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C51(3Dプリンター)

3Dプリンターで出力したC51

2022.5.27/2022.6.15

KATOのC57(新)を着せ替えたデジタル製作のC51です。難しいところはないはずだったのですが、結構寸法直しが多くて時間がかかりました。


鉄道模型趣味1973年1月号にC51 225の鮮明な1/50図面があることから、基本はこれを丸パクリしました。225号機は「蒸気機関車の角度」等、書籍にも写真資料が多くて便利です。
具体的には、同じ図面の1/80版が蒸気機関車スタイルブック(新版)にあるので、そちらをスキャンして3D CADに読み込みトレース。1/50図は手元に置いて作図中に参照という感じでした。

完成

試したかったことは一通り試しました。まだ手作業で削り合わせた箇所も残っているので、いつかもっとスッキリさせたいです。
テンダーは17立方米後期形を新たに作りました。他にD50用に12-17テンダーも作ってあり、そちらも連結できます。

C51 225

C51 225

C51 225
(拡大写真)

基本は関西線の姿です。わからなかったところは適当で…。

C51 12-17テンダー

C51 225 12-17テンダー

C51 12-17テンダー
(拡大写真)

D50で作ったテンダーをつないでみました。C51の最後の45両は初めからこのタイプでした。

実物のC51の先輪・従輪・テンダー車輪の直径はC57より8センチも大きいのですが、表現が難しかったのでエンジン側はC57のままです。
ただ上の17立方米テンダーは、外見上の軸の高さを少し上げ、大きな車輪を付けたときと同じ高さになるようにしました。テンダーの床がちょっと高く見える、独特のスタイルが欲しかったものですから。

前から

ナンバープレートも光造形しました。失敗気味で歩留まりが3割ぐらいでした。一応文字とフチは浮き出しているので、肉眼で見れば市販のエッチングナンバーの一種に見えなくもないです。

造形直前にライトを点灯式にしたところ、貫通していた煙突の穴から光が放射して大変怪しくなりました(塞ぎました)。

後ろから

非公式側は配管が多いので金属キットなどでも時間がかかるところですが、光造形なので大して手間はかかりません。

キャブ

キャブの吊り金具はあまりちゃんと出ず失敗気味でした。割と柔軟性のある樹脂を使ったので、天窓レールは一体化をやめて細く抜きました。これぐらいなら全然大丈夫ですので。

…ただその柔軟性のため、ボディーは全体的にソフビみたいな感じでどうもシャキッとしません(あちこちの写真でそれを感じていただけると思います)。柔軟性が失われるのを恐れて2次硬化を手加減しすぎたかも。

全体的に目立つ配管が多いので、多少雑に扱っても折れたりしないよう、素材としては適していたように思います。

D50とC51

自分の中で対を成している、D50とC51です。

C51はワールド工芸の製品に満足しているため、それほどノリノリで作っているわけではありませんが、自分で使える3Dデータも持っておきかったものです。 その大元は、半世紀前に人様の用意してくださった図面でして大変感謝しています。

2両目はずっと楽にできるはずですが、前提となる動力ユニットの採寸が色々怪しいため、そこを何とかしないと気持ち悪いです。

●おもな参考書籍(書籍名のみ・一部)
・蒸気機関車設計図面集 原書房
・蒸気機関車スタイルブック(旧版・新版) 機芸出版社
・TMS設計図シリーズ32 国鉄2C1加熱テンダ機関車 形式C51 No.C51225 縮尺1/50 鉄道模型趣味1973年1月号 機芸出版社
・C51225 東海道線時代/関西線時代 鉄道模型趣味1973年1月号 機芸出版社
・蒸気機関車の角度 機芸出版社
・スポーク動輪の世界/華麗なるパシフィックC51・54・55 誠文堂新光社
・蒸気機関車EX Vol.41 2020 Summer イカロス出版
・蒸気機関車メカニズム図鑑 グランプリ出版
・国鉄蒸気機関車史 ネコ・パブリッシング

