Nゲージ蒸気機関車2015年のメモ>2015.6.13

ワールド工芸 C62 32号機(II)

昨年末(2014年末)に発売された、C62 32号機の二代目のキットです。初代キットは2009年に発売されています。
発売から半年経ってようやく着手できました。

先日はこれの塗装済み完成品も発売されました。メーカーでは完売になっていますが、キットはこの記事の作成時点でまだ在庫があるようです。


C62 32号機

シリンダーブロックの側面が垂直に近い32号機です。
ガタガタ震える手を何とか止めながら(しかし止まらない)、素組みしました。
新旧のキットを並べてみました。

C62 32号機(II)

C62 32号機(II) 
今回リニューアルされたキットです。
(拡大写真)

C62 32号機(旧)

C62 32号機(旧) 
2009年発売の旧キットです。
(拡大写真)

キットの作りは旧キットでもほとんど完成されており、全体的な印象には違いがありません(組み立てがアレなのは置いておいて)。
旧キットはいさみやのカラープライマー塗装のみで上塗り省略、新キットはアクリジョン(水性)の黒塗装のみで下塗り省略です。カラープライマーが非常にきめ細かかったことが写真からもわかります。

リニューアル点ピックアップ

メーカーの商品ページには、次の4箇所が図示されています。

・煙室扉は新設計(ロストワックス製)
・ドーム形状見直し
・空気作用管改良
・加減リンク、エキセントリックロッド改良

●煙室扉

今までは開閉ヒンジや向かって左側の取っ手も含めて真鍮プレスでしたが、今回はロストワックスになっています。
先にいくつかのキットで行われている改良です。

旧キット前面
旧キット
煙室扉は真鍮プレスで、外周と中心に計7箇所の穴を開け、ハンドルや手すり、ライトを取り付ける方式でした。
新キット前面
新キット
ディテールがシャープになり、副灯は一体化されました。上部の手すりはモールド済みのステーの溝に真鍮線をはめ込み、挟んで留めるものです。組み立ても楽になりました。

●ドーム形状

ワールド工芸のC62のドームは、初期シリーズや汽車会社を除き、後端がゆるやかで特徴的な形です。
煙室扉とともに、今回どのようになったのか興味があってこのキットを買いました。

旧キットドーム
旧キット
新キットドーム
新キット

どこか違いがありますかねぇ。新旧まったく同じに見えます。
ちょっと違う角度から写してみます。

旧キットのドーム
旧キット
新キットのドーム
新キット

同じのように見えます。※

メーカーサイトの商品説明を読み返すと、「今回はドーム形状をはじめとする見直しを行いました」とはありますが、別に「変更した」とは書かれていないのでした。
いや、そうは納得はできないよ(笑)。

※しかし、何か微妙に変わっているような気がするのも事実でして。
当初、塗装光沢の違いや、鋳造時の収縮・変形による違いかなとも思ったのですが(私はこのへんまるで素人です)、実際に型をいじって前側や側面の角の丸み具合が調整され、立ち上がりが切り立った印象に変わっているようにも見えます。
同じ光沢で塗っていれば、はっきり違いがわかるのかもしれません。
このへんの差異にこだわって、改良を進められたのだとしたら、先の見解は誠に失礼な話ですよね。しっかり改良したのにと、がっかりされるかもしれません。

◆その後
メーカーサイトの商品ページにて、“「ドーム形状の見直しを行う」とアナウンスしてまいりましたが、諸事情により今回のリニューアルでは変更無しとなりました。”とのことです。
結局原形は変更なしで、見え方の差であったようです。自分では断定できなかったので、やっとすっきりしました。

●空気作用管改良

ほとんど同じですが、一部に微妙な差異はあります。上のドームの写真をご覧ください。

新旧キットとも、空気作用管は塗装前に車体に固定し、一緒に黒塗装しました。そのあと、旧キットでは溝に黒が残るように表面を剥がしました。
新キットでは実験的に黒塗装を剥がさず、上から水性塗料の金+クリアーオレンジ+黒を混ぜて筆塗りしました。ある程度薄めるとメタリック色の粒子は溝に入らず、表面の凸部に浮くように集まります。
生地のままに比べて目立たなくすることはできましたが、伸びが悪くて塗りにくく、クリアーオレンジはほとんど生きませんでした。次に機会があれば金+銅+黒で試します。

●加減リンク、エキセントリックロッド改良

ここ数年の製品で順次改良されてきたものです。C62シリーズにも施されていますが、前回の32号機ではまだでした。

旧キットのバルブギヤー
旧キット
固定された加減リンクの下端の穴を、エキセントリックロッドが往復する構造でした。
新キットのバルブギヤー
新キット
加減リンクが動く一般的な構造になっています。逆転軸のネジは内側から留めるようになり、ネジの頭が表から見えません。ここはあらかじめタップされています。

今回、不幸にも一方の加減リンクの中心ピンがほとんどなく(鋳造時に材料が流れなかったのかも)、削り取って穴を開け、0.5mm真鍮線を埋めて修理しました。
上の写真で加減リンクの高さが少しズレているのは、穴開けの位置がずれてしまったためです。

私が感じた変更点

旧C62 32号機のキットに対する違いとして、他に気付いた点を細々書いてみます。すでに他のキットで実現済みの点を含みます。

ボイラーの前後をまっすぐに固定しやすい

製品のボイラーは火室部分が2枚重ねになっていますが、旧キットは重ね部分が短かったため、固定の際にねじれや曲がりがよく起きました。
今回は重ね部分が十分長く、下側になるボイラーを構造のすべての基準にできるため、ねじれ・曲がりが起きにくくなっています。

キャブ屋根のクレーンフックが付けやすい

キャブ屋根の両肩にあるフックは表からベタ付けするため位置決めしにくいのですが、今回は(ワールド工芸製品全体としては少し前から)固定位置にエッチングのフチがあるため、以前よりは付けやすくなっています。
ただ、比較的固定が難しい部品であるのは変わりありません。位置決めの縁取りが表に見えるので好みが合わない方もいらっしゃるかもしれません。私は、できてしまえば驚くほど気になりませんでした。

デフが付けやすい

デフの前方下端にもデッキへの取り付けピンがあるため、穴に差し込めば大体の位置が決まり、取り付けが楽です。
デッキの網目板の取り付けがズレていたりすればダメですが…。

動力が新型である

いわゆる「高精度ギヤ」の新動力になっており、走りもスムーズです。
なおC62の場合は固定ネジの位置の関係で、台車が留められている薄い板(H1-4、図の赤線)の両端が持ち上がりやすく、ウエイトを載せたり上から力がかかったりすると、車体が傾きやすいことがあります。あんまり上から公式側のほうを押さないほうがよいです。
(下図は正確な形状ではありません)
フレームが曲がる場合

細かい点

現在はライトのレンズも付属しています。
牽引力増強装置のサブウェイトが、旧キットに比べてずいぶん小さくなっています。機関車を手に持ったときも軽くなったことをはっきり感じます。この変更の理由はわかりません。 重すぎて問題があったのかもしれませんし、単なる部品共通化かもしれません。

そのほか

説明書では主台枠の後ろを90度上に曲げてふさいでいるように見えますが、それでは牽引力増強装置のテコがつっかえて下まで降りず、テンダーのドローバーに載りませんでした(牽引力増強効果がなくなる)。
あとで撤去しましたが、実は下に曲げるのが正解だったのかなと今になって思います。

ワールド工芸 C62 32号機(II)取扱説明書より

全体的には形もまとめやすく、組み立てやすいキットだったと思います。

C62 32号機


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