1960年代に発売されていたマスダヤの列車玩具です。煙出し汽車セットではなく、煙出し「客車」セットです。
これのカプラーが模型的にちょっと興味を引きます。
本題が一瞬で終わるので(見る人が見れば「なあんだ、これかよ」というようなもの)、前置きで引っ張ります:
何しろ昔のことなので覚えていませんが、商品名が「煙出し客車セット」ということは、姉妹品で「煙出し貨車セット」もあったのかな…と想像。
これが機関車と炭水車です。当時の子供向け玩具ですが、かなりしっかり「C62」の形が作られています。単純なつくりの玩具が多かった中で、リアルだったですよ。
ボイラーの中に単一電池を2本入れるので、結構大きいです。
手前のNゲージがとても小さく見えます。
軌間は大体23〜24mmです。測る場所によってちょっと違います。
前面もC62っぽいです。デフは上部の2本のステーも含め、妙にきちんと作られています。
スイッチの付いた端梁の辺りは何度か壊れては修理しており、この写真を撮ったあとも割れてしまいました。でもちゃんと動きます。
煙を出して走る汽車のオモチャは昔から色々ありましたよね。
機関車の左下にある半透明のものは、注油用のスポイトです。
モーターはFA-130的なものが、キャブ下の台枠後部に組み込まれています。
買ってすぐ走らせても煙は出ますが、出が悪くなったときは、煙突の後ろの注油口にスポイトでミシン油を少量たらします。
ミシンは普及していたので(まだペダル式が多かった)、ミシン油も一般家庭に普通にありました。
当時の動くオモチャによくあったように、「カンカンカン…!(カチカチカチ!)」というような連続した打撃音をたてながら、煙を薄く引いて走ります。走らせているうちに勢いがついてきて、脱線することがあります。
炭水車はちゃんとボギー台車になっていて、形もしっかり作られています。
表現上のアクセントを加えたのか、古い蒸機のようにリベットが並んでいます。
客車もボギー台車で、炭水車もそうですがカプラーは台車マウントです。
増結はないので後部にはカプラーがありません。
車体は美しい塗装のブリキ製です。昔から、こういうオモチャはプレスと印刷とのズレも少なく、塗装面が傷んでいることもなく、どうやって作っているのか不思議です。
このように、当時の入門用の鉄道模型セットよりも模型らしい部分すらあった、力の入った玩具です。
マスダヤ素敵です。
箱に「ポイント付」とあるように、左右両方のポイントが付属しています。
レバーの根元の円筒に、らせん状の溝が切られており、それに従ってトングレールが左右に動くしかけです。
ただこういうレール玩具の弱点といいますか、レールのジョイント部分はそれほどしっかりしたものではなく、子供が丁寧に扱えずに壊す例も多かったのではないかと思います。
付属の三灯式信号機には、ちゃんとクリアーパーツのレンズがはめ込まれています。
ここまで前置き(笑)。
ここから本論?です。すぐ終わります。
連結した様子です。
このカプラー、私はこの玩具でしか見たことがありませんが、模型用としても存在しているのでしょうか。
私はほとんど国内のNゲージ中心なので、それ以外の模型用カプラーについてそれほど詳しくありません。
双方のフックを相手側のループに引っ掛けるもので、ベーカー型に似ています。
カプラーの向きを揃えて突き当てるだけで、自動的に連結できます。
解放レバーが下ではなく上に出ているのがベーカー型との大きな違いです。
解放ランプで押し上げて解放することはできません。
指でレバーを車両側に倒すと、フックが上がって解放できます。しかし片側だけ上げても切り離しできませんから、これは子供用としてはかなり難しいです。たいてい、そのつど大人が呼び出されるはめになります。ガチャガチャ引っ張ったり、振り回したりして壊す例も多かったかもしれません。
こちらはベーカー型カプラー(の派生)。シンプルな構造ですが、自動連結・解放もできて好きなカプラーです。
これもメーカーや製品により、類似の類似…みたいになって、オリジナルとは結構違った形になっていたりします。
というわけで、約50年前に、どこか模型的な玩具が模型的なカプラーを付けていた…というだけの記事でございます。