白い金山谷ノ頭

清らかな流れ、山の碧が溶け出したようだ

山ツツジ

 

5月15日、約二週間振りにTさんと山に出かけた。行き先は勿論のこと、先回登れなかった金山谷ノ頭である。先回の反省を十分に踏まえた 、リベンジである。と言いながらも情報は前回のホームページのコピーだけが頼りであった。

集合時間は前回より早い7時半、車止めのゲート前で落ち合う。ユーシンに到着したのは9時頃で前回より1時間近く早かった。ユーシン山荘を過ぎて『右 金山谷ノ頭』 の道標に従って右の砂地で急な道の方を進む、ここで息が切れた。体調の不安が脳裏をよぎった。

 
 

下降点

前方石小屋の石

 
 

9:40、前回間違えた『下降点檜洞沢 ユーシン沢』の標が見えた。 自信を持ってそこを下った。沢が分岐しているので間違いなくこのルートだと思った。左が桧洞沢で右がユーシン、岩を越した先に登山道がある。

しかし、テープは見つけたものの違う感じがした。先回の轍を踏まない為に地図を見て確認した。登りにあった大きな石にはペンキで『石小屋』と書かれていた。するとこれは石小屋ノ頭へ行くルートとなる。また戻る事になり、コピーとにらめっこになる。

 
 

 

この道標の先

本当の下降点

 

コピーには”「ユーシン 金山谷ノ頭」の道標の先に沢に下りるルートがある”と書かれているが、前回そこの赤ペンキ矢印で朝日向尾根に登ってしまった。

10:00、どこか沢に下りるルートがある筈と注意深く進むと。写真上の石に書かれた赤ペンキ矢印が見つかった。上を見ると杉の木にやはり赤ペンキで朝日向尾根へ導く矢印がある。

 
 

下りた場所

正面の滝(淵)

 

『これでは見間違うのも仕方無いね』と話し、沢に下った。フライの釣り師が居たので遠巻きに左岸を進んだ。すると滝が見えた。

上の写真では淵だけしか見えないが、私も釣り師なのでフライの彼が攻めるであろう所を正面から写真を撮る程野暮ではない。

 

滝左の道標

道標の先の急坂

 
 

10:05、「←登山道 檜洞沢 ユーシン」の道標が見えた。約30m位の凄く急坂な道で落石が心配された。10m位登ると、下から釣り人が”どこへ行くのか”聞いてきた。どうも道が間違っているらしかった。

体調不良の私は頭も回っていなかったので、間違った山名を言ってしまった。しかし、コピーに書かれている道を進んでいるからとそのまま登った。後で分かったがショートカットがあり 、それを教えようと声をかけてくれたのだった。

 
 

 
 

流れが反対になった檜洞沢

滝を巻いた道をロープで下る

 
 

10:15、登りきると向こう側は切れ落ち、沢が見えた。しかも流れは今までの流れとは逆に北側に向っていた。記憶している位置情報をクリヤし、右側の斜面に取り付き斜めに進む。

細い尾根である。しかし標高900m位なのに未だシロヤシオが咲いていた。更に道が細くなり行き止まりになった。ルートを探すと左側にロープがあった。高さ5m強の崖を下る。

 
 

下りたところの川床

 

金山谷と書かれた先を進む

 
 

沢に下りると綺麗な川床があった。そしてさっき声を掛けてくれた釣り人は、ユーシン沢の先の方にいた。ここが二つの沢の合流地点だった。

10:30、右のユーシン沢を進むと直ぐに石に『金山谷』と書かれたペンキがあった。また急な登りになった。右の朝日向尾根は同じ位置で既に1100mの標高である。

 
 

アセビの花

急坂

 
 

如何にこの尾根は急なのかが想像できる。地面にアセビの白い花が沢山落ちているが、良く見ると白いギンリョウソウもそこここに姿を見せている。

11:05、この道巾は狭くジグザグに登れない。しかも土に帰る前の葉っぱがその道を埋め尽くし、すべり易い。ふくらはぎが騒ぎ出すのも時間の問題だった。

 
 

大岩が点在

岩と対峙したブナ?

