね。

ボイラー部は斜め45度ぐらいの造形で、表面の状態は大変良く、必ずできる積層の縞模様も最小限のレベルでした。その程度は製品ひとつひとつによって異なります。

ディテールは比較的シンプルなので、自分で何かを追加するのも比較的簡単かもしれません。

組み立て説明書はPDFで提供されており、箱のラベルにQRコードとURLが印刷されています。すぐダウンロードして保存しておくことをお勧めします。何らかの理由でネットが使えなくなって、組み立てようとしたときに説明書が参照できないと、つまらないですからね。
2つのキットの説明書は共通です。

組み立て

簡単なキットですので、2両いっぺんに組み立てました。
サポートの切り口の整形や、ネジ切りなどの準備のあと塗装をして、そのあと組み立てとなります。

●準備

サポート痕の整形

車体底部と後部には、造形時のサポートが付いていた痕が少し残っているので、平ヤスリなどで平らに整えました。

切削の粉が非常に細かく舞い散りやすいので、少し水を付けるとよいと説明書にあります。

造形方向にもよりますが、光造形の造形物の表面は微粒面状になっているため、細かいほこりなどが付着しやすいです。ブロアーを使っても吹き飛ばなかったりしますが、塗装前に丁寧に水洗いすれば大体落ちます。しつこいものは、マスキングテープでも貼って剥がしたりしています。

端梁の整形

前後の端梁は、底部にサポートの切り口があるので、そこもヤスっておきました。

この部品は小さいので、水洗いの際に誤って流してしまうとアウトです。私はせっかく3Dプリントサービスで造形してもらった小さい部品を流してしまい、悔しい思いをしたことが2度ほどあります。まあ、アホですね(笑)。

タップ立て

動力ユニットを取り付ける3箇所の穴に、M1.4タップでネジを切りました。

説明書では、あらかじめ1.0mmドリルを通しておくよう指示がありますが、私の使ったタップには下穴径1.2mmと書かれていたので、一応1.2mmドリルを通してみた穴もあります。どちらでもできました。

ネジを切らずに、とりあえず両面テープか何かで動力ユニットを貼り付ける方法もあるかと思います。

使った道具

ちなみに道具はいつも適当に、手に入りやすいものを使っています。そのとき店にあったものばかりです。左が1.0mmドリルを装着したピンバイス、中央がM1.4タップ、右がそれを回すのに使ったピンバイスです。

素材の割れやすさがどの程度かわからなかったので(少なくともプラ模型のポリスチレン/スチロールよりは割れやすいと思います)、慎重にタップを立てました。中学校で習った通り、少し回したら反対に回して切りくずを排出することを繰り返して、少しずつネジを切りました。

薄い金属板にネジを切るときなどは、構わず一方向にぐるぐる回したりもしていますけど。

ギヤカバーの仮合わせ

ギヤカバーは特に整形することなく、モーターのギヤ部分にかぶせられることだけを確認しておきました。念のためその状態で試走し、ギヤが引っかかったりせずに走ることも確かめました。

しかし、ウエイトはもちろん上廻りも載せていないのに、低速からスムーズに走り出してびっくりしました。

●塗装

塗装

プラ用塗料で塗装しました。3D造形物の表面処理は始めたら結構手間がかかるので、ごまかしやすいつや消し黒にしました。

本当は少々のツヤを与えたいところですが、少しでもツヤが出ると積層痕が極端に目立ってくるので(水で濡らしてみるとギョッとしますヨ)、その場合は表面処理が必須になるかと思います。きちんと上手に行う方もいらっしゃるんですよね。

ただ、小さい車体が完全つや消しではややコントラストが弱いので、原形キャブのほうは端梁や煙室扉ハンドルを赤や金で化粧しました。密閉キャブのほうは、あり合わせのナンバープレートやメーカーズプレートで、ピンポイントにアクセントをつけることにしました。

●組み立て

端梁取り付け

前後の端梁を動力ユニットに接着しました。前後で少し形が異なり、前のほうがやや高さがあります。

接着にはとりあえず透明なゴム系接着剤(ボンドGクリヤー)を使いました。たとえば、あとでプラ板で別な端梁を作って、チビロコなどから外したバッファーなんかを付けてみるのも楽しそうではないですか。

ギヤカバー

ギヤカバーは、はめ込んだだけでも一応付きましたが、上廻りをネジ留めしたあとに外れると困るので、説明書に沿って小さく切った両面テープで貼り付けておきました。テープの端がギヤに触れぬよう注意です。

カプラー

カプラーはマグネ・マティックカプラー No.2001(ショートシャンク)が付けられます。ただ手持ちが少なかったので後部のみに付けました。

前部には付属の3Dプリント品のカプラーを使いました。切り離すときは細い部分を割らないように要注意です。

上下合体

動力ユニットをボイラーに合わせてネジで軽く留めました。前方の1箇所は一番長いネジ(M1.4×L6.0)を使い、カプラーと共締めします。

後部カプラーは床板にM1.4×L4.0ネジで留めますが、床板にはあらかじめネジが切られているため、自分でタップを立てる必要はありません。
なおマグネ・マティックカプラーに開いている取り付け穴はもともとM1.2用なので、使うときは1.4〜1.5mmドリルで広げておきます。

