Nゲージ蒸気機関車>蒸機の工作>切り抜く本「ふるさとの駅と汽車」を作る
1977年に誠文堂新光社から発売された、切り抜く本 紙で作る「ふるさとの駅と汽車」の、汽車とレイアウトを製作してみました。
2023.7.8
これはいわゆるペーパークラフトの本で、有名な 切り抜く本「日本の蒸気機関車」の翌年に発売されました。設計製作も「日本の蒸気機関車」と同じ摺本好作氏のグループです。
写真でお分かりのように、先の「日本の蒸気機関車」のようなスケールモデル的なものではなく、フリースタイル的な豆汽車とストラクチャーからなります。
当時面白そうだと思ったのはレイアウトの線路です。線路は薄緑色の紙8枚にわたって印刷されており、厚紙かベニヤ板に貼ってつなぎ合わせると、680mm×450mmのエンドレスになります。
線路中央のガイドレールに沿って汽車が走行するしくみで、引き込み線も1本付いています。走行させるためには動力部や台車を自作する必要があります。
当時、もらった図書券でこの本を買って作りかけたのですが、使用するギヤボックスが見つけられず中断していました。改めて古書を入手したので、今度こそという気持ちで取り組みました。
この本の車両の台車(下廻り)は、基本的には紙製のディスプレイ用ですが、走らせるための動力台車の作り方が載っています。自分で部品や材料を集めて作ります。
動力にはイマイのギヤーボックスを使うよう指定されています。ただ当時すでに近場では見なくなっていました。写真の「高速ギヤー」は似ていますが、減速ギヤが1個少なく汽車を作るには回転が速いです。
それで今回はギヤーボックスも丸ごと製作しました。一応本には「ギヤボックスを自作する人はこのサイズに仕上げてください」と、参考寸法が記されています。
台車外板は厚さ3mmのホオ板とプラ板で作るように指示されていますが、今は今の材料でよいだろうと3Dプリンターで作りました。ちなみにこの考えは気まぐれに変わります(笑)。
ギヤ比はわからなかったので適当です。ウォームからクラウンギヤに連動する仕組みは真似しました。
裏側には等間隔に並んだ突起が前後にあり、ガイドレールをまたぎます。
こういう構造の乗り物は遊園地などにもありそうです。
カーブが急なので駆動輪は片側のみゴムタイヤとし、他は薄いプラ車輪で適当にスリップさせます(内外輪の差動が目的)。
この作例は反時計回りに走らせることにしたので、右前方をゴムタイヤとしました。ただ指定の直径のゴムタイヤ(20mm)がなく、直径19.5mmのゴムクッションで代用しました。入手したのは分厚すぎますがガマンします。
完成した動力台車です。
こういう簡易スイッチの付いた電池ボックスって、てっきりもう絶滅したと思っていたのですが、ホームセンターなどでまだ普通に売っているのですね。
昔の安い品はこんなにしっかりしていなくて、もっとペラペラでしたけども。
これだけではその場でくるくる自転するだけなので、まっすぐ走らせるためにはガイドレールが必須です。
トレーラーを3両牽引するため、トレーラー台車を3つ作りました。3Dプリンターなので同じものを複数作るのは簡単です。
機関車のゴムタイヤ1個で全部牽けるか不安もあったので、なるべく板部分を減らして軽くしました。カーブ前後の挙動吸収のため、機関車と違ってレールをまたぐ突起は中央部に1箇所です。
車輪やその留め具とワッシャーを作るため、1両につき丸いパーツが12枚必要です。 3両で36枚ですから、作り方によっては結構大変です。
ベースには市販の薄緑色のデコパネ(A2サイズ)を使い、鉛筆で作図しました。もともとは付属の台紙(厚紙ではない色紙)を、ベニヤなどに貼り付けることになっています。
元の仕上がり寸法が680×450mmなのに対し、使ったデコパネは600×450mmと幅が80mm足りません。周囲の余白や直線部を少し切り詰めて600×380mm程度に収めました。曲線半径は変えておらず線路中心で130mmです。
