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D62(3Dプリンター)

3Dプリンターで出力したD62

2021.3.19

縮尺1/140シリーズの充実のため?以前作ったD52改装形から派生させました。


従台車

C62従台車

1/140蒸機の2軸従台車としては、旧C62のパーツが売られていました。これを使って改造工作をされた方もいらっしゃると思います。

手持ちの部品は旧C62の修理用のストックなので、3Dプリンターで似たものを作ることにしました。

従台車データ

適切に可動する2軸従台車を設計する能力が私にあるはずもなく、単にD51の従台車を2軸に置き換えたようなものを考えました。

ドローバーと一体化しているため動きも両者道連れです。いくらなんでも安直すぎるかなと思いましたが、まあちょっとやってみようと考えました。

D51の従台車とD62の従台車

左が旧D51の初期の従台車、右が新しく作った2軸従台車です。

次の事情のため通電式にしておらず、集電線は付けていません。

D51の集電ピン

旧D51(後期)では矢印の位置にダイキャストブロックからピンが出っ張っており、そこにドローバーの集電線を引っ掛けています。

D51の集電ピン

この2本のピンが、2軸従台車の車輪にもろに当たってしまいます。
仕方ないのでニッパーで根元からカットしました。

リード線の追加

テンダーから集電できなくなるので、手っ取り早くリード線をハンダ付けすることにしました。旧D51の初期の方法です。

テンダー側は集電板の中央あたりにハンダ付けしたいところですが、手持ちのリード線の長さが十分ではなかったので、少し前にしました。

モーターへのハンダ付け

モーター部分の反対側です。モーターの接点のなるべく後ろ端にハンダ付けしないと、モーターが本来の位置に付かなくなります。

まず従台車の具合を調べたいので、種車のD51のまま従台車のみ履き替えます。

ポイント通過

安易な従台車付きドローバーが、偶然にも機能しまして、旧ポイントの渡り線も脱線や浮きなしに通過しました。
条件が変わると破綻しそうですが、これで行きます。

このまま「D61」でもよいのではと、ちょっと思いましたけども。

C62の従台車を付けたD51

そういえば昔はC62の従台車をどうやって使ったかなと、25年前に作ったD61を見てみたところ、まるで同じでした。 ダイキャストブロックの集電ピンをカットし、代わりにリード線で集電していました。

自分らしいというかズボラすぎるというか、リード線はモーターではなく、根性でダイキャストブロックに直接ハンダ付けされていました。強く引っ張ったら取れると思いますが…。

外形作図(ようやくD62)

上廻りはほとんどD52と同じですが、気持ちだけ違いを出しました。

従台車

従台車の外観は5年前に作ったD60を流用しました。縮尺を変更し、厚みや車軸中心などを調整しました。

当時の古い3D CADで作っていたデータが、今の3D CADでは正常に読めなくなっており、形状が崩れていて作り直した部分もあります。内部的に矛盾を起こしているようで、修正しようとクリックしただけでアプリが落ちたりしてホントに困りました。
アプリによって、同じデータでも解釈の違いが生じるようなので、あまり無茶なダイレクトモデリングをしているとダメなことがあるようです。だんだん経験的に、こういう作り方をすればマズそうだというのはわかってきましたけども、わからない部分のほうがまだ多いと思います。

キャブ

D62のキャブは、屋根が狭くなるところで雨樋が斜めになっているものが多いようなので、そうしてみました。

D52ではここを垂直に切り上げていましたが、すぐ前に斜めのリブを付けていたので、見た目にはそんなに変わりませんけども。

空気作用管

D52ではボイラー脇に空気作用管を通していましたが、D62は下ろしてランボードに沿わせました。他の形式でも、最初は目立たないところに配管されていたものが、後年場所を移されたものも多いと思います。

ほかは細かい機器類の位置を適当に変更し、多少の個体差を出した程度です。

光造形

3Dプリンターは Phrozen Sonic Mini 4K、UV樹脂はSK ABS-Like Blackです。
前回使い切ったつもりでしたが、最初に一部取り分けてあったのを忘れており、ちょうど1両分出すことができました。
粘りが多少あって割れにくい気がするので、台車を造形するにはよい樹脂かな〜と思っています。

ディテールが太る傾向があったため、露光時間はかなり短くしましたが、ボイラー部は短くしすぎて失敗しました。

水平造形

新しい3Dプリンターを何度か使ってみた結果、造形方法を一部変えました。

それまで斜め造形していたテンダーやシリンダーブロックは水平造形に変えました。造形は問題なくでき、側面の縞模様もそれほど目立ちませんでした。

一体造形のボイラー部は、よい方法がまだ思いつかず、今までそれなりに熟成した斜め造形としました。ただし、FEPフィルムから剥離する際のブレ緩和を狙って付けていた、デフやキャブの脇に立てていた板は必要なくなりました。

テンダー台車

台車は水平造形できれいにできます。小さいものなので側面にブレの線が入ってもほとんどわかりません。

もちろん積層方式という原理上、軸箱の表面など斜めになっている平面には、階段状の横線が入ります。

今回、台車は塗装せず、樹脂の黒色のまま使ってみました。

手すり失敗

ぼってりしがちな樹脂なので、少しでもそれを軽減したいと露光時間を短くしたところ、キャブの後部手すりがめちゃくちゃに。
全体に縞々も多く、露光が相当足りないようでした。

