Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>きかんしゃトーマス号[C11]の組み立て
2016.2.24
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ネコ・パブリッシング(鉄道ホビダス)発売の、大井川鐵道きかんしゃトーマス号シリーズNo.1です。
キットのパッケージです。オレンジ色の客車を引いて疾走する、きかんしゃトーマス号の鮮明な写真です。
ショーティサイズなどを別にすれば、9mmゲージの国鉄蒸機のプラ模型は、1980年頃のフジミのC57以来ではないでしょうか。ちょっと自信ありません。歴史的な製品なのかもしれませんね。
KATOのC11と同じ大きさに作られているので、その動力を組み込んで走らせることも簡単にできます。プラ製の蒸気機関車のコンバージョンキットでもあるわけで、とても珍しいものです。値段の安いKATOのC11を活用してやろうという点でも、いい企画だと思います。
キットの構成は伝統的なプラ模型と同じで、主要なパーツは概ね実物に沿って色分けされています。細部はユーザーの手による塗装が必要ですが、そのまま組み立てても大体似た雰囲気の模型になります。
成形はしっかりしていますので、バリはほとんどありません。部品寸法も精密にできています。
モールドはKATOのC11ほどシャープではありませんが、だるだるというわけでもありません。まあ普及品のプラ模型のモールドです。
KATOのC11がなくても、ディスプレイキットとして組み立てられるため、台枠や各種車輪、バルブギヤも用意されています。
トーマスの顔はグレー成形で、そこに白成形の目玉を組み合わせます。
さて、組み立て上の最難関は、車体全体に施されている赤線・黄線などの装飾です。残念ながらこれらは印刷されていません(それで、値段を見ても高いと感じられる方は正直多いことと思います)。
その代わりステッカーが付属しているので、適宜これを切り取って貼り付けることになります。水を付けて貼り付けるデカール(スライドマーク)のほうが、位置決めや馴染ませがやりやすいように思えますが、一長一短もあり、人により好みも違うでしょう。
余談ですが、9mmゲージのプラ模型でC11は、40年前に童友社からも発売されておりました。レール、貨車付きで自走するプラ模型でした。
パッケージは今回のきかんしゃトーマス号よりかなり大きくて、こんな感じでした。
童友社のC11の完成した姿はこのようなものです。C10の姉妹品でした(写真の品はダミーの先輪が取れています)。何か時代を感じますね。
以下、ネコ・パブリッシング「きかんしゃトーマス号」の組み立ての様子です。
説明書には、「このキットは、プラモデル組立中級者以上向きです。」とあります。
でも中身を見て「自分にも何とかできそうだ」と思えば大抵大丈夫かと思います(保証はしませんヨ)。
きかんしゃトーマス自体に関心を持つかどうかは別として、大井川鐵道のC11があの姿で走ったことは事実でして(またあの実車デコレーションは相当よくできていると思います)、このプラ模型は決して架空のキャラクター商品ではありません。
ただ、これを普通にC11 227号機として組み立ててみたいという気持ちもありまして、迷いつつ始めました。
KATOのC11と違い、前後左右の面がそれぞれバラバラに成形されているため、KATOのC11では表現されていなかったキャブ妻板などのディテールも表現されているからです。炭庫形態をはじめ全体のディテールもC11 227号がもとになっています。
説明書はきちんとしたものです。
紙もいいですし、図も見やすく、手順もしっかり書かれています。
ディスプレイ用の下廻りの組み立てから始まりますが、KATOのC11を利用する時は始めの2つの手順はいりません。手順3から始めます。
Nゲージ蒸気機関車のキットはほとんど金属製なので、ふだんプラ模型を組み立てない方に様子を味わっていただけるように書いてみました。
手順ごとに、必要な部品をランナーから切り離します。
部品ぎりぎりで切ると、柔らかいプラ部品が傷むことがあるので、少し離して切ります。
プラ模型のパーツはとにかく柔らかいです。
ひとつの部品に複数のゲート(ランナーとのつなぎ目)があるときは、金属キットと同じく、どこを最初に切れば部品が傷まないかを考えてみます。
これぐらい大きい部品だとあまり関係ありませんが、切断の圧力で部品が押されるので、細い部品は曲がってしまうことがあるためです。
最初にここを切れば負担が少ないかな…?
