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D51なめくじ(3Dプリンター)

3Dプリンターで出力したD51なめくじ

2021.1.23

KATOのD51一次形東北仕様の上廻りを挿げ替えて、別形態の51なめくじを作りました。


考え方

以前に作った標準形のデータになめくじドームを載せ、関係する箇所を修正していきました。

ボディ部完成データ

元図は主に蒸気機関車スタイルブックの新版を参考にしました。同書の旧版や、よく見る実物の組み立て図とはドームの長さが異なります(旧版は短い)。
なるべく特徴の少ない基本形にしておきたいと思いましたが、基本とは何ぞや(笑)。

機材と材料

今回はAnycubic Photonではなく、Phrozen Sonic Mini 4K を使いました。
今は低価格3Dプリンターの光源も高出力化されていますが、さらにモノクロ液晶パネルを使用して露光時間を短縮した機種がいくつも発売されており、その中のひとつです。

平面解像度はAnycubic Photonと同等の0.05mm程度あれば私には十分でしたが、狙った2K機が品切れだったため、たまたま入荷した4K機にしました。

PhotonとSonic Mini 4K

右が今回使ったSonic Mini 4Kです。
左のPhotonよりも裾広がりなので設置幅が大きく感じますけども、実はPhotonも側面がベベル状に膨らんでいますので必要幅は同じです。また、いずれも側面にUSBフラッシュメモリーを差し込みますので、その分の空間も取ります。

高さはSonic Mini 4Kのほうが小さいため全体的にはコンパクトに見えます。造形可能な高さはその分減っているので、背が高いものには向きません。

前面カバーを開けたところ

カバーを開けたところです。最近の低価格機は扉を開けるのではなく、上カバーを丸ごと取り外すものが多いです。

造形原理が同じなので、メーカーが違っても中身は大体同じです。よって何の覚え直しもなく、すぐに新しいプリンターを使えました。 最初にプラットフォームの水平出しをするとき、Photonはネジ1本だったのが、Sonic Mini 4Kはネジ4本になったぐらいが違うところでしょうか。

なおSonic Mini 4Kは、露光のたびに側面や後方の空気口から紫色の光が漏れます。これはちょっと気になる点です。

昇降モーター音はPhotonよりは甲高いですが、軽やかな機械音で、私は気になりませんでした。モーター音よりも、FEPフィルムから引き剥がされるときの「パッコン、パッコン…」という剥離音のほうが造形物によっては大きいです。 本体重量が軽く、上カバーにもガタがあるので、振動や反響で思いのほか周囲に響くのですね。FEPフィルムが新しいうちは、壊れるんじゃないかと思うぐらい大きな音がすることがありました。ただそれは造形物によりますし、耳を澄まさないと剥離音が聞こえないこともあります。

この「パッコン」の際にUV樹脂が上カバーの内側に飛び散ることがあり、時間がたつと取れないので、気になる方はあらかじめラップなどをカバー内側に貼っておくといいかもしれません。私はもう手遅れです。

Photonにあったような、庫内の悪臭を外にまき散らす臭気拡散ファン(私は配線を切ってしまった)はないので、動作中の臭いはひどくありません。機械部分の冷却ファンのみ回っています。このファンの音はPhotonの冷却ファンと同程度です。

テスト造形

材料のUV樹脂には「SK ABS-Like(黒色)」を初めて使ってみました。割れにくくてサポートが取りやすそうだな…と思ったためです。特に4K専用ではありません。結構どろりとしていて粘度が高い感じです。

テストモデル

初めての造形です。またこのモデルかい(笑)。

露光時間は4秒、層の厚みは0.035mmにしました。結果は見ただけで過去最良でした。水平な天面のリベットやスジボリ、浮き出しが一発ですべて出たことなど、今までなかったからです(正確な寸法で出たというわけではないと思います。とにもかくにも、「出た」)。

右側側面の垂直なところに、縦横3本ずつ細い線がありますが、これは実際にモデルに入れてある溝で、Z軸のガタによる段差ではありません。

途中で造形面積が大きく変わるようなところでは、どうしても剥離時のブレや膨張収縮の差による線が出ますが、この方式のプリンターでは避けられないことだと思います。

エンジン部造形構造

結果を見て、今まではバランス上出していなかったディテールも全部オンにしてみました。
サポート構造はD51標準形のときに作ったものを再利用しました。標準形よりキャブが小さいので、その付近の調整のみです。

4秒露光

各層4秒で露光しました。Photonの場合、普通のUV樹脂は13秒前後、特に速いUV樹脂は7〜8秒で出していたので、半分から1/3ぐらいです。

それまで10時間以上かかっていたのが5時間程度で出ました。細かいディテールは全部出ているようですが、だいぶ太くなっているようです。4秒でも露光が長いのかもしれません。

ドーム部分の継ぎ目は幅0.09mmの溝なので、ほとんど出ないと思ったのですが、はっきり出ています。

2.5秒露光

2.5秒にしてみました。ここから、アンチエイリアシング3・ぼかしピクセル2を設定しています。
ハンドレールなどはかなり細くなり、それでも露光不足ということはなさそうです。ランボード下の冷却管は間がつながっていますが、ここは抜けても抜けなくてもいいのでOKです。

