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モラルハラスメント

       10.暴力のない社会をつくるために


1.暴力のない社会とは

そもそも、暴力とは何なのでしょう。
暴力とは、何らかの権力を持つ者から持たない者へ、一方的に行われる
理不尽な人権侵害であると、わたしたちは考えています。
その中には、身体的なものだけではなく、モラルハラスメントを含む
精神的なものも含みます。
暴力とは、権力を持つ者が持たない者を抑圧し、支配コントロール
するための権力の濫用なのです。

暴力の中でも、見知らぬ他人からの身体的な暴力は、以前からよく
知られていました。
そして最近ようやく、児童虐待やドメスティックバイオレンスが広く
知られるようになり、親子や夫婦など、親しい間の暴力も暴力であると
認められるようになってきました。
また、ストーカーという名前が知られることによって、精神的なものも
被害だと認められるようにはなってきました。

しかし、モラルハラスメントのような、指導、教育、愛情などという名の下に
行われる精神的な暴力は、まだ、なかなか理解されないところがあります。
モラルハラスメントなどの精神的な暴力も含めて、すべての暴力が
暴力であると、きちんと認められることが大切なことなのだと、わたしたちは
考えています。

では、暴力のない社会とは、どういう社会なのでしょう。
今すぐ、モラルハラスメントを含む暴力すべてをなくすことは、
難しいことなのかもしれません。
そのような社会の中にいて、今、必要なことは、モラルハラスメントなどの
暴力が起きたときに、それを暴力であるとわかる視点です。

暴力をすべてなくすことは難しいにしても、暴力をふるわれたり、暴力を見聞き
したりしたときに、自分自身でもまわりの人にもそれが暴力だとわかれば、
次にどうするか、何ができるかを考えることができるのです。
暴力をふるわれたときに暴力だとまわりに言うことができ、まわりは
それをきちんと聞き届ける、そのような社会が望まれます。
そして、そのような社会であってこそ、暴力の構図から抜け出す方法を探し、
自分の人生を生きるという選択肢を選ぶ自由を得られるのではないでしょうか。

2.環境整備
 1)社会的なシステム


モラルハラスメントが起きたときに必要なことは、それを早期に発見し、
それが加害者の加害行為であることをきちんと見極め、終わらせ、
被害者を守り回復を助けるような手段をとれることです。
そのためには、職場の規則の中に、モラルハラスメントに対応できる条項を
設けたり、モラルハラスメントに対応できる法律を整備したりすることが
必要だと思われます。

さらに、今後、新しい被害を生まないための環境作りも必要です。
職場の中での人権意識を高め、良好な人間関係を保てるような職場環境を
整えることは、モラルハラスメントを防ぐだけではなく、そのことによって、
結果的には企業としての実績も上げられると思われます。
職場や社会は、そのような環境を整えることに努力する必要があるでしょう。

 2)わたしたちにできること

今、わたしたちにできることは何でしょう。

まず、モラルハラスメントが起きたときの早期発見と、被害者をまわりの人が
さらに傷つけてしまう二次被害を防ぐために、起きていることが
モラルハラスメントだと見極める視点を育てることが大切です。
そのためには、モラル・ハラスメントのことを、わたしたちひとりひとりが
正しく理解する必要がありますし、そのために、なるべく広く、
モラルハラスメントの存在を知らせる必要があります。

では、新たなモラルハラスメントを生まないためには、どうしたら
いいのでしょう。
モラルハラスメントは、コミュニケーションが成り立たない状況で起こります。
モラルハラスメントが、コミュニケーションを成り立たなくさせるともいえます。
ですから、人権意識を基本にした真のコミュニケーションをうち立て、
保つ必要があります。

そのために、アサーションの考え方や方法、人権感覚などを学ぶことは
役に立つと思います。
また、閉塞された密室状態で起こるため、常に外部の人たちとつながりを保ち、
風通しをよくしておくことも大切です。
また、何より、小さな頃から家庭の中で、また学校で、年齢や性別に関係なく
お互いの存在を尊重し合うという、真に人として対等な人間関係を学ぶことが
大切でしょう。
そのためには、実際にまわりのおとなたちが、子どもたちとも、そして
他のおとなたちとも、お互いを尊重し合いながら関係を結んでいくことが
大切なのです。
それによって、今現在の、そして未来のモラルハラスメントを防ぐ助けに
なるでしょう。

3.加害者の更生と回復
 1)暴力であるとの認知


モラルハラスメントが起きたとき、加害者自身、自分の行為が暴力であると
なかなか認めません。
しかもまわりの人たちも、気づかない場合が多いようです。
しかし、もし暴力であるとまわりが認知したとしても、今の現状として、
被害にあった人がその場所を離れ、行動を抑制されています。
そもそも、わたしたちには、今いるその場所で、安心して安全に暮らす
権利があるはずです。
行動を抑制されるべきは、その権利を侵害した加害者の側のはずです。
モラルハラスメントに限らず、暴力に関しては、加害者が全面的に責任を
負うべきだと考えます。

そしてそのことは、加害者自身が自分の行為を暴力であると認知する
助けにもなるのだと思います。
まず、自分の行為が暴力であるとわかり、それをきちんと認めることが、
加害者の更生と、加害者の過去における被害体験からの回復への
スタートになるのだと思います。
そしてそれは、新たな加害行為を防ぐことにもなるでしょう。

 2)過去の被害からの回復

加害者は、過去に何らかの虐待の被害を受け、そのときに適切なサポートを
受けられず、そこからの回復ができないままでいることが多いようです。
ですから、もし、その過去の被害からの回復がはかられ、加害者が、
モラルハラスメントを行ってしまうような、自分自身のこだわりに気づくことが
できれば、新たな加害行為は防げるようになるのかもしれません。
        


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