最後にこのへんを切ってみました。まあ、あんまり差はないかと思いますが、気分だけ…。
切り離した側板です。
少し離して切ったゲートを、もう少し切り詰めています。
最後はデザインナイフで削り取りました。
普通、指の方向にナイフは向けないものかと思いますが、子供のころからこれで慣れてしまったのでこうなっています。もっとも、うんと力が必要なときは、刃が飛び出してくると本当に危ないので、向こう側に向けて使っています。
手順3で組み立てる部品を全部切り出してみました。
接着に入ります。
最初に、屋根と前後の妻板を接着します。前後の妻板にちゃんとディテールがあるのが、KATOのC11に比べて有利なところです。
が、ここがいきなり難しいです。位置決めをするためのポッチなどがなく、妻板が簡単にずれてしまうためです。
前後の妻板がそれぞれ少しでもズレてしまうと、車体が歪んだり傾いたりしてしまい、その後の工作がガタガタになってしまいます。さてどうしよう…。
あんまりやりたくない方法かもしれませんが、先に少量のゴム系接着剤を点付けして仮組みしました。少しなら動かせますし、剥がして付け直すこともできますから、接着位置の調整ができます。
左右へのズレや前後への傾きがなさそうであれば、内側の合わせ目に流し込みタイプのプラ用接着剤を少しずつ流して接着しました。
一度に流すのではなく、ゴム系を付けなかった位置に1個所ずつ、流しては少し乾かしてを繰り返していきました。気付かない隙間が空いていたりすると、表面に流れ出すからです。
左右の側板も、先にゴム系を点付けして仮組みし、左右でズレがないようにしてから流し込みタイプの接着剤で固定しました。
後部は水槽上面(A-2)を接着します。
上部に炭庫囲い(B-1)を接着し、最後に後面(B-6)をはめ込んで接着しました。これで後部はしっかりします。
いずれも、合わせ目の裏側から流し込みタイプの接着剤で接着していますが、裏からは接着できない箇所は、普通のプラ用接着剤をあらかじめ接着面に付けています。
次の手順は、ボイラーとサイドタンク上部の組み立てです。
サイドタンク上面は細長い部品です。先に側面端をカットしました。
次に末端をカットしました。
すべて切り離し、ゲートを削り取ったところです。
なお接着面の継ぎ目消しはせず、そのまま残しておくことにしました。理由はそのほうが手軽だからということになりますが、ぴったり合うようきちんと工作する必要はあります。
左右のボイラーをぴったり合わせ、流し込みタイプの接着剤で接着しました。
別パーツになっているドームの上部を接着しました。
ここの継ぎ目が目立つのではと少々不安でしたが、思ったほどでもありませんでした。
タンク上面(B-2,B-3)には先に給水口(B-12)を接着し、それからタンク本体に接着しました。
ボイラーをキャブ側に組み合わせて接着しました。
ボイラー後部がサイドタンク後部に重なり、安定して接着できます。サイドタンク前方は、少しボイラーとの間に隙間が空きますが、これで正常なので無理にくっつけないようにしておきます(KATOのC11は一体成型のためくっついていますけど…)。
手順4が終わったところです。全体がいかにもプラスチックの水色なので、ちょっと昔のケロッグのおまけみたいなものを連想しますね。ご覧頂いている方の年齢をまるで考えていませんけど。
次はいよいよ青以外のパーツです。細かいパーツも出てきます。
煙室の左右を接着し、煙突を接着しました。煙突は傾きやすいので、ボイラーに煙室を合わせて確かめながら付けました。
煙突の後ろの、コンプレッサーの消音器もここで付けることになっていますが、できることならば全体の組み立ての最後にしたほうがよいと思います。先端の排気管が非常に細く、このあとの組み立てで繰り返し傷めつけてしまいました。
組み立てた煙室をボイラーに差し込んで接着します。
ランボードは白成形になっています。前の端梁をまっすぐ付けるのが難しいので、ここも最初にゴム系で仮止めし、位置が決まってから流し込みタイプの接着剤で固定しました。
成型の都合で、傾斜部の中央にあるバネ箱の正面にディテールがなく、まったくの平板です(種車のKATO製C11にはある)。もっとも、カプラー解放テコがあとで手前に付きますので、見かけ上それほどマイナスにはならないです。
動力ユニットにかぶせるため、ランボードの後部をつないでいる仮ブリッジをニッパーでカットして取り去りました。
動力ユニットと仮合わせをしながらランボードを接着するため、先に動力ユニットのライト基板を外しておきました。
後部のライト基板はそのままにしておきました。
ランボードを動力ユニットに上からかぶせてみましたが、どうもライトの基板ホルダーのあたりが干渉するようです。
基板ホルダーはそのままにしておき、あとでランボード側を削ることにしました。
ランボードを煙室とサイドタンク前方にはめ込み、流し込みタイプの接着剤で固定しました。
さて、KATOのC11はランボードの水平部と傾斜部の間に大きな段差が作られていますが、このキットでは段差が小さく、実物に近づけられています。そうでないと側面に赤線が入るので目立ったことでしょう。
動力に被せるときに当たった部分をナイフで削り取りました。
切り込みすぎないよう注意します。金属工作と違って、プラ模型は本当にサクサク削れるので、予想外に大きく削れて穴が開いてしまったりします。
手順5まで終わったところです。これで全体の形はできたわけで、もう走り回ることができます。