後部手すりはカットしてプラ板で作り直します。表面は生々しく撮影していますが、これは何とかなる範囲なので出し直しはしませんでした。UV樹脂も洗浄用アルコールももったいないですし。

謎の線

ちょっと気になったところの超拡大です。

平面部に横縞だけではなく、縦線が入ることがよくあります。それ自体は珍しくありません。この写真では特に矢印の縦線が目立ちます。
これは液晶パネルにゴミが付いていたり、その箇所のFEPフィルムに傷がついていたり、部分的に沈殿物があったりと、色々な理由で起きると思います。

この縦線を下からずっと見ていきますと、丸で囲んだあたりで急にズレているんですよね。その上はまたまっすぐ伸びています。
しかし、並行している他の縦線が皆そこでズレているわけではありません。また窓枠などの造形自体もズレていません。この線は何が作り出していたんでしょうね。

塗装後

その答えは出していませんが(笑)、これは塗装後です。キャブ側面など比較的広い平面部のみ軽く縞々を落としました。つや消し塗装すれば、超拡大しても大してわからないレベルになります。

スーパーストーン

目立つ積層痕を消したい場合、細いドライバーの先に紙ヤスリを貼り付けて削ったりしましたが(普通は何もしませんが)、今回は細い砥石を使いました。
砥石が入る箇所なら比較的楽に凸モールドを避けて削れますし、紙ヤスリと違って頻繁な貼り直しも要らないので手早くできます。

スーパーストーン

こんな感じに、カリカリこすっていきます。あまり強くやると傷が付きます。でも、もともと傷だらけみたいなものですし(笑)。

ただ私が持っている一番細かい#1200を使っても、ペーパーでいえば800番程度の仕上がりのような気がします。多少でもツヤを出すなら、最後は細かいペーパーで仕上げたようがよいと思います。

グラスファイバーやすり

グラスファイバーのペン形ヤスリも売られていますが、意外と細かい隅までは届かないです。

粉末状のガラスの破片がたくさん出ますので、触らぬよう・吸い込まぬよう・目に入れないよう・散らさないように、特に注意が要ります。

組み立て終了

露光不足などで派手に歪んでいます。壊れたらどうせ出し直しということでこのままです。自分の3Dプリント品は、仕上がりに対する期待感が異様に低いです(笑)。

ナンバープレートは1/150サイズのやえもんデザイン製を貼りました。D62はナンバープレートが小さめに見える機関車なので(私の印象ですが)、行けるだろうと思いました。

D62

D62

D62

今回のプリンター(Phrozen Sonic Mini 4K)と、以前のプリンター(Anycubic Photon)との造形比較です。

Sonic Mini 4K D62

Sonic Mini 4K(D62)
今回のD62です。この箇所は表面仕上げを一切していません。積層ピッチは0.035mmにしました。

Photon D52

Photon(D52)
こちらは2年前のD52です。やはり表面仕上げを一切していません。積層ピッチは今より細かい0.025mmでした。
これだけ拡大するとボイラー部のブレが意外と目立ち、思ったより差が大きい感じです。遠目にはそんなに変わらないんですけども(でも違いはわかります)。

Sonic Mini 4K D62
Sonic Mini 4K(D62) 今回のD62のシリンダーです。垂直造形しましたが表面ディテールは全部出て、縞模様も出ませんでした。
Sonic Mini 4K D62
Photon(D52) 2年前のD52のシリンダーです。形が入り組んでいるため、斜めの縞が強く出やすい箇所でした。

なお2年前のD52も、使ったUV樹脂は高精細用の高いものだったため、ランボード下の繰り出し管やドレインコックの間はきれいに抜けています。
今回使った樹脂は粘度も高くキレがあまり良くないので、狭いところは埋まってしまいます。それでもリベットやスジボリがきれいに出るのは不思議。

というわけで、使うプリンターによって違いは多少出る、という結果でした。

D52とD62

これで1970〜80年代に予告され、立ち消えになっていた1/140シリーズのD52・D62・C59を、へんてこながら自力補完しました。
KATOにとって、1980年代ともなれば、D52やD62を出すのは技術的に簡単だったように思えますが、お蔵入りになったのは当時でも売れないと判断されたのでしょうか。 まあD51もない時期にD52・D62を予告したのは、C62ができたから、ボイラーが太いD52・D62も同じように作っちゃえ〜、みたいなノリだったのかもしれませんが。

1982年時点の世界(脳内)

多くの予定品があった、1982年のカトーNゲージカタログの機関車を、偽物3つを混ぜて並べてみました。もしその瞬間に全部あったらこんな感じでした。
(写真は拡大しないです)

C50
201 C50
C11
202 C11
C62
203 C62
D52ニセモノ
204 D52(ニセモノ)
D62ニセモノ
205 D62(ニセモノ)
D51
206 D51
C57
207 C57
C59ニセモノ
208 C59(ニセモノ)
D51なめくじ
209 D51なめくじ
C58
210 C58

ニセモノはともかく、1/140シリーズもけっこう揃っていましたね。その後それぞれのバリエーションも増え、新規にC55も追加されました。


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