『普通のラーメン』(文:東海林さだお) 読んでネ。(^ ^;

    最近のラーメンブームの過熱ぶりはすごい。    
  ラーメン好きの人たちの会話の内容もすごい。    「渋谷の評判店Kは
   中細ストレート麺を使っているが、
   あのスープにはむしろ
   熟成多加水
   平打ち太目ちぢれ麺のほうが合うと思う」    「いや、ぼくは
   家系御用達ブランド酒井製麺の    
   太目ストレートにすべきだと思う」  「背脂チャッチャ系の有名店Sの
   背脂の粒はもう少し小さいほうがよい」     「中野のKは水にもこだわっていて、
   逆浸透性浄水装置ろ過水を使っているから    
   スープが最後まで濁らない」  「井出系と車庫前系の中間の味で勝負している   
   和歌山ラーメンのMは、
   もっと車庫前系の味を出してほしい」  「『元祖一条流・がんこ十六代目』の近くにある   
   『元祖一条流・がんこ総本家』の
   ”悪魔の日”にぜひ一度参加してみたい」
    ↑       ↓    カーソル↑をイラストの上に置いて見てね。   ↓    ↑
   ナンダコリャ。
   と、誰もが思うようなことを、
   みんな真顔で語り合っている。    

         丸写しです。  「今度は普通のラーメンが怖い」
                 ★新日本トホホ普及協会    
   


『紹介おもしろ文庫part3』
文春文庫『ゴハンの丸かじり』 東海林さだお著(476円+税)70pより、

    普通のラーメン

                を原文まるごと紹介してみたい。
                 (やっぱり、絵はガマンしてネ)
                  「ここで笑わないと笑うトコもうないよ」