組み立て終了

これで組み立ては終わりです。キットに慣れた方なら、塗装時間を含んでも(乾燥待ちは除く)、1〜2時間で素組みできそうです。そのぶん、ほかの時間で細部を作り足したり、ウェザリングをしたり、窓ガラスを貼ったり適当なナンバープレートを付けたりと、さらに遊んでいくことができます。

なお残念なことにウェイトは付属していません。何かウェイトを積むように書かれていますが、試走の際にプラ客車や貨車数両を普通に引いて走っていたので、そのまま忘れてしまいました。

完成

気が向いて窓ガラスを貼ってみました。ほとんどわかりません(笑)。一方には余っていたナンバープレートとメーカーズプレートを適当に貼ってみました。

開放キャブ

#1091 雨宮タイプBタンク ※以下、原形キャブ
(拡大写真)

端梁間で3.6センチ程度の小ささです。

密閉キャブ

#1101 雨宮タイプBタンク〔密閉キャブ〕
(拡大写真)

開放キャブ

原形キャブ

密閉キャブ

密閉キャブ

開放キャブ

原形キャブ

密閉キャブ

密閉キャブ

走りはとても安定していまして、私のレイアウトの固定式ポイントのフログ部分(無通電)など難関も、普通のスロー速度なら止まることなく通過しました。 Bタイプの短い軸距離では綱渡りですから、動いているかどうかわからないほどの超スローなら通過しないこともありますが、実用上問題ありません。

R80

訳ありで作ったR80の曲線も、同社2軸客車との連結状態で通過しています。

そのままではやっぱり軽いので、ウェイトは何か探して積んだほうがよさそうです。
ちなみにウェイトなしではR280にて、KATOのトラ45000を4両程度は普通に引きましたが、さらにワム90000を2両追加すると空転場面もありました。実用上は2軸貨車5〜6両引けば十分かと思いますが。

ウェイト

だいぶ前に買ったテープ鉛があったので、ハサミで切って適当に折り、ボディ内側の4箇所に接着しておきました。

何かが劇的に変わった気はしませんが、気分のうえでは多少いいかなという感じです。ウェイトって下手なバランスで積むと、かえって集電が悪くなることもありますよね。

チビロコと

チビロコと雨宮Bタンク

左はKATOのチビロコ(無動力)、右が今回の雨宮タイプBタンクです。
チビロコも大変小さいんですけども、雨宮タイプBタンクは自走するという大きな利点があります。自力で機関庫まで帰れますからね。

旧雨宮タイプBタンク(金属キット)と

雨宮タイプBタンクと、旧金属モデル

左が今回の3Dプリントによるキット、右が金属キットであった初代雨宮タイプBタンクです。

初代キットのほうも新しいアイデアがたくさん詰まった製品で、組み立てが簡単で自走する話題の製品でした。今見ても一回り小さくて、金属らしい精密感があります。
モーターは少し斜めになった縦置きで、キャブ内にあり、ボイラーは中まで詰まった金属製でした。

初代雨宮タイプBタンク

初代の雨宮タイプBタンクです。金属エッチングの特長を生かして、薄い窓廻りや表面のリベット、浮き出した手すりなどが表現されていました。

新しい雨宮タイプBタンク

新しい3Dプリント版には上廻りにリベット表現がなく、各部のモールドもやや厚めにハッキリ表現されています。初代とは逆に端梁部分はボルトなどでディテール表現がなされています。
積層痕などの表面処理をユーザーがしやすいように、あえて上廻りはフラットな表現にしたのではないかと想像します。あるいはデザイン上、小さい機関車をあまりゴツゴツさせたくなかったのかもしれません。

そのほか

集電ブラシ

B型機関車は集電車輪が2軸しかないので、レールと車輪の通電状態を良好に保たないと調子を落としやすいです。

この模型はフレームと軸受けも光造形のため、軸受けからは集電できず、集電は車軸に接触した細い真鍮線の集電ブラシに頼っています。 繊維ゴミが1本でもここに絡むと具合が悪くなるので、線路周辺のホコリは特に気をつけて掃除しておいたほうが安全かと思います。これは小型機やキット製品全般の心得かもしれません。

私のほうでは1回だけ、特定の車輪が急に通電しなくなりました。車輪を外してピンセットで集電ブラシを少し引き起こしたところ回復しました。 もしかしたら、真鍮線の接触が甘くなることがあるのかもしれませんが、単に見えにくいゴミが絡んでいて、作業の際に取れただけという可能性もあります。まあ引き続き清掃のみ気を付けて様子を見ています。

特に経験を積んでいなくても、簡単に組み立てられ、しかもよく走るのが大変嬉しいキットです。
動力ユニットの別売も予定されているようなので、好きな上廻りを作ってみたくなりますね。これらのキットの上廻りを置き換えて、さっそく何か3Dプリンターやプラ板などで作り始めている方もきっといらっしゃると思います。今は工作方法の選択肢が色々増えていますからね。

雨宮タイプBタンクと2軸客車ハ2・ハ3

雨宮タイプBタンクとトラ45000

同様の上廻り一体造形・動力ユニット組み立て済みの路線が今後も続くか楽しみです。Cタンクなんかも期待してしまいます。

翌年に発売された〔空制化仕様〕について、次ページで触れました。


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