Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>D51なめくじの組み立て(やえもんデザイン)
2011.3.7/2011.4.6
2011年になって発売された、やえもんデザインのD51シリーズの新製品です。なめくじ標準タイプ、北海道タイプ、長工タイプの3つが発売されました。
ベース車両は従来どおりマイクロエース、またはKATO旧製品を対象にしています。KATOのD51 498が発売されたあとなので、製品の位置付けが微妙になっているかもしれません。とりあえず、従来シリーズの続きです。
発売から一月たち、ようやく時間ができたので取り掛かりました。
説明書を見たところ、全体の組み立ては今までの製品と基本的には同じのようです。すでに何度かご紹介しましたのでざっと晒します。
プレス済みのボイラーとキャブ、エッチング板数枚、ロストワックス製パーツ多数、各種真鍮線など。 |
前半の時間配分として、次のように計画。
1)キャブ…2時間
2)ランボード・ボイラー…1時間
3)なめくじドーム削り合わせ…1時間
4)上部パーツ取り付け・配管…2時間
5)煙室周辺…2時間
ここまでは、夜更かしすれば金曜・土曜両日の夜間で何とかいけそうです。平日に入るとぐっと進みが悪くなるでしょう。
右が標準型、左がなめくじのキャブです。このキットでは屋根の長さで長短の変化がつけられています。窓の前後の幅も少し変わっています。 妻面の丸窓は最初から開けられています。標準型キットでは、必要なときに自分で穴を開け、付属の丸枠をハンダ付けするようになっていました。 |
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組み立て方法は標準型キットと変わりません。 吊り環など細かいディテールは、好みに応じて自分で追加することになります。 |
ランボードは先に網目部分を折り曲げ、前方から順に曲げ角度を決めていきました。 4本の仮ブリッジは最終的にカットしますが、なるべくあとまで残しておいたほうが便利です。時々前後から見て、これらが平行になっているように心がければ、組み立て中にゆがみが発生しても見つけやすいと思います。 |
ボイラー、キャブと合体したところです。ドームは仮置きです。 最初に、プレスされているボイラーの下辺をきちんと平行にしておくと、ランボードが水平に付きやすくなります。 |
なめくじドームは煙突の後方で2分割されています。2個の接合面の形状は若干違うので、そのままではぴったり合いません。きちんとつなごうとすれば、側面の削り合わせや肉盛りが要りそうです。私の腕では傷口を広げそうだったので、高さの調整のみ行い、あとはあきらめました。写真は両者を接合して1つにしたものを裏側から見たところです。 ドーム内側も削って、ボイラーに密着するよう調整しますが、どうしても実物の見事な密着感は出せずに終わりました。あまり削ると薄くなったエッジがめくれ上がってしまいます(ヤットコでフチを折り下げるようにもしました)。フィギュア製作などをなさっている方々なら上手に処理されるかもしれません。 |
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標準型の砂撒き管はロストパーツでしたが、なめくじでは付属の0.3mm真鍮線をボイラーに巻いておき、そのうえにドームをかぶせるようになっています。 |
ドームを取り付けたところ。一見ぴったりになったように見えますが、残念ながら光線の加減によるものです。 私はもともと金属キットの組み立てにはハンダ付けから入ったので、基本的にはハンダ付けで組み立てますが、このドームは接着固定しました(特に接合方法にこだわりはありません)。この場合、もし接着が曲がっていたらあとが大変です。 周辺の小物もついでにハンダ付けしておきました。 |
非公式側は、通風管と給水ポンプ蒸気管のみ追加することにしました。 これは車体にテープを貼って、鉛筆で配管の予定位置を画き込んでいるところです。これをはがして平らなところに貼り、それに沿って真鍮線を曲げると一度で決められます。 |
発電機は吸気管と排気管のみ作り、電気配管は省略しました。なめくじのシンプルなシルエットを活かしたかったので、吸気管も省略するかどうか迷いましたが、結局0.2mm線でプラモールド的にボイラーに密着させて作ってみました。 ランボードに沿って前方に伸びる送水管は、説明書では一番煙室側の穴へとありますが、前から2番目の穴にしました。 |
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公式側は自分で追加したものはありません。 小型オイルポンプ箱が付属していますが、あとでコンプレッサー廻りを作るときに一緒に付ける予定です。 |
煙室扉枠はRのついた優美なものです。D51登場当時の貨物機の状況から見ると、かなり洒落たデザインの機関車だったのではないかと思います。 蒸機現役時代はなめくじより標準型のほうが好きだったのですが、このキットを組み立てていて、なめくじのスタイルも好きになってきました。 上部の手すりの取り付けは細かいので、標準型を一通り経験したあとでもやはり難しいです。ごく初期のD51はここに手すりがないので、それを作る場合は穴を埋める必要があります。 開放てこはリン青銅線をてこ受けに通し、ヤットコの先でたぐり寄せながら曲げます。 |
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デフはとても薄いので効果的ですが、取り扱いには注意がいります。裏側に補強リブが来るあたりで、表に型跡が出てしまうことがあるからです(実物でもそうなっているものがありますが)。 |
ハンダ付け作業はこれで半分以上終わっていますが、下廻りの組み合わせ調整や塗装、モーター交換など面倒なものが残っています。
気分的には塗装が終わってようやく半分終わるかどうかという感じです。
後半の時間配分はよく読めないので、使える時間をもとに配分してその範囲内でやります。
1)動力部組み合わせ調整・モーター交換…2時間
2)ランボード下部ディテール…2時間
3)テンダー加工…1時間
4)仕上げ・洗浄・塗装…2時間
5)色差し・小パーツ取り付け…1時間
実際には老化ロスとか探索ロス(蚤取り眼で床に落とした部品を探しまわる)があるので、5割増しぐらいになるでしょう。
