Nゲージ蒸気機関車>2007年のメモ>2007.7.7(ワールド工芸 C57一次型九州タイプ)
ワールド工芸 C57一次型九州タイプ
2007.7.7
ワールド工芸のC57は、1999年〜2000年にかけて、一次〜四次型まで各種発売されていましたが、今回の7年ぶりの製品は新規設計のリニューアル品となっています。
モーターが小型のものに変わったため、全体のバランスが再調整され、一回り小さくなっています。今から見ればシンプルだったディテール面も大幅に強化されました。
気の付いたこと
- 全般
全体の構造は前回のものと同じです。ボイラーは火室周辺で前後2分割、その下側に2枚重ねのランボードが付くという構造です。
ランボードをまっすぐにして、ボイラー・キャブと平行に組み立てるのが最も難しいところでした。
これからもしC57のラインナップが続くのなら、別売でよいので、全体を組み立てるための専用治具などがあればありがたいと思います。「そんなのは自分で工夫するもんだ」 と言われてしまいますね。なお、今回は前デッキの傾斜部の角度を決めるための治具は付属しており、大変便利でした。
- キャブ
- キャブの構造は大きく変わりました。前方にRがついているため、今までは側板につながった妻板を前方に曲げて中央で接合していましたが、今回は妻板と側板が分離しています。継ぎ目を接合してから、ヤスリがけなどで自分でRをつけるようになっています。
天窓は開・閉どちらも選べるようになりました。床板は「実車同様に段差もつけてみました」と注意書きでアピールされています。前回品のキャブ廻りが単純だったこともあり、両者を比べると表現には相当の差があります。
- 説明書の誤り?
- キャブ後部窓の下にある手すりは、説明書ではK-7となっていますが、J-9の誤りではないかと想像します。大きさが合いませんでした。
- 前デッキ
- 前デッキ傾斜部のステップがついに他社同様に取り付けられました(ステップはロスト)。実は一昨年のC58最終製品でも、デッキ裏を見るとステップ取り付けのためのためらい傷?がありました。
- 前ステップ
- デッキ下にある前ステップは、今までは小さい中段をハンダ付けしてから、位置決めしにくいデッキ裏にハンダ付けしていたので、何となく面倒な部品でした。今回は1枚の板を折り曲げるだけで中段ができ、位置決めもしやすい形状になるなどグッドアイデアです。こうした配慮が今回のキットではあちこちから感じられ、組立が楽しくなります。
- 部品構成
- 従来のキットと比べ、板を2枚重ねにして表現するところが増えたように思います。裏板にハンダ穴がなく、断面ハンダ前提になっている部品も増えています(特に問題はありません)。また、今までのように2つ折にして張り合わせるのではなく、完全に分離した2枚を張り合わせる部品もあります。
- 配管類
- 配管類は大半がステンレスのエッチング抜きになりました。真鍮線を曲げて作る必要があるのは、いずれも非公式側の給水ポンプ給水管と、ランボードに沿って前端まで伸びる暖房管の2本だけです。面倒くさがりな私は暖房管のないタイプにしたので1本ですみました。もちろん、お好きな方はすべて線材で作ってみるのもご自由だと思います。
- デフ
- デフは2つ折にして裏側のディテールを表現する方式ですが、この裏板に小さい位置決め用の突起があり、ランボード上の穴に確実に止められます。いつもデフの取り付けを苦手にしているのですが、今回のキットでは簡単でした。
- 先台車
- 先台車は今までのように後端をネジでぶらぶらに止める方法ではなく、中央付近からバネをはさんでシリンダー真下にネジ止めする方法に変わりました。
- モーションプレート台座
- 唯一、M1.0ネジを使うモーションプレート台座(F-9)のネジ穴には、あらかじめタップが切られていました。
- ピストン棒
- ランナーについているピストン棒(+クロスヘッド+メインロッド)を切り離すとき、先端にある意味深なキズの位置で切り取りたくなりますが、それでは短すぎてシリンダーの穴から抜け落ちてしまいます。このキズの位置で切れなどとは一言も説明書には書かれていませんので、惑わされず、とにかく長めに切ってください。
- エキセントリックロッド
- 私の組立では、エキセントリックロッドを一番長い位置で切断しても長さがギリギリで、抜け落ちてしまいました。加減リンクを後ろ側に曲げて何とか通しました。
- リターンクランク
これは部品不良だと思うのですが、エキセントリックロッドとリターンクランクのカシメが悪く、うまく動かなくなっていました。リターンクランク自体が歪んでいたため修正がきかず、自分で作り直しました。動きが悪くなる原因にはこういうケースもあるようです。
本来、青い矢印のように水平に往復するはずのエキセントリックロッドが、カシメの曲がりにより振り回されるような動きをするため、正しい位置で動かないというものです。
- 後部ギヤ
- テンダーの後部台車のギヤ軸と、カプラーポケット周辺の床板が非常に近接しているので、場合によってはギヤが引っかかることがありました。床板を少し削って修正しました。
- ナンバープレート
- 文字の表現がしっかりし、前回品よりかなり良くなりました。よく見ると四隅にちょっとした留めネジ表現があります(トレインショップのE10などにも見られます)。
- 曲線半径
- 大型機なのでR320以上を推奨とあります。ファイントラックならR354以上、ユニトラックならR348以上となってしまいますが、私の作例ではR280でも特に問題なく走りました(特別な加工をしたわけではありません)。R249だとさすがに抵抗があって厳しいですが、通過はしました。一般的なR315やR317なら問題なく組み立てられると思います。
- 必需品
- 今回の説明書には、「年配者に限らずルーペは必需品です」とありました。しかし、今回極端に細かくなったわけではないので、今までルーペの必要なかった人には、特に必要ないと思います。私はあまり細かい工作をしないので、今のところ使っていません。
- 天賞堂と
- 線材により各種の配管表現を施している点や、しっかりしたバルブギヤーでエンジンドライブを実現している点に関しては、天賞堂に一日の長がありますが、今回のワールド工芸製品はディテール面では十分渡り合えるレベルになっていると思います。前面など印象把握は、もともとワールド工芸は優れていました。ただ、相変わらずバルブギヤー廻りがカチャカチャと頼りない感じがしますし、特に合併テコは脱落しやすいので、完成品を買う方も今までどおり取り扱いに注意が必要です。
- 前回品と
- 各部の表現はとても進歩していますし、全体の大きさもさらにスケールに近づいていますが、もともと印象把握がうまかったため、通常の使用において旧製品が特別見劣りすることはないと思います。前回品のほうが幅が広かったぶん、下廻りとのバランスがよいようにも見えます。ただ、長く使っているうちに印象は変わってくるかもしれません。現時点での感想です。
完成
21号機のプレートをつけましたが、実物を調べていないので色々違うと思います。