 
 

1000m付近のミツバツツジは終って、落花しているものも少なくなく、そしてその木々の数は少ない。

急坂を登り、いく分楽になったと思った。大きな石が点在していた。その大石に胡坐をかいたモミの木などもあった。

 
 

アセビが多い

ミツバツツジも僅かに

 

11:20,しかしまだまだ急坂が続いた。私の足はもうこれ以上の登りに耐える力を失っていた。Tさんに”下山ルートは同じ道を戻る事”を提案した。しかし、Tさんは臼ヶ岳の朝日向尾根 に下りることを主張した。

いつになく私も自分の意見を主張した。それほどこれ以上の登坂に自信がなかった。腰痛も発生していた。結局お互いの主張を言い合って、結論は出ず頂上についてから考える事になった。

 

 
 

シロヤシオ満開

シロヤシオ満開

 
 

痩せた尾根道を下る。左右の谷は思ったほど深くなかった。ここの登りもキツかった。何度も休んでは息を整えた。

11:40,その何度目か、前方に白い大きな塊が見えた。シロヤシオに違いないと思った。瞬間力が出た。大きな木だった。

 
 

 
 

倒木が多い

倒木が多い

 

それまで1枚もシャッターを切らなかったTさんも、遠近・明暗を駆使して撮っていた。晴れていれば綺麗な色がでたのに残念である。

この木を見た後も急坂で細い道が続き、折れた枝が道を塞いだ。完全に体力をうしなった私はもう周りの景色など殆ど見ていなかった。

 

 
 

1280mのピーク

シロヤシオ

 

11:55、写真上の『1280m』のピークに立った。腕時計の高度計は低気圧の影響か高めの1350mを表示していた。

ここはブナとアセビの木が多かった。しかし、至るところで倒木があり、それをかわしながら進んだ。

 

アセビの新芽が赤く

 

 
 

この尾根はブナも多いが、ツボミを持ったシロヤシオも沢山あった。これだけ多いと檜洞丸に勝るとも劣らないと思った。 そして雨は本降りになった。カメラは使えない。そして、ウインドブレーカーを脱いでテントにもなると言うポンチョを着ようとしたTさん、これが曲者だった。

大きすぎてその処置に困った。木の枝に引っかかり結局使えなかった。コピーにある1338mと書かれた立木も見つからない。多分ここだろうと思われるピークがあった。雲の切れ間から檜洞沢が見えた。遠方が見えたのはこれだけだった。後は20m先もガスで見えない。

 
 

 
 

シロヤシオ

シロヤシオ

 
 

13:09、小ピークで少し開けたところに着いた。一周しても目印のマークがなくなった。雨は小降りになったが周囲は全く分からない。 標高は段々と下がり、昼食も摂っていない。

この状況下でTさんも折れて、元に戻る事に賛同してくれた。ひょっとしてここは金山谷ノ頭ではないかもしれないが、『僕らだけの金山谷ノ頭にしよう』と決めた。

 
   
 

尾根道で昼食にした。雨で濡れたTさんが寒いと震えだした。やばい”中年の無理な登山”と新聞に書かれるのはいやだ。急いで片付けて登り返した。そして、Tさんの足が止まった。『周りの景色が来た時と違いませんか?』、私は 登りが苦しくて『殆ど下だけ見ていたので分からない』と応えた。木のテープに沿って更に下る。(13:45)

その先にロープが見えた。間違いに気付いて戻る。ここも小ピークで先ほどの折り返しよりは幾分広い。(下写真)体力が無い上、道を間違うと”遭難”も他人事ではない。地図と磁石で確認する。戻る方向は"南西”、先ほどの道は"北東”。 あたりを探して、北東にテープがあったときはホッとした。そしてここが本当の”金山谷ノ頭”だった。通り越していたらしい。

 
 

金山谷ノ頭分岐あり

 
 

下山中も雨が降ってきた。おまけにアラレも混じり散々な天候だった。そして檜洞沢とユーシン沢の合流部分ではロープを嫌ってショートカットの沢沿いの道を選んだ。水のかかる石はツルツルと滑った。最後は5mの滝を巻く道だった。ここは淵に身体を乗り出すように下りた。 しかもここはロープを使っておりた。そして、17時過ぎにゲートに到着した。Tさんも”折り返して正解だった”と疲れた顔で話した。

 
 

<時間>

登り

ゲート90分〜ユーシンロッジ〜35分〜石小屋沢分岐〜25分20分〜 檜洞沢分岐〜85分1280m60分*金山谷ノ頭   計315分(5時間15分)

 

下り

金山谷ノ頭〜100分〜檜洞沢分岐〜35分〜ユーシンロッジ〜90分ゲート  計225分(3時間45分)

 

合計  9時間

 

*登りの金山谷ノ頭は行き止まりまで行った時間から15分ほど引いた時間です。

<そのた>

この金山谷ノ頭はシロヤシオ、アセビの花、ウツギなどで”しろい”色が沢山あった。そして沢の川床も白く綺麗な流れである。登っている途中は二度とここへ来るかと思った山だが、新しい丹沢を見た気がする。

白を更にこの山とマッチした言葉にしようと、あれこれ形容詞を考えて見たが、結局『白い金山谷ノ頭』を表題にした。

 

注)この山はルートも不明瞭な部分が多く、かつ体力も要求されます。登る際は十分注意して下さい。

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