しかし残念ながら、このUV樹脂は私のところでは問題が起きてしまい、テンダーまで一通り造形したところで使用は中止しました。

残留硬化物

このUV樹脂でおよそ4時間くらいの造形を行うと、レジンタンクの底(FEPフィルム上)に、膜状の不規則な硬化物が必ずできました。 気づかずに次の造形を開始すると、液晶パネルを傷める恐れがあります。またモデルによっては、この固形物を途中ですくい上げてしまうので、造形物の途中にフラップ状の物体ができるというやっかいなことになります。

原因は不明で、モデル形状やスライスとは無関係です。まったくモデルのない造形データを作り、4時間ほど造形を行うと(紫外線LEDは点灯するが、液晶パネルは全面遮光)、それだけで硬化物ができました。

液晶パネルの遮光性も100%ではないでしょうから、わずかに漏れた紫外線でレジンタンクの底のUV樹脂が変化していくのかもしれません。特にこのUV樹脂はどろりとしているので、同じ場所にとどまりがちで、最終的に一部が硬化してしまうのではないかと。

造形時のLEDパワーを初期値の255から40台まで落としながら繰り返しテストしたところ、固形物は減っていくものの、なくなることはありませんでした。

Anycubic 4.0s

UV樹脂を替え、Photonで使っていたAnycubic製のUV樹脂(黒)にしました。こちらは謎の硬化物は一切できません。

もともと硬化時間が長めの樹脂だったため、4.0秒で露光してみました。
ランボード下の冷却管も多少歪んではいますが間は抜けています。粘度がそれほど高くないので、浅い傾斜角でも抜けていきやすいのかもしれません(同じAnycubic製でも色によって違う)。 ただ、割れやすいのでサポートの除去や取り扱いには注意が要ります。

追記 その後買い足したものは、粘度が増していました。ばらつきあるようですね。

Anycubic 4.0s

Anycubic製(黒)での最終造形です。4K用ではありませんけども、作ったディテールははっきり出ており十分です。

組み立て終了

サポートを取って塗装し、下廻りにはめ込んで終わりました。表面の平滑化など、後処理はまったくしていませんので、どのように造形されるのかはご覧いただけるかと思います。

D51なめくじ

D51なめくじ

ATSなし、動力逆転機付き、煙室扉上に手すりあり、空気作用管はカバー内という格好にしました。
実物は多くがネジ式に替えられましたが、一次形の基本形としては動力逆転機付きが好きです。

D51なめくじドーム

表面の状態がよくわかるように異常拡大しました。
ドーム中央の砂箱部分は実物の組み立て図と同じ断面形状ですが、その前後は自分のイメージで(←あてにならん)数枚の断面と輪郭のガイドレールを画き、ロフト機能でつないだだけです。ちょっと変ですが、下手に色々と情報を加えるとかえって変になったりしましたので、今回はこのへんであきらめました。

ボイラーバンドはドームの裾に乗り上げないよう、上部を薄くしたのですけども、この3Dプリンターではこれだけ拡大するとバレます。

D51なめくじ前面

煙室扉はいつも自分でデフォルメを施していまして、今回もそのうち一案で造形しましたが、何かイマイチでした。今度作るときはまた具合を変えてみます。

ナンバープレートは唯一の手持ちの未使用品で、実機と無関係です。

ところで日本の自動車では、自分で希望しないかぎり42ナンバーは使われないと聞きましたけども、機関車には構わずあるんですね。

Anycubic Photonとの違いです。使っている樹脂も異なるのであまり意味はありません。

Phrozen Sonic Mini 4K + Anycubic Black

もう発売から4年目に入るPhotonと、Anycubic製UV樹脂(グレー)の組み合わせです。

石炭部分がブレているように見えますが、写真のブレではなく、このように造形されています。

Phrozen Sonic Mini 4K + Anycubic Black

今回使ったSonic Mini 4Kと、途中でやめたUV樹脂 SK ABS-Like(黒)の組み合わせです。同じ石炭モデルです。露光時間はわずか2秒ですが、石炭の粒々がハッキリ出ています。

もちろん市販のプラ完成品に比べますと、低価格3Dプリンターでは表面の平滑度も寸法精度も大きく落ちます。

KATO D51一次形東北仕様

KATOのD51一次形(東北仕様)です。

Phrozen Sonic Mini 4K + Anycubic Black

3Dプリンターで作ったものです。
一辺0.035mmの微細な立方体(ボクセル)の集合で表面ができているので、規則的なパターンのザラザラがあり、そのままではどうしても市販品のようなきれいな光沢になってはくれません。

標準形のときに作った汽笛引き棒が、そのままではドームに刺さってしまったのでどうしようかと思いましたが、KATOのも刺さっていたので安心しました(笑)。

今までと違う3Dプリンターを使いましたけども、使い方には違和感ありませんでした。大幅に時間の節約になり、解像感もはっきり向上していました。

やっていることは、Wordで文章を作ってプリンターで印刷しましたというのと同じようなものかもしれませんが、今はまだ面白く感じます。
ワープロも登場したばかりのときは、他愛無い文書でも印刷物になるのが面白かったですヨ。


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