  普通のラーメン

 最近のラーメンブームの過熱ぶりはすごい。
 ラーメン好きの人たちの会話の内容もすごい。
「渋谷の評判店Kは中細ストレート麺を使っているが、あのスープには
むしろ熟成多加水平打ち太目ちぢれ麺のほうが合うと思う」
「いや、ぼくは家系御用達ブランド酒井製麺の太目ストレートにすべき
だと思う」
「背脂チャッチャ系の有名店Sの背脂の粒はもう少し小さいほうがよい」
「中野のKは水にもこだわっていて、逆浸透性浄水装置ろ過水を使ってい
るからスープが最後まで濁らない」
「井出系と車庫前系の中間の味で勝負している和歌山ラーメンのMは、
もっと車庫前系の味を出してほしい」
「『元祖一条流・がんこ十六代目』の近くにある『元祖一条流・がんこ総
本家』の”悪魔の日”にぜひ一度参加してみたい」
 ナンダコリャ。
 と、誰もが思うようなことを、みんな真顔で語り合っている。
 彼らはインターネットで情報を交換しあっているから、新規開店の店が
おいしいとなれば、一か月ぐらいでその店は行列店となる。
 最近評判の店といえば、「麺屋武蔵」「くじら軒」「香門」「山頭火」「光
麺」「竈」「支那そばや」といったあたりらしく、
「『竈』のくんたま、たまんないね」
「『支那そばや』の幻の豚、金華豚、黒豚桃園のチャーシューというの、
ぜひ一度食ってみたいね」
 というような会話になる。
 くんたまというのは燻製の卵のことだ。
 彼らのラーメンに対する取り組み方は真剣だ。
 インターネットでいちはやく情報を入手し、いちはやく駆けつけ、い
ちはやく並ぶ。
「三十分も並んだんだから、まずかったら承知せんけんね」
 の意気込みで目を三角に改造して取り組む。
 まるでワインをテイスティングするソムリエのようだ。
 まず麺を少し高くかかげ、色、太さ、ちぢれ具合を確かめ、うなずき、
自分は麺道五段なんだかんな、なめんなよ、というふうに店主を見や
る。
 次に麺をハゲシクすする。ハゲシクすするほどプロっぽく見えるから
だ。
 ハゲシクすすりすぎてムセているのがカウンターに二人はいる。
 ムセそうになってこらえているのが一人はいる。
 麺を飲み込んで、ほんのちょっとだけ首をかしげ、それから思い直し
たようにウンウンと二度うなずき、また店主を見やる。
 次にスープを少しすする。すすった姿勢のまま、視線を遠くにはわせ、
判断に迷っている風をよそおったのち、こんどは大胆にすすり、なにや
らニンマリと頬えんだのち店主を見やる。
 だが、店主からは完全に無視されている。
 メンマを取りあげて噛みしめ、うなずき、チャーシューをつくづくと眺め
たのち口に入れ、ハゲシクうなずき、さっきからうなずいてばかりいる
のだが店主には無視されている。
 食べ終えて立ちあがり、金を払いながら、
(ご主人! 麺とスープがドンピシャ)
 というふうにニッコリとうなずいて店を出てくるのだが、仲間には、
「なんだい、噂ほどじゃないじゃないか。スープのキレにもう一つコク
がなく、将来に期待したい」
 なんてことを言う。
 こういう人たちの中には、ラーメンを年に300食、400食という
のがざらにいるという。
 ナンナンダ、コイツラは。
 彼らはラーメンにハゲシク期待して出かけていくから失望も大きい。
 食べたあとの心もすさむ。
 食事というものは、本来食べて和むもの、食べて満ちたりるものであ
るはずなのに、食べて心がすさんだんじゃあ、どうしようもない、
 ぼくの西荻窪の仕事場から歩いて六分ほどのところに、昔ながらの中
華料理屋がある。
 老夫婦だけでやっている店で、メニューはラーメン、タンメンから始
まって、チャーハン、焼きそば、中華丼、天津丼、八宝菜、酢豚まで
あるという店だ。
 ぼくはこの店に、ラーメン、タンメン、チャーハンのいずれかを食べ
に行くのだが、この店のラーメンはご想像のとおり、なんの変哲もない
ラーメンだ。
 昔ながらの醤油味で、スープの表面に小さな鶏ガラの脂が浮いていて、
ナルトが入っていて、数本のメンマ、薄く切ったチャーシュー一枚、海苔、
麺はややちぢれ気味の中細麺。
 このラーメンを、近所の買い物帰りらしいおばさんたちがよく食べに
くる。
 店主と知り合いらしい人が多く、お天気の挨拶を交わしたあとラーメ
ンを注文し、感動するわけでもなく、失望するわけでもなく、大きくうな
ずいたりするわけでもなく、ただ淡々と食べて、淡々と立ち上がり、淡
々と買い物袋を取りまとめ、淡々とお金を払って出て行く。
 この店のラーメンは特別においしいか、と訊かれれば、特別にはおい
しくないと答えざるをえない。
 まずいか、と訊かれれば、はっきりまずくないと答えられる。
 もともとラーメンは、期待して目を三角にして食べるものではなかっ
たはずだ。
 いつからこんなことになってしまったのか。

 
 

 

 

   まず麺を少し高くかかげ、
   色、太さ、ちぢれ具合を確かめ、うなずき、
   自分は麺道五段なんだかんな、なめんなよ、   
   というふうに店主を見やる。   次に麺をハゲシクすする。
   ハゲシクすするほどプロっぽく見えるからだ。      ハゲシクすすりすぎて
   ムセているのがカウンターに二人はいる。      ムセそうになってこらえているのが一人はいる。   

 
 


    シーズン突入を前に、
    わたくしはこの国のソーメン事情について、    
    一言苦言を呈しておきたい。    
ソーメンはエライのか

    ↑クリックしてネ。






「ゴハンの丸かじり」 東海林さだお著。いつもの丸写しです。(^ ^;
                               麺つながりです。見てネ。(^ ^;
 
 

   人によって好みは異なるだろうが、
   チャーシューは脂の多い三枚肉、
   バラ肉にとどめを刺す。
   豚肉のおいしさは脂のおいしさ。
   チャーシューのおいしさも脂のおいしさ。   
   ナーニが肩ロースだ、
   ナーニがモモ肉だ、
   ナーニがウチはヒレです、だ。
チャーシューの行く春






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    麺を飲み込んで、
    ほんのちょっとだけ首をかしげ、    
    それから思い直したように
    ウンウンと二度うなずき、
    また店主を見やる。

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