2021.6.27
最後の新製2B機と言われる機関車で、何となく8620にも9600にも見えるけれども動輪が2軸という、実はどちらとも違うスタイルです。
これをNゲージで入手するには主台枠もバルブギヤーも作ることになり、簡単なものしか作れない私には無理なので、8620形の軽加工で6760タイプみたいなものを作りました。実際簡単ですぐできました。
動力部はシリンダーや加減リンクの形を考えると、C50記念品を使う方が簡単かもしれませんが、手持ちの関係で8620を使いました。
動力ユニットから先台車と第一動輪・連結棒を外しました。第二連結棒体はそのまま使ったので関節表現も残っています。
ボディーや先台車と当たる赤色部分はカットしました。切除範囲は少ないので、動力部の加工にはテンダー合わせて1時間もかかりませんでした。
ボディーと先台車本体は光造形(3Dプリンター)です。3Dプリンターでの模型造形は、現在多くの方が楽しまれているとおり、すでに何の不思議もありませんので、造形過程は省略します。
(Phrozen Sonic Mini 4K/Anycubic Black/t0.035/5s)
6760形のスライドバーは上下2本です。以前の190形や8800形では2本スライドバーも作っていましたが、今回は動輪軸距離も8620のままなので、まるごと8620の流用ということで手をつけませんでした。もっとも市販のNゲージ蒸気機関車で、軸距離が実物と違うものはよくありましたけども。
動力部の前後位置はシリンダーを基準に合わせました。第一動輪は実物よりも約0.5mm後ろに、第二動輪は約2.2mm前にずれます。
加減リンクも実物より後方に来るので、ボディー側のカバーと位置が合いません。少しでも合わせようと、カバーを少し後方・外側にずらしていますが、コンプレッサーや冷却管の配置にも影響するため完全には合っていません。たぶんただの工具箱なんでしょう(笑)。
6760や8800などの2軸先台車は、C57などに比べて軸距離が短く、シリンダー周辺の余裕がぎりぎりです。末期の入れ替え機時代の姿としたので、直線と4番ポイントの渡り線を通れればよいと大負けに負け、1/150の軸距離のまま作りました。
最初に先台車が当たる部分をカットしました。
まず、プラスチック製の動輪押さえ板を、もと第一動輪軸受けのあたりでカットしました。残った動輪押さえは、もと第二〜第三動輪の間のツメと、最後部のツメで固定されているので大丈夫です。
ダイキャストブロックの台枠も一部削る必要があります。ギヤボックスに金属くずが入らないようマスキングテープでぐるぐる巻きにして、そのまま手持ちでヤスリがけしました。
模型店やホームセンターで売っている組みヤスリの、主に半丸ヤスリと丸棒ヤスリを使いました。もう少し大きい半丸ヤスリもあると便利です。
先台車の取り付けの略図です。あまりよい方法ではないかもしれませんが、簡単でした。
取り付けベースは厚さ1.2mmのプラ板で作り、中央に穴を開けて(ショート防止のため貫通はさせていません)0.8mm真鍮線をはめました。
そこにカプラースプリングを通して従台車上部のスリットを通し、端を0.5mmプラ板の留め具で留めています。
ダイキャストブロックへの固定は、適度にはめ込めるように1.2mmプラ板のサイズを調整し、両面テープも使っています。仮っぽくて少々イヤですが位置の微調整はしやすいです。
スプリングにはマグネ・マティックカプラー(MT-7、MT-10)の柔らかいスプリングを使いました。もしくは普通のカプラースプリングを少々カットして使う予定でした。
端の0.5mmプラ板の留め具は、すぐ落ちたりしないよう、ゴム系で接着しています。
先輪はKATO(ラウンドハウス)のスポーク先輪 28-194 を使いました。そのままはめ込んでいます。
先輪はそれぞれの軸受けを少し横動できます。先台車本体は左右のシリンダーブロックの間で少し回転でき、横動もします。中央の留めピンが0.8mmと細めなのは、移動幅を少しでも多く確保するためです。あんまり横動を多く取りすぎると、先台車自体は脱線しなくても、機関車の向きをカーブに沿って導く働きが弱くなり、全体として具合悪くなりそうですが、機関車全長があまり長くないので大丈夫のようです。
シリンダーブロックの形状もある程度欠き取っておけば、R280の本線も脱線せずに通過しました。ただ、私はこのすぐ外側にフロントのステップを付けたので、結局はそれに当たってしまいます。
…などと、計画したようにはきれいに作ることができず、実際の工作例は無様な感じなのでありました(笑)。
