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認 知 症
 「問題行動」と言われるもの 

認知症の人と一緒にいると、「問題行動」と一般的に言われるようなことが
次々起こります。
あてどなく歩き回る、便をさわる、同じことをひんぱんにくり返すなどは、
周りの人をいらいらさせるでしょう。

ただ、介護をする側にとっては「問題な」行動だと思えるのですが、
認知症の人にとっては、不安感の表れなのだと思います。

何か困ったことが起きたときには、専門家や「家族の会」などに
相談してください。
何かいい知恵を貸してくれるかもしれません。



○ あちこちをあてどなく歩き回る
 いろいろな原因で起こります。
 @何かの用事で外に行き、迷子になって自分の家をさがし続ける
 Aトイレなどの場所がわからず、家中をさがし、外までさがしに行く
 B引っ越しをしたことを理解できず、自分の家に帰ろうとさがし続ける
 C家族がわからず、見知らぬ土地で見知らぬ人に囲まれていると
   感じている痴呆の人が、知っている場所や人をさがそうとする
 D興奮状態、焦りや退屈だと思う気持ち、運動不足など、
 その他にも、いろいろなことが考えられると思います。

 外に出ようと思ったときには、鍵をかけていても、壊してでも
 外に出てしまいます。
 特に夜間の場合は、認知症の人にとっては危険であり、介護する
 人たちにとっては、疲れ果て、いらいらしてしまうような出来事です。

 声をかけたり、家に連れて帰ろうと思うときには、「対決」という
 感じではなく、気を散らすような働きかけをするといいかもしれません。
 大きな声で追いかけたりすると、かえってさらに逃げようとしたり、
 暴力的な行動をとったりしますが、「一緒に歩きましょう」と言って、
 ぐるっと一周すれば、そのまま家に戻ったりすることもあるようです。

 近所の人にあらかじめ説明をしておくのもいいかもしれません。
 家族だけでみるというより、社会全体で見守ることが必要なのだと
 感じます。

○ 便をさわる、つける、隠す
 認知症の人は便をさわることがあります。
 手についたものをシーツや壁につけたり、便のついた下着をタンスや
 食器棚に隠したりします。

 介護者にとっては、それを見つけたときのショックは大きく、また、
 その後かたづけも大変なものです。

 認知症の人は、便だと思っていなかったり、手ではさわらないものだと
 わかっていなかったりしますし、とにかく汚いから何かで拭くとか、
 とにかく隠さないといけないということだけしか頭になくて、そういう
 行動をとったりします。

 トイレに黙ってひとりで行き、便を手で拭いてしまうときには、
 トイレのドアやポータブルトイレのふたにドアホンをつけ、
 トイレに行ったのが音でわかるようにして、必ず誰かが介助する
 という方法もあります。

 認知症の人と一緒に暮らすコツは、認知症の人を責めないことと、
 家族みんなで介護をすることです。

○ 物を隠す・なくす
 認知症の人は、物をどこに置いたか忘れてしまいます。
 また、大事なものだからと物を隠して、どこに隠したのかを
 忘れてしまったりします。

 認知症の人にどこに置いたかを聞いても覚えていないし、
 問いつめると過剰反応を起こしてしまうこともあります。

 ゆったりと一緒にさがすということができれば理想的です。
 その他、
 @隠し場所を減らす
 A鍵やメガネなど必要なものやよくなくなるものは、同じような
   予備をそろえておく
 Bゴミ箱は捨てる前に必ず中をチェックする、
 などのことが考えられます。
 隠し場所にもパターンがあることがあります。
 たとえばメガネが食器棚にいつもあっても、そこでかまわないと
 家族が思えれば、少し気持ちが楽になれるかもしれません。

○ 夕方になると起きてくる問題
 認知症の人は、夕方になるとさらに症状が悪化する傾向があります。
 夕方になると、認知症の人本人も疲れていますが、介護者はもっと
 疲れているわけですから、余裕を持った対応などできない状態に
 なっているかもしれません。

 また、夕方になると家族が帰ってきて人数が増える、
 洗濯の取り込みや食事の支度など家事に忙しいなど、
 家中があわただしい時間帯です。
 そういうときに、周りで何が起きているのか判断できない認知症の人が、
 混乱し、焦ってしまうこともあるでしょう。
 また、そういうときに介護者の注意を引きたくて何かと注文を
 つけたりするかもしれません。

 女性で、「家事は私の仕事」と思い込んでいる人の場合は、
 夕方になると今まで忙しかったわけですから、落ち着かなくなるのも
 わかるような気がします。

 その他、病気のこともありますから、専門医に一度相談してみると
 いいかもしれません。

その他、介護者がとてもいらいらしてしまうことはたくさんあります。
ものをいじりまわしたり、介護を拒否したり、家具を押しやったり、
家やデイケアセンターから抜けだしてしまったり、台所のガス台の火を
つけっ放しにしたり、水道の水をすごい勢いで出しっ放しにしたり、
また、5分おきに何時間もの間、同じことを聞いてきたり、同じ動作を
くり返すこともあります。

本人にとっては理由のある無理もない行為なのですが、
介護者にとっては、心身ともにとても疲れることです。



問題が起きる原因はさまざまで、解決の仕方も人によって違います。
ただ、介護者が疲れていないときの方が、上手な解決ができるようです。
また、介護者の気持ちが安定していると、認知症の人にも安心感を
与えることができ、それだけでも認知症の人の行動は、ずいぶん違ってきます。

誰かひとりが何もかも抱えてしまわないよう、家族全員、そして社会的な
資源の活用など、いろいろな人が介護を分担し、それぞれが
自分の時間をきちんととれるようなくふうが必要です。

何か問題が起きたときは、なぜその人がそうするのか、薬の副作用なのか、
何か他の病気のためなのか、見たり聞いたりができにくいのか、
何がその人をいらだたせているのか、その原因は取り除けないか、
別の関わり方はできないかなど、もう一度よく観察し、考えてみることが
役に立つかもしれません。

そのとき、認知症の人の立場になって、考えてみるのは有効です。
本人は、自分ができなくなっていることを自覚していません。
その人がどう感じ、どう考えているのか、想像してみると、
とんでもない行動だと思っていたことが、無理もないことだと思えることもあります。



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