なおTMS設計図のC51225、および蒸気機関車スタイルブック新版のC51225にて、エンジン部の前後端梁間が12340と記されているのは、12430の誤りではないかと思います。
他の部位の寸法から検算すればわかります。途中、無視できないズレが生じておかしいなァと思っていました。版によっては訂正されているかもしれません。


以下は構造と造形についてのメモです。

機関部

部品構成

概ねこんな構造になっています。KATOのC57(1次形)の動力を初めて使いました。採寸が少々心許なく、色々な問題の元凶になっています(未解決)。
手持ちの木工用ハイトゲージで高さを測ったりしていましたからね…。

配管類も多く、部分ごとに最適な造形条件が違うと予想して、ボイラー部は3分割しました。

動力部切除部

C51はデッキ前方の形がC57と違うのと、車体幅もC57より狭いので、どうしても動力の一部加工が必要でした。赤い部分を切除しました。

ダイキャストブロックの3Dデータは、ボディーとの組み合わせに関係しそうなところしか作っておらず、他の形状はてきとうです。

動力部切除後

前側は金ノコで切り落とし、後部の座席の脇はヤスリで削りました。

前方のシリンダー上部のダイキャストもランボードに干渉しますが、ここはデフ裏で目立たないので、ランボードに穴を開けてダイキャストを逃がしています。

ほか、シリンダーと第一動輪の間の角穴はふさぎました。C51は上下に広い板台枠のため、この箇所は向こう側が見えません。

動力部組み立て

光造形したスポーク輪心、シリンダー、モーションプレートなどを組み合わせて動力部を組み立てました。 写真のテンダーは、最初にC57の中身を使って急造した仮テンダーです。

シリンダーはなかなかはめ合いが良くならず、5回修正・再造形しましたがまだ問題を残しています。
十分に検討もしないで、「ここじゃないかな?」程度で修正してやり直すからそんなことになるのでしょう(でも私の頭ではいくら考えても結果は同じのような)。

火室周辺の幅

ダイキャスト部の加工を最低限としたため、火室下部の幅が上部に比べてかなり広く、ランボードを境にハッキリと差があります。幸い、視覚的にあまりわからないところなので先送りにしました。

それ以前に、キャブ下はバネやイコライザーも含めて思いきり外側に広がっています。そのへんの構造も悩みましたが思考停止しましてC57と同様にしました。

非公式側の真鍮線

C51の非公式側は配管が多く、互いが互いのサポート役になるため、ボイラーとの結合構造を作らずにそのまま造形しました。
よって給水ポンプや給水温め器関係の配管はほとんど浮いています。
※結合構造を考えて一体化するより、そのまま浮かせたほうが簡単なので…努力したのではなく何もしませんでした。

ただ造形角度が26度と浅いので、スパンの長い配管はダレが予想されたため、長い直線は簡単に真鍮線を差し込むことにしました。

造形後

造形後はこんな感じで、ずいぶんと簡単でした。
給水温め器から止め弁のあたりの配管が一体でポンと造形されますからね。

100%の自信はありませんが、225号機ではランボードが1段下がっているところの前後位置が、公式側と非公式側でわずかに違うように見えます。写真を参考に、そのように解釈して作りました。間違いの可能性もあります。

公式側

公式側もハンドレールの水平な直線部のみ真鍮線にしました。斜めに一段曲がっている部分は樹脂製で浮いています。

テンダー

最初はC57テンダーの中身とD51標準形の台車を流用した仮テンダーを作って遊んでいましたが、やはりC51の17立方米テンダー(後期型)を付けたくて、作り直しました。

テンダー構造

17立方米テンダーは幅も長さも意外と小さく、C57テンダーの中身(=D51)が入りません。集電機構を流用できなくなるので、作りやすい旧製品の構造に変えました。

台車は新たにC51用に作りました。もともとD51標準形の台車が似ているため流用したいところでしたが、寸法的にギリギリ収まりませんでした。 ちなみにKATOのD51標準形のテンダー台車は、ピボット集電板の共用の関係だと思いますがスケールより微妙に長いです。

