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認 知 症
日々の介護のために
○ 基本的な考え方
・認知症の人の失われた能力は、再び戻ってこないという事実を
受けとめることは大切です。
・認知症の人の言う言葉や動作を通して、その人が何を「考えて」いるのか
ではなくて、何を「感じて」いるか、何を「思って」いるかという感情や
感覚的な面を、わかってあげることが大切です。
・食事のとき手で食べても、サラダにみそ汁をかけて食べても、夜寝るときに
パジャマに着替えなくても、靴下がティッシュペーパーケースの中に
入っていても、害がなければそれでよしとすることができれば、
介護者の気持ちは、かなり楽になるかもしれません。
○ 介護のヒント
・介護者が充分な休息をとることは、とても大切です。
・同じ立場の人たちと、家族の会などで語り合いましょう。
・ほんのちょっとの興奮(たとえば来客、笑い声、物の置き場所の変化など)は、
認知症の人の調子を不安定にさせてしまうということを知っていてください。
・認知症の人とは、短い言葉や簡単な文を使って会話をしましょう。
・わかりうる能力の範囲内では、繰り返しやさしく教えてあげることは、
認知症の人にとって、とても手助けになります。
新しいことを覚えるのは難しいのですが、ときには、慣れてくることも
あります。
・同時にいくつものことをせず、一連の動作を細かく分け、ひとつひとつ
してもらいましょう。
服を着るにしても、トイレに座るにしても、薬を飲むにしても、
たくさんの動作が複雑に組み合わさっているものです。
そして、そのひとつひとつの動作のやり方を、ゆっくり説明して
あげてください。
・こちらの働きかけに認知症の人がどう反応するか確認することは大切です。
今、その人がどの程度の能力があるのかの事実を把握することができますし、
それによって話し方や言葉の選び方、身ぶりを交える必要など、
わかってもらうための工夫をすることも可能になります。
・なぜその人がそういうことを言うのか、理由を考えてみるのは必要かも
しれません。
たとえばある人は、「人には頼みたくないの?」と聞かれたとき、「いいや、
なんも飲みません」と答えました。
一見まったく関係のない答えのように聞こえますが、もしかしたらその人には、
「ひとにはたのみたくないの」の最初から6文字目から、つまり、
「のみたくないの」だけが意味のある言葉として頭に入ってきたのかもしれません。
このようにちょっと考えてみることで、認知症の人のことを「おかしな答えをする人」
などと思わず、コミュニケーションをとれるようになるかもしれません。
○ やり場のない怒りについて
「なぜこの認知症の人は、こんなにいらいらさせるようなことばかりするのだろう」
「なぜ家族は、私にばかり介護をさせて、何も手伝ってくれないのだろう」
「なぜ周りの人は、理解をしてくれないのだろう」
「なぜこういうことが私に起きたのだろう」・・・。
認知症の人の言動にいらいらさせられているとき、怒りを認知症の人に
ぶつけると、状況を悪化させてしまいます。
そんなとき、なぜ、その人がそういうことをするのかの原因がわかると、
事態は少しは好転します。
また、同じような状況の人と、家族の会などで話をすることは、
とても助けになります。
さらに、家族がみんなで介護をしている場合と、ひとりで背負っている
場合とでは、同じようなことが起きても、いらいらの度合いは大きく違います。
もしかしたら、家族間での話し合いや家族間の関係を見つめ直すことも、
必要なのかもしれません。
がまんできずに認知症の人に対して怒鳴ったり叩いたりすることもあるでしょう。
それは、介護者が、ひどいことをしたと罪悪感を感じて自分を責めるべきこと
というより、介護者が助けを必要としていることへの警告です。
誰もがフルタイムの介護者に向いているとは限りません。
認知症の人に昔つらい思いをさせられた人の場合はなおさらです。
そのとき、その人にできる一番責任のあるやり方は、
誰か他の人が日々の介護をすべきだということを認めることかもしれません。
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