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3 「母性神話」
わたしたち母親が、イライラしたり不安になったり罪悪感をもってしまう背景には、
社会からのプレッシャーがあるようです。
わたしたちのまわりには、根拠がないにもかかわらず、
ほとんどの人が信じてしまっている、さまざまな社会的な思い込みがあります。
これらは「神話」と呼ばれています。
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その中でも、まず「母性神話」について見てみましょう。
「母性神話」とは、
「女性にはもともと、母性が備わっている」とか、
「子どもを産めば、自動的に母性がわいてきて、自然に子どもの世話をしたくなる」
というようなものです。
つまり、「女性にとっては母性は本能である」、
そして本能であるがゆえに「女性は常に母性を感じている」ということなのでしょう。
この「母性神話」があるために、
「ダメな母親だ…」と、母親が自分で自分を責めるだけでなく、
夫、親やきょうだい、友だち、近所の人など、まわりの人から
「母親のくせに」と非難されることもあります。
残念ながら、医者や看護師、保健師、カウンセラー、保育所や幼稚園の先生など、
専門家と言われる人たちから言われることもあるようです。
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でも実は、子育ては本能ではなくて、学習なんだと言われています。
「母性」本能と呼ばれるものは、小さくて弱いものを見ると守りたいと思い、
世話をしたくなるような、種の保存のための本能ですが、
これは生まれつき、ほとんどの人の遺伝子の中に組み込まれていると言われています。
しかもそれは、女性だけにあるのではなく、男性にも同じようにあるのです。
つまり、「母性」本能は男女ともにあるのですから、
「母性」本能という名前そのものを変える必要があると考えます。
また、その本能を行動に結びつけるのは、睡眠中に作られるホルモンと、
それが伝達されやすくなるための経験だということがわかってきました。
つまり、たとえ本能があったとしても、それを行動化するためには、
充分な睡眠と学習が必要なのです。
ということは、睡眠不足の疲れがたまっている状態では、
たとえ「母性」本能があったとしても、それを発揮しにくくなるということでしょう。
また、男女とも、子どもを育てる中で、
少しずつ行動化できるようになってくるものなのだと思います。
また、わたしたちは、本能があってそれを行動化するための条件が整っていても、
いつも確実に行動に移すかというと、そういうわけでもないとは思いませんか。
わたしたちは、本能のままに生きているわけではなく、
それをすることをためらうようなものがあったり、先に延ばす理由があったりすると、
本能に忠実に動くわけではありません。
現実のわたしたちは、子どものことをかわいいと思い、世話をしたくなるときもあるし、
そうでないときもあります。
つまり、「最初から、いつもいつも愛情深く子どものことだけを考える母親」というのは、
幻想でしかありません。
ですから、自分やまわりの母親たちの誰かが、
幻想の通りでないからといって、その母親を責める必要はないのです。
また、「母性神話」によるもうひとつの弊害があります。
それは、「母性神話」によって、
「女性は子どもを産んでこそ一人前だ」というような思い込みも生まれることです。
そのため、出産歴のない女性にプレッシャーを与えてしまいますし、
出産歴のある女性に比べて、出産歴のない女性が半人前で劣る人だと
見られてしまうこともあるのです。
女性を分断してしまうそのような考え方は、
ぜひ、なくしていきたいと考えています。