手順6で使うパーツを切り出しました。細かいパーツが多いです。このほかにデッキ部のライトやスプラッシャーなどの取り付けもあります。
端梁にカプラーと解放テコを接着しました。
非公式側にはコンプレッサー上部(C-3)と汽笛(C-7)を接着しました。
後部にはヘッドライト(B-4)・テールライト(D-8)、それに石炭(C-2)を接着しました。これで大体C11として基本的なパーツは付きました。
このへんで完全にやることがズレました。
煙室前部には、トーマスの顔を取り付けることになります。
目と眉毛を入れる必要があり、ちょっと気後れしています。
何か既製品の顔パーツを、ポンと付けて済ませられればいいのですが。
手持ちのパーシーの顔。まるで違うのですね。
ここまで、きかんしゃトーマス号をそのまま素組みするかどうか、ふらふらと迷っていたのですが、一応ふんぎりがつきました。まずは、C11として組み立てたい。
残念ながら、C11の煙室扉やデフはキットに付属していないので、そこは何とかする必要があります。方針を転換したので、必要になったパーツを作ります。
煙室扉は種車のC11からかすめ取る方法もありますが、このキットはデッキの段差が修正されているので、デフは形が合わず使えません。
コンピューターで簡単な形のものを作りました。種車がデフォルメされているため、図面を単純に縮小できるわけではなく、適当にアレンジする必要があります。
煙室扉のヒンジなど、平面図を投影して持ち上げただけなので、かなり手抜きです。デフの肉薄化も前端だけ。ついでに前ステップも作っておきましたが、強度重視のため思い切り太くしました。
出力サービスに依頼したデータです。出力サイズに制限があるため、パーツを2個ずつつないで2ブロックに分けました。
出力サイズに収まる場合も、あんまり多数の異なるパーツをひとつにすると、最適な造形方向が取れなくなり、きれいに出力できなくなることがあります。
業務用3DプリンターのPerfactory4で出力してもらいました。
光造形方式なのでサポート材が必要ですが、すべて出力会社さんが適切な位置に付けてくださいました。空中に水平な辺が出現する部分は、ほとんどサポート材で支えられています。
ただ、小さな出っ張りならサポート材がなくても何とかなるようで、ステップの左右2箇所ずつの水平な出っ張りには何も付いていませんでした。
デフは裏側にもリブのディテールがあったため、サポート材は本当にデフの真下に付けてくださり、どちらの面にもサポートが付かないよう配慮してくださったようです。
点検口の上辺の支え方など大変参考になりました。手作業のモデリング作業でしょうから現場は面倒だったでしょう、ごめんなさい…。
サポート材を切除したところです。
パーファクトリーの造形は細部のディテールに若干の丸みを感じ、表現が柔らかな印象なので、このキットのモールドに合っていると思いました。
硬い素材ですが割れやすくもあるため、力をほとんど入れなくても切れる超音波カッターでサポート材をカットしました。 細い部分は、鉛筆で字を書くときの筆圧よりも弱いぐらいの力で、そっと数回撫でるだけで切ることができます。
ちなみにこれは本多電子(販売:エコーテック)のZO-41です。
標準添付の刃は、おなじみのデザインナイフの刃と同じもののようです。
作ったパーツを、ゴム系接着剤で本体に取り付けました。
最初の採寸が微妙に違ったようで、デフがちょっと前傾してしまいました。
前面はナンバーの位置が紙一枚低く、ナンバーを付けたら想定した顔つきと違ってしまったので、やむなくナンバー側を削って位置を直しました。
そんなわけでこのデータは、そのまま誰かに差し上げることもできません。
さて、色々な素材色の集合体で、このままでは正直いってオモチャっぽいのですが、塗装すればがらりと変わります。
煙突の後ろの排気管はとうとうモゲてしまい、穴を開けて0.25mmリン青銅線を差し込み、修理しました。
アクリジョンで若干つやを入れて塗装しました。さっきまでと同じ形なのに、色が変わるだけでC11らしく見えてきます。何となく甘く見えたモールドも、なぜか塗装前よりもシャープに見えます。
安全弁と汽笛には金を、ライトには銀を、片側の解放テコ受けにはアクセントに黄色を入れてみました。
最後に付属のステッカーを切り出して張り、窓ガラスを入れました。
C11 227も時期によって装いが違いますが、あまり考慮していません。
完成しました。C11を使ってC11を作ってどうなのと問われればアレですが、Nゲージ蒸気機関車のプラ模型が久々に発売されたので、やってみたかったのです。
後付けで作った前面やデフも意外とばれません。
架線注意のステッカーも貼ったことですし、関連装備として副灯を付けても良かったかも。
サイドタンクが拡張された三次型は、一見サイドタンクを下側に伸ばしたようですが、実は上側に伸ばしているのですね。
それに合わせて前面窓を少し高くし、それに合わせてキャブの床も上げて…で、こんな恰好になったのでした。
自分で組み立てた9ミリゲージの蒸気機関車が、ちゃんとレイアウトを走るのですから、やっぱり楽しいです。
C11の前面パーツやデフも付属していれば、金属製品にもない9ミリのC11を自分の手で組み立てる体験が手軽にできて、どんなに良かったでしょう。
しかし何と言いますか、ここまででできたのは「きかんしゃトーマス号」ではないのでして、
そこは軌道修正したいところもあり、続きます。
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