このテンダーは4つの車輪がちょうど等間隔に並ぶのも特徴のひとつですね。

テンダー台車

台車集電板と車輪は旧D51の部品を使いました。図中の車輪は正しい部品の形ではありません。

軸距離をスケールにするため台車集電板は少し削りました。軸距離が短くなるので、そのままでは軸が集電板の斜めのところに当たってしまいます。旧集電板はピボット軸にはまる構造ではないので、こういうところは結構自由に調整できます。

カプラーは台車マウントにしました。台車前後の梁がない代わり(フランジが高いので付けると当たる)、車輪に挟まれた空間にカプラーポケットを設けられるので、テンダー後部に出っ張らず外観は意外によいです。MT-7カプラーを付けて自動解放できるようにしました。

集電構造

旧製品と同じ集電構造です。テンダー内部には前後の台車を通電させる集電板があり、このパーツは留め具ごと旧製品を流用します。

現在の製品では、内部のダイキャストの一部が前方床下に出ており、そこにドローバーを接触させていますが、旧製品ではドローバーが前方台車の集電板に直接触れています。 集電にダイキャスト部が関係しないので工作がしやすいです。

通電式ドローバー(新タイプ←|→旧タイプ)

テンダー側が旧製品の構造のため、ドローバーも後部が旧タイプ、前部が新タイプです。デジタル製作なので、今まで作ってあった新旧のデータを半分ずつくっつけ、適当に高さを調整して終わりです。

以前使っていた3Dプリンターでは造形が甘かったため、なかなかこういう部品をきちんと作れなかったのですが、今使っているSonic Mini 4K(すでに2年前の機種)は結構きちっと出てくれるので製作は簡単です。以前は中央の留め具もパチンとはまらず一苦労でした。

テンダー造形

ここまでできたので造形しました。樹脂は柔軟性のあるxUltrat Blackで、台車やドローバーには有利です。

写真は集電線、集電シューなどを取り付けてあります。

側面の積層痕

2次硬化の際に反るのを防ぐため、1次硬化でなるべく固めてしまおうと照射時間を長めにとったところ、裏目に出て普段より積層痕が多めになりました。

床板の広い平面を通過するあたりで収縮の影響を受けてしまい、そのあたりにやや強い線が出ています。
いつもはこの程度ならそのまま使います(笑)。

積層痕をなくした

今回は気が向いて側板を分割し、積層痕が出ない方向で出し直しました。

表側に積層痕を出さないためには余分な手間が必要になることもあるので、普段はこの方法はとっていません。そのうちよい3Dプリンターが出れば解決すると思っています(そればっかりですけど…)。

ミニ四駆のウエイト

内部に積むウェイトは、ミニ四駆用を適当に使う予定だったのですが、割と細々したものをいくつも積むことになりそうで、

ハンダのウエイト

…結局棒ハンダをカットして積んでしまいました。

やえもんデザインのキットでも、ハンダがウェイトとして使われていたことを思い出しまして。何か厚さとか幅とかちょうどいいんですよね。

試運転

ドローバーは長さを少し変えて何本か造形しました。試運転により、R249やS字をうまく通過できる一番短いものを選びました。

私はC51に関しては、すでに特急列車よりは普通列車の牽引機という印象のほうが強いので、遊び方もそういうのが多いです。

以上のように製作いたしました。造形だけでなく動力部や動輪の加工が必要ですし、塗装も要りますから、まだボタンひとつですぐ複製ができるというところまでも行かないんですよね。


最初の造形

当初の仮組み用の造形物です。色々具合を試すために条件を変えて複数作ったものがあります。

結局どれも積層ピッチは0.035mm、造形角度は基本水平で、煙室・ボイラー・キャブの3パーツのみ26度斜め造形のものを使いました。

機材はPhrozen Sonic Mini 4K、樹脂はxUltrat Black、室温24〜26度で基本の露光時間は4sとしました。

FEPフィルムは昨年4月に装着したPeopoly製をまだ使っています。私の使用ペースではまだまだ使えそうな感じです。


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