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認 知 症
 想像してみませんか? 

ちょっと、想像してみましょう・・・。

あなたは今、自分がどこにいるのかわかりません。
周りは知らない人ばかりです。
白衣を着た人が、「ここは病院ですよ」と教えてくれるのですが、
すぐに忘れてしまいます。

子どもたちが面会にきたとき、
あなたは、「どうしてちっとも来てくれないの」と文句を言いました。
昨日も来てくれていたのですが、記憶していられなくなっていたのです。
「昨日も来たよ」と言われると、うそをつかれていると思いました。

あなたは退院して、子ども夫婦と暮らすことになりました。
自分の部屋だと言われたところに、自分のものは少しはありますが、
すべてがあるわけではありません。
すると、入院している間に盗まれてしまったと思いました。

あなたは、しょっちゅうわけのわからない不安と恐怖におそわれます。
でも、その恐怖が何なのかを説明することはできません。

あなたは、残っているものが盗られてはいけないと思い、
隠しておくことにしました。
でも、自分が隠したことさえ忘れてしまいました。

突然怒りがわいてきます。
でもその怒りは、自分でもわけのわからないものなのです。

物はなくなってしまい、
記憶は突然よみがえったかと思うと、急に全部消えてしまいます。
あなたは自分がどこにいるのか、何をしようとしているのかわかりません。
たとえしたいことがわかっても、
そのためにはどうすればいいのか、わからないのです。
あなたは混乱します。

トイレの場所がわからない、お風呂の場所もわからない。
お風呂に入るときって、まず何をしたらいいの?
洋服ってどうやって脱ぐの?
ボタンは? ジッパーは?
これは何? 何に使うの?・・・

あなたは、迷子になったような気持ちです。
不安で、心配で、無力感を感じます。

誰も助けてくれない。
誰も何もしてくれない。
私はひとり・・・。

誰かが自分の大切なものを持っていってしまう。
あなたは、近くにいる人を疑い、責めてみるのですが、
すぐに疑っていることを忘れてしまいます。
(でも、疑われた人は、忘れようとしても忘れられません。)

朝になると、誰かが迎えに来てくれます。
でも、あなたは、
なぜそこに行かなければならないのかわかりません。
それでもそこに行くと、たくさんの人たちがいて、
一緒に話をしたり、ゲームをしたり、食事をしたりします。
楽しい場所なのですが、家に帰ってから、
1日の出来事を家族に話すことはできません。
あなたは、憶えていないのです。

数年後、あなたは老人ホームに入りました。
最初の数日は、不安に思い、混乱しましたが、
慣れてくるとそこは心地よい場所でした。

ときどき誰かがやってきます。
あなたのことをよく知っているように、
とても親しげに話しかけてくれます。
でも、あなたはその人が誰なのか、わかりません。

「今、こう言ったでしょ?」とか、
「私を、憶えてる?」などと言われることもありますが、
それはとてもきらいです。
何もわからず、何も悪いことなどしていないのに、
責められているような気がします。

何も言われずに、大事にされるときが、
一番幸せな時間です。


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