アリイ(現マイクロエース)初の日本型Nゲージ蒸機だったD51 498には改良品を含めて3タイプのバージョンがあり、動力ユニットも少し違っています。機能的にはそれほど大変化はありませんが、改造で使うときには加工性が少し変わります。
外見については他で書いていますので、ボイラーを外して動力ユニットのみ並べてみました。
1996年の初回品です。動力部全長は当時の旧KATO製品とそれほど変わらないものの、ライト点灯式で合併テコも付いていたのが目をひきました。走りが良くて驚きましたね。
2003年に一部変更のうえ発売されたものです(私は再生産の一種だと捉えていました)。
この頃は動輪が黒色・丸穴抜きになっており、モーターや電球の外観も微妙に変わっていますが、外から見た限りでは同じ構造です。
それにしてもこのウェイトの腐食具合が痛々しい…。全部同じ場所に保管していたのに、初回品よりもくたびれたお姿に。
2008年に発売されたもので、動力改良品とされていますが塗装やテンダー上面なども少し変わっています。
動力ユニットの構造は大幅に合理化されたように見え、別体だったウェイトがなくなりダイキャストブロックが拡大されました。この年に製造会社が変更されたことが関係しているのかは不明です。
ダイキャストブロックを削って車高を下げたりする場合は、この動力ユニットは少し大変です。そう何時間も加工時間が増すわけではありませんが。モーションプレートが最初から黒整形なのは都合がよいです。
改良品→動力改良品と来まして、次にまたリニューアルがあったとしたら、次は何を名乗るんだろうなどと思っていました。
こちらは現在のKATOの動力です。コアレスモーターとフライホイールという、アリイの時代からは別ステージの製品になっています。
ただ「走り味」みたいなものはそれぞれ違いますが、アリイ〜マイクロエースのD51の走りは今見ても通用すると思います。もちろん長期間放置していたら相応のメンテが必要だったり、調子が上がるのに時間がかかったりするかもしれませんけども。大きさが許せば今でも活用できそうです。当初やえもんデザインのD51キットのベースにもなっていましたね。
左右のダイキャストフロックを開いてみたところです。ギヤ比などは3タイプとも同じです。しかし、ちょーっと違うところがあります。
どこかで見たようなモーターとウォームがシリコンチューブでつながり、1段落としてから3つのアイドラーギヤで伝達します。
全軸ギヤ連動に見えますが第三動輪軸にはギヤがなくロッド連動のみです。また第二動輪はロッドにつながっておらずギヤ連動のみです。
このグリスの色は当初どうだったのかは不明…なぜ2色に分かれたのかも不明…。
2000年発売の「A9511 D51 882 月と鹿マーク」からだと思いますが、第一・第二動輪間のギヤがなくなり(矢印)、第一動輪はロッド連動のみとなりました。なお第一動輪の軸にはギヤが残っていますが使われていません。
こうした変更は他の製品にもたまにありますが、あまり目立った走りの変化を感じたことがありません。わかる方にはわかるかもしれないのですが。
外見的な変化はやや大きいものの、内部の伝達方式は変わりません。
これまでにダイキャスト崩壊などを経験しているからか、表面加工も以前よりはガッチリしているようで、通電部分などには手作業で被覆を削った跡がいくつかあります。
不思議なのは第二・第三動輪間にある縦に2個並んだ丸い削り痕(矢印)です。ギヤの逃げが足りなかったのか、余計な出っ張りがあったのでしょうか。私の手元に1両しかないので、個体差かどうかもわかりません。
この製品は2011年にも再生産されていますが、そちらは不明です。
ごく初期の製品には、第三動輪のシャフトが異なるものがあります。
1. A9501 D51 498(初回) |
2. A9500 D51 498 改良品 |
3. A9536 D51 498 動力改良 |
私が見たところでは、D51シリーズの中で本当に初回に発売された製品(A9501 D51 498、A9502 D51 750)のみ、細い金属軸でした。第三動輪はギヤ連動していないのでこれでよかったのでしょう。その後、A9503 D51 78(なめくじ)より他の動輪と同じ太さの黒い中空軸(ギヤなし)に変わります。
余談ですが、第二動輪はギヤ連動のみでクランクピンがついていないせいか、初期の製品では左右の位相が全然テキトーなものもありました。ほとんど同じ向きのものまで…なにせ指先で回せたぐらいですので。ただ第二動輪にはロッドやバルブギヤーが重なっているため、多少ずれている程度ならあまり目立たなかったようです。
以上たまたまここで目に留まったものを書きました。こんな違いがわかっても特に何かの役には立たないんですよね。でもあまり人目に触れないところにも、メーカーの色んな工夫や努力が続いていたらしいことは何となくわかります。それは品質向上のためだったりコスト削減のためだったり、何か失敗の復旧のためだったりと、色々な事情があることでしょうが。
最後に現在のKATOのD51と並べて終わります。
マイクロエース D51 498 動力改良
KATO D51 標準形
D51 498の動力にすれぱよかった…そのへんにあったものをひょいと撮ったもので、すみません。
マイクロエース D51 498 動力改良
KATO D51 498