Nゲージ蒸気機関車2019年のメモ>2019.9.11

破損車体を3Dプリンターで修復

車体の一部が破損・欠損した古いの車両がいくつかあったので、まとめて修理しました。
せっかく3Dプリンターがあるので、失われた部分を再生してみました。


壊れたもの

昔のバックマンやトミーナインスケールの車両です。3ついっぺんにやりました。

K.S.KタイプCタンク

トミーのK.S.KタイプCタンクです。
乗降口の下にあるハシゴが根元から折れています。

ドックサイダー

これはバックマンの最初期製品のドックサイダー(1970年)で、バックマンから単品販売されていたものです。
後部左側のステップが折れてしまっています。ドックサイダーはこのステップが破損しやすく、中古品でも失われているものをよく見ます。

0-4-0テンダー

もうひとつ。
またこれかよと(笑)。

以前に、屋根の塗料が剥がれて修理したものをご紹介しましたが、これはまた別の個体で、人から人へ渡ってここに来ました。 1969年にバックマンが発売した、ドックサイダーのテンダー版です。

グレーのフルワーキングのバルブギヤーですが、弁心棒と結びリンクが欠損しています。これまた、中古出土品などで時々欠損している部品です。痛々しいです。

この模型は、最初のオーナー様の手によると思しき改造がなされており、何と従輪が追加されています。この従輪は針金を輪にした軸受け?で床板にくくりつけられています。

0-4-0テンダーの謎の箇所

ついでに他の謎の箇所を見ていきますと。
屋根の塗装が剥がれているのはこの模型にありがちですが、どうも色調がオリジナルと違いまして、一度塗り直されているようです。それがまた剥がれてしまったようです。

ほか、テンダー台車のセンターピンがプラから金属ネジに代わっていたり、シャフトに歯車が付いていたり、一部の車輪が別の車両と交換されていたりと、複雑な経歴を伺わせます。
きっとオーナー様は、当時の数少ない市販車両に手を入れ、部品を交換して融通したりして楽しまれていたのでしょうね。いや本当に、楽しかったことだろうと思います。

パーツの製作

パーツのモデリング

プラ製のロッド類は、手作りするのはなかなか難しいものですが、3Dプリンターならきっと簡単にできます。→と信じました。
Cタンクのハシゴやドックサイダーのステップも、実際の模型の形をもとにモデリングしました。問題は接合方法で、折れた断面同士を接着するのは弱いので(芯棒を入れると丈夫になりますが)、接合用ののりしろも付け加えました。

パーツの3Dプリント

1時間半ほどで3Dプリントができあがりました。UV樹脂は miraclp 用の xULTRAT で、積層ピッチ0.05mm・露光時間13秒としました。
これより短いと、サポートからの脱離が起きやすくなります(今回の機材・材料・環境にて)。

膨張の修正

水平造形のため膨張が大きいだろうと、周囲に約0.15mmずつの膨張を想定していましたが、部分によっては0.25mmほども太くなっているところがあり、また逆に痩せているところもありました。

図の結びリンクは、ロッド部分は膨張していた反面、前後のロッドにパチンとはまるピンの直径は逆に0.1mm程度細く、ゆるくてきちんと固定されませんでした。

…などなど、造形された部品を実際に合わせてみて、寸法を変更して再出力しました。

取り付け・完成

ハシゴとステップの取り付け

Cタンクとドックサイダーに、再生した部品を接着してみたところです。
これは修正後の造形品なので、比較的うまく合っています。

ハシゴとステップの取り付けを裏側から見たところ

接着の様子を裏側から見たところです。

Cタンクのハシゴは、本来はボディーと一体ですが、接着面積をかせぐために動力ユニット側に接着しました。表から見てもわかりません。

なお、こういった光造形式の3Dプリンターの造形物は結構丈夫です。アクリル系の樹脂なので硬度もありますし(樹脂によって硬さ・柔軟性は色々)、インクジェット式のHD3500Maxと違い、細い部分が積層に沿って簡単に取れてしまうこともありません。もちろん細い部分は折れやすいのですが、市販のNゲージ車両と同程度に注意すれば平気です。

ハシゴを修復したCタンク

つや消し黒で塗装して完了しました。

K.S.KタイプCタンクの再生したハシゴです。もとのステップに似せて抜き勾配のような形状も付けました(3Dプリントにあたっては本来必要ありません)。元の模型はハシゴの2本の縦棒の太さが微妙に違うので、それも再現しました。

ステップを修復したドックサイダー

こちらは修復したドックサイダーのステップです。
これもあちこちがバラバラな膨張の仕方をしていたので、各部ごとに数値を変えて造形しなおしました。

ステップを修復したドックサイダー

一見、修復品だとわからない程度になり、思ったよりうまくいきました。

プラ板でも作ることはできる部品ですが、3Dプリンターの場合、たとえまた破損しても同じものを再出力できますし、あらかじめスペアを作っておくことも簡単です。

バルブギヤを修復したスロープテンダー

これは(笑)。
若干太さや樹脂の色が違うので、どこを修復したかすぐわかりますが、はめ込みは合って機能は回復されました。

ほかは屋根の再塗装などをすればいいと思いますが、従輪どうしましょう…。取り去るのも何かもったいない気がしますし、少しこのままで。

0-4-0スロープテンダー原型

本来は、こういうスタイルの模型でした。(拡大写真)
私が持っているうち、オリジナルの塗装が最も剥がれていない個体です(バックマン発売の単品)。
最近になって細かいヒビが確認できるようになりました。拡大写真で屋根をよく見ると傷みがわかります。この姿を保っていられるのも、長くないかもしれません。何か、寂しいですね。


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