動力は、A9500「D51 498 改良品」を使いました。まだ動力部が一体ダイキャストになる前のものなので、削る部分が少なく加工しやすいです。 最初、モーター部分の削りが足りず、モーター軸がウォーム軸とわずかに食い違った状態になっていました。すると走行中に無理が溜まって突然ピタッと止まったりします。削り直してモーターの向きを直しました。 ドローバーは4ミリ切り詰め、キャブ床板のダイキャストも後ろから少しだけ削りました。横から見たときに渡り板に見えるよう、完全には切り取らずに残しています。 |
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上の写真の一歩手前、上廻りのフィッティング中です。 サイドロッドが変ですが、これは不良品でして、反対側のサイドロッドがこちらにも取り付けられていたというものです(中古品で安かった)。それで、下を向いている油壷を削り落としてしまいました。上側に付け足そうと思いましたが面倒でやめました。 |
コンプレッサー、調圧器、エアタンク、ドロダメ等をそのまま取り付けました。 動力逆転機は、マイクロエース先生から取り外して使わせてもらいました。ハンダ作業が終わってから、エポキシで接着しました。 |
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こちらも同様です。テンダーから給水ポンプに伸びる配管は、実物どおりに取り付けると従台車に当たるので、上のほうで適当に曲げています。 あとはデッキ下のステップと排障器を付けて終わりです。なめくじ標準タイプにはスノープローは付属していません。 |
テンダーは498号機のものを使ったので、上部の重油タンクなどを削り落として作り直しました。あとは前後の手すりとATS配管を部分的に取り付けた程度です。台車はC55のものを使いました。 ATS車上子はパーツがなく、今のところ付けていません。シルエットだけなら、真鍮線をΠ形に曲げて差し込む程度で良さそうな気もします。 ドローバーを短縮したため、途中の止め具が床板に当たるので、床板前方を切り取りました。また、ドローバーで少しテンダーが持ち上がって台車が浮いたので、残った前方の床板も少し下からえぐるように削りました。 |
老眼でちゃんとピントが合っていないのに構わず組み立てていたので、最後にルーペで全体を点検して具合の悪いところを直しました。
もう老眼とのつき合いも長くなり、よく見えないまま組み立てることにも慣れ、ストレスも減りました。
金属部分はいさみやのカラープライマーで下塗り(といってもほとんど真っ黒に)しておき、さらにテンダーとシリンダーブロックと一緒にさっと黒で塗りました。つや消し:半光沢=6:4ぐらいにしました。 大成功でもありませんでしたが、大失敗でもなかったのでまあいいです。塗る部品が少ないので、比較的気楽に塗れました。 |
安全弁などを取り付け、好きなナンバーを貼って完成としました。
マイクロエース製品の上廻りを交換して遊ぼうという趣旨の模型なので、縮尺を1/150に合わせたというものではありませんが、似顔絵や雰囲気作りがよくできているキットです。キャブ、煙室枠、ドームと目立つデザインのツボがちゃんと押さえられています。
やえもんデザインのなめくじキットには、このほか長工タイプ(重油タンク装備)、北海道タイプもあります。
実物のなめくじはD50に比べ空転が多いなど細々と嫌われたと聞きますが、実用本位の貨物機でありながら意匠をこらした外観は今見ても斬新な気がします。模型を実際に組み立ててみて、ひとつひとつのパーツの形からそれをじわじわと感じてきました。
キットのキャブは形がよいので、もし分売されたらマイクロエースやリアル・ラインのキャブを交換してみたいです(がらりと印象が変わると信じます)。KATOの498号機も発売された現在、これからマイクロエース製品を改造しようという人がどれぐらいいるかはわかりませんが…。
続いて長工タイプ・北海道タイプも組み立てました。ほぼ素組みですが、塗装ができる日時が決まっていたため、組み立てをそれまでに終える必要があり、製作時間が短く大変でした。
長工タイプ | 長工タイプ ドームの後ろ端が浮き気味になるのですが、そこに重油タンクがあるため削り合わせの手間はかかりませんでした。 |
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北海道タイプ | 北海道タイプ 密閉キャブやテンダーの後退角工作など、北海道タイプのほうが2割増しぐらい時間がかかりました。それでも、あまりうまくいっていません。 |
北海道タイプのほうは種車に中古の標準タイプを使ったため、テンダー台車のみKATOの旧製品の部品を流用しました。それほど大きさ的な違和感はないと思います。ただその動力の調子が悪く(シリコンチューブが裂けている)、いずれ交換が必要です。
スノープローはこのシリーズで初めて付けましたが、高さのバランスをとるのに少々手間がかかりました。
長工タイプ |
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北海道タイプ |
長工タイプはデフが難しく、角度を修正しているうちにステーの屈曲部がちぎれそうになって怖いです。
長工タイプのドームは重油タンクを載せるため、あらかじめ後部をカットしておきます。 そのために、説明書でちゃんと推奨するのこぎり刃が紹介されているのですが、私はそのへんの金物屋で買った適当な金ノコでガリガリ切断。 まあ、切れればいいですよね。 |
これで、やえもんデザインのD51シリーズ 全9タイプをすべて組み立てました。
全体を正確に組むことは最後までできませんでしたが、ディテールの付加や省略の基準は以前より明確になってきました。
「なめくじ」のキットには、一般的な姿のD51を作成するのにちょうどよい種類の線材があらかじめ含まれており、基本的なものなら真鍮線などを買い足さずに組み立てることができます。
種車が必要なのと、すべて小型モーターに替えたので、お金も結構かかってしまいました。キット組み立ては時間のやりくりも必要ですし、ある程度のパワーが要ります。
面白かったですが(後半はちょっと辛かったですが)、ほぼおなか一杯になりました。ありがとうございました。