Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>石炭を積む(3Dプリンター)
2024.11.10
今まで3D CADでは石炭の粒モデルを1つずつ並べていたため、今更ですが単純なものを考えました。2案作りました。
テストのため市販模型のパーツを置き換えましたが、普通はそういう用途なら、市販のバラストや石炭粒子を接着剤で固着するほうが早いです。
以下はデジタル製作で、後工作をせずに石炭も一度で造形したい場合のお話です。
面を格子状に細かく分けて形を作り、その頂点をバラバラにずらすだけです。
こういう作業は3D CADより3D CGのほうが簡単なので(私の限られた認識範囲)、Blenderを使いました。標準でランダム化の機能があります。
たまたま手直にあったKATOのC57の石炭に合わせて試すことにしました。
33×17.5mm(Blender上では3.3×1.75m)の平面を作り、面の細分化で細かい格子状にしました。
※先に長方形を作ってから分割するとマス目が正方形にならないので、正方形の状態で細分化してから幅を詰めました。
頂点編集モードで頂点をZ方向に持ち上げ、少しずつ山盛りの形を作りました。
プロポーショナル編集にして、周囲の点も馴染ませて引き上げています(円で囲まれている範囲が影響の目安。マウスのホイールで範囲を調整可能)。
あちこちを少しずつ持ち上げて形を作ったら、頂点を不ぞろいにするため、メッシュのランダム化を選びました。
左下に出るメニューで量を調整しました。あまりブレが大きいと頂点同士の交錯が頻発し、あとで修正するのが大変です。それほどゴツゴツした感じにはできません。
(これは別テイクなので形や分割数が違います)
私は3D CGよりも3D CADのほうが少し慣れているので、出来上がった形はSTL形式でエクスポートしてFusionに移し、残りの土台を作りました。
しかし、頂点のランダム交錯で面がひっくり返ったり自己交差したりして、体積が0になっていました。そのままでは3Dプリントできないため修正の手間がかかってしまいました。
3Dプリンターで造形して完成です。
HOサイズぐらい大きく作るのは表現的に苦しいかもしれませんが、Nのタンク機の後部炭庫など、小さい面積の石炭を手っ取り早く作るには悪くない方法だと思いました。
パーティクルとはシーン中に置いたエミッター(発生器)から粒子やモデルを放出し、煙や霧・エフェクトなどをリアルに表現する機能です。指定したモデルを大量に噴出させることもでき、地面に草を生やしたりする際にも使われます。Blenderに標準で備わっています。
仕掛けを作りましたが、あまりよくわかっていないので、設定は適切でないかもしれません。
これだけでは周囲にこぼれた石炭がどこまでも落ちていく気がして、さらに下に緑色の平面を置いて受け止めています。一応、衝突したら消滅という設定にはしていますが、全体的な設定がデタラメなせいか、消えるものは稀のようです。 |
石炭は立方体の角をベベルで押し込んだりして、適当に作りました。作ったのはこの1個だけで、エミッター側の設定でランダム回転を加えたりして落ち方に変化が出るようにしています。着地時の向きによって違った形に見えるよう、少々いびつな形にしたほうがよいかもしれません。
土台には半分程度めり込んで止まります。
土台は先ほど頂点のランダム化の際に作ったものを流用しましたが、頂点はずっと少なくてもよいため(石炭で覆われますから)、「デシメート」モディファイアーで分割数を300ポリゴン程度まで減らしました。適用してモデルの形そのものを変えてしまいます。
これは不要かもしれませんが、当初石炭が少し斜面を滑って下にズレがちだったので、土台を段々畑のように変形させました。「リメッシュ」モディファイアーの「ブロック」で簡単にできます。粗く調整するとレゴで作ったような地形も楽々できるので面白いです。
これに物理演算プロパティでコリジョンを設定し、落ちて来る物体を受け止められるようにしました。
放出面にはパーティクルシステムを設定しました。発生タイプは「エミッター」、レンダリング方法は「オブジェクト」にして、インスタンスオブジェクト(ばら撒く分身)には先ほど作った石炭モデルを選びました。
そのほか色々な調整がありますが、在らぬところから発生したり、空中の変なところに積もったりと意味不明なことがたくさん起きました。最終的には、腹落ちはしていませんが目的を達するものにはなりました。
スペースキーを押すと、ざっと石炭が降り注いであっという間に形ができます。
多少下地が見えている程度がよいようです。あまりビッシリ並ぶほど放出すると、互いの重なりが多くなりすぎ、全体としては平均化されて変に滑らかになってしまいます。
パーティクルで撒かれた石炭は見かけだけのものなので、「インスタンスを実体化」を選んで実体化させました。大量の石炭が複製されます。
当初、実体化するとすべての石炭が1箇所に集まってしまって困ったのですが、いつの間にか直っていまして原因がわかりません。
実体化してから、空いているところに近くの粒を寄せたり、重なりすぎているところを間引いたりして少々整えました。個別のオブジェクトを適当に次々動かしたいときは、FusionよりもBlenderのほうが手早くできるので、ここまではBlender上でやりました。
STL形式で書き出した石炭をFusionで読み込んで土台に載せ、余分なところを取り除くなど最終調整しました。
3Dプリンターで造形しました。一度設定ができてしまえば頂点のランダム化よりも作りやすく、粒の大きさなどの再調整もしやすく、よさそうに感じました。
結果は手で石炭を1つずつ並べて作るのと変わりませんが、労力は比べ物にならないほど楽です。
3Dプリンターの解像度の問題もあり、粒のサイズは少々オーバーにしたほうが、私の3Dプリント品には似合った表現になるようでした。
ちなみにこちらが、「その1」で作ったメッシュのランダム化によるものです。パーティクル版と違うと言えば違いますが、小さいNゲージで考えれば大差ないかもしれない…。
3D CGでは他にも表面を凸凹にする方法がいくつもあると思いますが、やりたかったことはできたので、ここまでです。
これはKATOのC57の石炭です。メーカー品はさすがとしか言えません。
Blenderのパーティクルで作った石炭
Blenderのパーティクルで作った石炭
出発前の満タン積載ということで、キャブ屋根に届くほどの盛りにしてみました。
時として、屋根の高さを超えていたものも。
KATOのオリジナル石炭
KATOのオリジナル石炭
それが少し走って消費した、という想像。
以上、便利なプログラムを何でもかんでも無料で利用できる現代が、不思議かつ有り難いというお話でした。