先ほど書いた横動に関係する、先台車の厚みなどの寸法です。これは3Dデータ上での数値で、造形後の寸法は使用する3Dプリンターや樹脂や条件によって変わります。
中央付近は横動を少しでも大きくするため、軸受け付近より側板を薄くしています。横動の量は先台車自体の横幅や、中心ピンの太さも併せて検討しないといけません。
真横から見ると元第一動輪の軸受け付近が開きっぱなしなのが丸見えます。
あとで左右のダイキャストブロックの間に、黒色プラ板の小片を挟んで、こういう透視のみ防いでおきました。そのままでも普通に遊ぶには大して目立ちません。
先台車が付けば、ほとんどこの機関車の加工は終わりです。あとはボディー等を光造形し、塗装して取り付ける程度です。
先月作ったC61で、ナンバープレートもある程度3Dプリンターで出せることがわかったので、今回も3Dプリンターで作りました。
前回サポート形状が悪く、切り離しの際にナンバープレートの端が欠けたりしたので、今回はそのあたりに注意しました。
確実な造形と両立できるか不安があったため、縦方向・横方向とも用意しました。結果は、横置きだとちょっと歪みが出たので、少しサポートが足りなかったかもしれません。
写真は使い残りですけども…造形後、まず強い塗料(Mr.カラー)で金色を吹き付け、乾いてからその上にタミヤカラー アクリル(水性)の黒を筆で塗りました。文字やフチの上にも構わずベッタリ塗りつけました。
黒が指に付かない程度に乾いてから、細い綿棒にタミヤアクリル溶剤を付け、文字とフチの黒をふき取りました。乾いてから程度のよいものを選んで付けました。
フチや文字の厚みはデータ上では0.12mmにしました。実際の寸法は3Dプリンターの解像度や出力条件によって変わるので、このとおりになっていないと思います。
この程度で、筆で黒を塗ってふき取るには十分な厚みでした。もっと薄くてもいいかもしれませんが、まあ結果は悪くないのであまり追及していません。
なお文字の形は、実際のナンバープレートの規格から拾ったわけではなく、蒸気機関車スタイルブックの図をただトレスしただけです(それでトップナンバーになっています)。トレスといっても複数の楕円を画いたりして、大体写し取ったものでかなりテキトーです。何しろ小さいので正確に出るわけでもありません。
こんな感じになりました。簡単に一風変わった雰囲気の機関車ができました。
(拡大写真)
造形物の表面処理はまったくしていません。そのまま塗装しています。
煙突は延長されたものにしました。各部の装備は複数の写真の寄せ集めですが、漠然と横浜機関区の入れ替え機というイメージで作りました。
つかみ棒も3Dプリンターです。折れてもいいように、いっぺんに15本ほど造形しました。どれだけ折るつもりなんだか(笑)。
シャーシ以外には種車のパーツを一切使っていません。ボイラー部もテンダーも、元の上廻りのパーツが無欠品で残っています。
テンダー後部のハシゴは、8620の下廻りのパーツと一体化されています。そのまま残しておきました。
動力部の前後合わせの関係で、キャブの後部にはダイキャストの座席がむき出しです。後部妻板はその上部のみ作っています。強度的な問題でそこの窓も上側にずらしています。
キャブ後部とテンダー前部の手すりは強度確保のため、下側1/3〜半分は壁でつないでいます。全部つないでもよいと思いますが、一部でもちらりと向こうが抜けて見えると深みを感じたりするもので、実機の機炭間の重なり具合と見え方を考え、上部を部分的に浮かせました。
こういう手すりぐらいは、真鍮線などで作って取り付けてもいいと思います。迷いましたが一度で造形できる簡単さをとりました。
実用性について…第一動輪を外した割にはまともに走りました。カーブは期待していなかったものの、R280でもR249でも脱線せずに通過し、予想より普通に遊べるものになりました。
当初、先輪がフロントステップに当たって回転が止まりがちだったので、あとでステップを切り取ろうと思っていましたが、走らせているうちにほぼ止まらなくなりました。結局そのまま使っています。
昨年作った8800形(手前)と、今回の6760形タイプ(奥)です。
8800形の製作時はまだKATOの8620が発表されていなかったため、種車にはC50記念品を使っていました。そのため車輪が銀色です。
造形表面は8800のほうがボサッとした感じですが、全体のディテールの粒度も使用した樹脂も、今回の6760タイプと同じでして、新旧の3Dプリンターの違いによるものです。