Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>にせKSKタイプCタンク(3Dプリンター)
2018.7.1
またトーマモデルワークスの「日車Cタンク用 新動力ユニットキット」を使用して、上廻りを3Dプリンターで出力しました。
トミーから昔発売されていた「K.S.KタイプCタンク」の上廻りの形状をもとに、小さめのサイズで作ったものです。
「K.S.KタイプCタンク」(以下KSK〜)は、手ごろな大きさと魅力的なデザインで、古いながら人気がある模型です。
写真はこの動力部分(上)と、トーマモデルワークスの日車Cタンク用新動力(下)を突き合わせたところです。
両者の軸距離はそれほど違いません。
トミーのKSKタイプCタンクの上廻りに、トーマモデルワークスの動力を合わせてみたところです。モーター部がキャブ内にすっぽり入ります。
きちんと取り付けようとすれば色々と工夫がいりますが、サイズ的にはこんな合体も不可能ではなさそうです。というのが余談です。
トーマモデルワークスの動力に大きさや高さを合わせて、KSKタイプCタンク風の上廻りを新たに作れば、結構似合ってくれるような気がしました。
また当時のトミーのイメージでまとめられたあの姿は魅力的です。
製品のデザインの背景についてちょっと考えました。
この写真は、1975〜1976年のトミーナインスケールのカタログから引用させていただきました。
KSKタイプCタンクが発売される直前のもので、このころすでに設計〜製造が行われていたものと思います。
カタログを開いてすぐ、1ページ目の下に、Cタンクの引く貨物列車のイラストがあります。
空気制動機を装備し、ところどころは製品のKSKタイプCタンクに似たところもあります。全体のフォルムは違いますけど、「こういったもの」が製品化イメージのひとつになったのかもしれません。
このイラストを再現してみるのも、面白かったかもしれません。
どのようなデザインがいいかとあれこれ考えましたが、だんだん思考が停止していきました。
結局は製品のスタイルをなるべく引き継ぎ、「トミーのKSKタイプCタンクの実物(架空)」を模型にすることにしました。
KSKタイプCタンクの上廻りです。キャブ下ステップが欠損していましてすみません。
とてもいい姿をしていますよね。下廻りに乗っかっていると、全体として独特のフォルムをしていますが、上廻りだけ見ると意外に普通です。
プラスチックのモールド表現にはごついところもありますが、逆に非常に繊細な部分もあります。前後のカプラー解放テコは別パーツで表現されています。
縮小に加え、あちこちのバランスを変更していく覚悟だったのですが、全然いじるところがなく完璧なプロポーションに見えてきました。
外形全体をおおまかにモデリングしたところで縮尺を変更し、その後ディテールを作っていきました。
各部の形状は正確に測ったわけでもなく、目分量で適当に作った部分が多数あります。
3Dプリンターにも造形できる最小の厚みや細さがあるため、それに合わせたアレンジも一部行いました。
ライトやコンプレッサーなどは、自分が今まで作った他の蒸機のデータから流用したので、違う形になっています。
元の模型でドームの間に付いている機器は、逆止弁の一部を省略したものか、発電機でしょうか。
ちょっと悩みましたけども、第一印象が発電機だったのでいったん発電機にしました。違っていたらカットして、別な部品も付けられますので。
キャブの前面にはひさしやモールド表現がなく、平らなところにアーチ状の窓だけが開いています。
金型の構造の関係で、この面にはディテールをつけにくいのでしょう。
キャブの形もKSKタイプCタンクの模型の特徴なので、基本はこのまま活かしました。
ただ、全体のディテール粒度を揃えるうえで、窓の縁取りぐらいは付けることにしました。
普通は縁の部分を少し浮き出させるところですが、使用する3Dプリンターは、壁の途中に出っ張りがあると、その下部の面すべてがサポート材で荒れてしまいます。
そのため縁を浮き出させるのではなく、縁の周りに0.1mmの溝を掘って表現しました。荒れるのは溝の中だけです。
補足:赤色の部分が、窓のフチが出っ張った場合にサポート材で荒れる部分です。
KSKタイプCタンクは台枠前方のカプラーポケット部が大きく、端梁よりも前方に出ていることで独特のスタイルを作っています。
これも大事な特徴かもしれませんが、これを何として表現すればよいかわからず、無理に作らないことにしました。
全高も下げますので、ランボードから上が同じ形であっても、どうしても多少異なる雰囲気にはなってしまうと思います。でもまあ、それがどうなるかも楽しみです。
等々、色々考えまして、このようなスタイルとしました。
最初は全体をもっと小さくしたのですが、終盤になって若干拡大しました。3Dデータはこういう調整がきくのがよいです。
また左右2分割にし、キャブ屋根・炭庫後板・煙室扉は別体にしました。
全体のデータ構成が決まるまでは1週間程度でしたが、左右分割の検討がなかなか難しく、そこにも1週間かかりました。そればっかりやっていたわけではありませんけど…。
もう見慣れた部品構成です。問題なく出力されました。
動力部を合わせてみると、モーターとキャブ妻板の間に余裕がほとんどありません。途中で縮尺調整をしたあとの確認が甘かったのかもしれません。
これではモーターが押されてギヤの噛み合わせが変わったり、動力部が後方にずれて、上下合体ネジと左右金属部がショートしたりする恐れがあります。念のため、手作業で妻板裏側を少し削っておきました。
おそるおそる左右をかみ合わせています。
左右の車体は一直線で分割されているわけではなく、中央付近の弱いパーツやディテールを避けたり、安定的に組み合わせるための出っ張りを設けたりして、日付変更線のように入り組んでいる部分があります。クリアランスの見込みが間違っている場合、無理に押し込むと、突起部のアクリルが積層に沿って割れてしまう恐れがあるので、慎重に確かめました。
特に問題はなく、きちんと組み合わせることができました。もう安心です。
残りのパーツを合わせて車体を完成させました。
つかみ棒は銀河モデルのパーツ、前後の解放テコはKATOのD51用を使用しました。オリジナルのKSKタイプCタンクは、古い製品であったにも関わらず別パーツだったので、この模型が重要視していた部分と考えました。
下廻りをネジ留めする穴には、3Dモデリングの段階でネジを切っておいたので、タップ加工の必要がありません。
表面はサポート材を落とした程度ですが、造形時の最上面にできる独特の模様は軽くヤスリ落としました。主に車体側面となる面です。
試運転です。どこかが引っかかって破損するのではと、こわごわ出発しましたが、大丈夫でした。
あとは塗装すればOKです。
「KSKタイプCタンク」タイプCタンクです(ややこしいですが)。
アクセントに製品同様の白線を入れ、ナンバープレートはワールド工芸の残りを使いました。
安全弁は元の模型に合わせて黒のままとしました。金色にするとイメージが変わりすぎるかと思いましたが、やってみるとそうでもないかもしれません。
左がオリジナル、右が今回作ったものです。
トミー製KSKタイプCタンクを詳しく見ていく中で、そのデザインの良さを再認識しました。
好みで多少変えてはいますが、なるべく元の雰囲気に近づけたいと思いました。
縮尺を揃えればオリジナルのボディーをほとんど複製できてしまいます(単純に複製するなら、型取りするほうが手っ取り早いでしょうが)。 このデータは配布が許されない種類のものでしょう。
左がオリジナルのKSKタイプCタンク、右が今回作ったものです。
左は素組みの日車Cタンクです。
これで今回の日車Cタンク用動力は使い切りました。すべて有効に活用できました。ありがとうございました。
もっと上手にできればよかったのですが。