ガイドレールは付属の厚さ1mmの紙に型抜きされており、それを2枚重ねて厚さ2mm・幅2mmにして接着します。
ただ、ここでは付属の厚紙を使わず、別の白ボール紙から切り出しました。
動力台車を載せてテストしています。うまく走っているようです。
トラバーサー的なポイントが1箇所にあり、そこだけ2mm角プラ棒でガイドレールを作りました。このへんを作るのが一番面白かったです。
動かすためのつまみは、割り箸を削って等幅にして接着しました。
最後に両サイドの黒ラインを入れて、線路は完成しました。外観は大体、付属台紙で作るのと同じになったかと思います。
台車のみ連結して走行テストしました。幸い問題なく走りました。
このあと製作するボディーは重さとしては大したことがありませんが、念のため動力車にはミニ4駆用のウエイトも貼っておきました。
機関車は蒸気機関車・ディーゼル機関車の2種が付属しています。
蒸気機関車の台紙は3枚あります。1枚はディスプレイ用の台車なので、使ったのは2枚です。
これをナイフで切り抜いて、山折り用の筋目を入れて折り曲げ、木工用ボンドで接着する作業をひたすら繰り返します。
キャブの部品を切り抜いたところ。窓などは先に切り抜いて、あとで外周を切り抜きました。
何か、屋根が左右両側に長いような気がするな…。
適当に切り詰めました。
天窓を付けてキャブはおしまいです。
水タンクとボイラーを接着しました。
水タンクは左右つながった一つの箱になっています。その上からカマボコ状のボイラーを接着する構造です。
ひっくり返したところです。
内部に大きな四角い空間があるので、ここに動力台車がうまく入ります。
煙突やドームなどを取り付けました。
煙室扉やドーム上のふくらみは、ゴム板の上に載せて先の丸い棒で押し付けて作りました。こういう作り方は先に発売された切り抜く本「日本の蒸気機関車」には書かれていましたが、この本では説明されていません。
何か間違えたのか、動力台車に被せるとシリンダー間の底がガイドレールにつっかえてしまい、2mm程度下から切り上げました。
これで機関車はおしまいです。
無動力の車両は全部で7種付属しています。ここでは表紙と同じホッパー車、タンク車、車掌車を作りました。
他には無蓋車、有蓋車、客車、それに除雪車があります。
組み立て中のホッパー車です。思ったほど難しくはありませんでしたが、幅1mm程度の細帯などは作図されておらず、自分で切り出して部品を作る必要があります。
完成したホッパー車です。
タンク車です。両端の鏡板に丸みを付けた際、何箇所かシワが寄っています。
車掌車です。無蓋緩急車かもしれませんね。
他にも駅、ホーム、給水タンク、車庫、石炭台、落石覆い、ブルドーザー、ダンプカーなど数多くの建物やアクセサリーが付属しています。
私は全部は要らないので、ここで完了です。
全体を通してみますと、作図や指示寸法が少々間違っているのではと思える箇所もところどころありました。今と違って当時は完全な手作業の作図ですから苦労は多かったでしょうね。切り抜く前に気づく部分もあるので、よく見て調整します。
賑やかしに、エルエスのC62のプラ模型に付属していたストラクチャーを並べてみました。
スケール感も何もあったもんじゃないですが(笑)。
鉄道模型の一歩手前といった工作ですけども、車両・線路・建物が揃うと、それなりに情景ができます。
ただ私がこの本に感じた面白さは完成品の観賞ではなく、自分で作ったものが動くというところです。
走行動画です。ダウンロード:MP4形式(2.45MB)
スイッチを入れる瞬間、前は動いたけど今度は動くだろうかと毎度ドキドキします。
同じ要領で、ゆりかもめやニュートラムなどを作っても似合うような気がしました。「ふるさとの駅と電車」にしてもいいわけですからね。