「川 義」(三鷹)

 三鷹駅から歩いて10分ほど、住宅街のなかにひっそりと店を構えている。店内は、田舎の納屋を意識したような民芸調。壁には、編み笠、蓑笠、古い柱時計など、べらぼう凧まで飾ってある。テーブルは一枚板、椅子も自然木の丸太を切ってつくったものである。座敷の部分もあるが、合わせてせいぜい20人入れるかどうかという感じだ。いつもBGMに演歌がかかっているので、民芸居酒屋の雰囲気もある。
 ソバを食べる前の一杯はやはり日本酒がよい。ここでは、飛騨古川の「白真弓・やんちゃ酒」を出している。しっかりした米の味を感じる酒で、大徳利からコップに並々と注いでくれる。酒の肴には、「そばがきの唐揚げ」、「そばたんぽ」、「そばがきの揚出し」などの珍しいそば料理の数々を食べてみたい。たとえば「そばがきの唐揚げ」は、見た目は鳥の唐揚げにそっくりだが、中はふんわりとしたそばがきで、なかなかユニークな食感と味わいである。

 冷たいせいろソバは、「十割そば」(850円)と「田舎そば」(800円)の2種類。いずれも蕎麦の風味豊かな細打ちで、十割そばのほうが心持ちざらつき感がある。しっかりしたコシもあっておいしいソバである。ソバツユの旨みが増せば、さらにおいしくいただける感じである。
 店主は、「よい道具がおいしいソバをつくる」という独特のそば哲学を持っているようだ。毎夏、蕎麦の産地である北海道の幌加内の「新そば祭り」に参加して、そのソバ打ち技術を披露しているそうである。一本筋の通ったソバ打ち職人の店である。

味4、雰囲気4、対応3、CP3 計14

評価時期 平成12年10月16日      

データ 三鷹市下連雀3−18−8 0422−43−3505 11:30〜20:30 水曜休み

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「そば芳」(国立)

 国立駅南口のブランコ通りという、小さなショッピング街の中に、余り目立つことなく暖簾を掲げている。店はそれほど広くなく、1階は16人ほどでいっぱいになってしまう。2階には、ご主人の蕎麦打ち場と若干の席がある。あまり飾り気のない店内で、やや暗い印象も受けるが、女将さんの対応は気さくで、居心地は悪くない。
 ここのソバは、東京ではあまり見かけない、しっかりとした噛みごたえのある硬いソバ。山形のソバにありそうな、黒っぽくて、太くてコシのある田舎ソバである。普通の「せいろ」が530円、大盛の「せいろ」が780円。平日は、ご飯と天ぷらのつく「そば定食」(840円)などもあって、地元の人たちに愛好されている。
 軽く一杯やる人のために、お酒と肴も少し用意されている。日本酒は、「菊正宗」のほかに、静岡の「磯自慢・本醸造」と新潟の「麒麟山・生酒」を置いてあるのが興味深い。酒の肴は、「板わさ」、「冷奴」、「山芋千切」などで、取り立ててコレというものはないが、かえってこの店らしくてよいのかもしれない。
 けっして肩肘を張ることなく、自然体でマイペースの営業を続ける、個性的な蕎麦屋である。

味3、雰囲気3、対応3、CP3 計12

評価時期 平成12年10月23日

データ 国立市中1−9−6 042−577−1481 11:30〜19:30 金曜休み

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「そばせん」(東小金井)

 東小金井駅の北口から歩くこと10分足らず、それほどの住宅街ともいえない場所にぽつんと暖簾を出している蕎麦屋である。まわりに他の商店があるわけでもないので、何かのついでに立ち寄るといった感じではない。しかしながら、わざわざソバだけを食べに行く価値がある店である。
 この店は、石臼挽きの自家製粉にこだわっている。電動の石臼でゆっくりと丁寧に挽いた蕎麦粉を手打ちで仕上げ供するので、みずみずしいソバをいただくことができる。冷たい「もり」は680円、倍量の「重ねもり」が1130円である。中細打ちのソバは、香り高く、ヌメリのある、なめらかな口当たり。風味よく、しっかりとコシもあって上質である。
 ツユはややしょっぱい感じもするが、バランスは悪くない。

 また、ここの名物「肉汁そば」(900円)もおいしい。良質な豚肉とネギの入ったつけ汁に、ソバをからませて食べるのだが、豚の旨みが汁に溶け込みよい味を出している。豚肉の汁と聞くとしつこそうな感じもするが、意外にあっさりとした味わいで、ソバを食べ終わった後にはソバ湯を加えてすっかり飲むことができる。1330円の「鴨汁そば」にくらべて、お値打ちかもしれない。
 店内はテーブルがいくつか配置され、椅子席18席のみ。こじんまりとしていて、家庭的な雰囲気である。ひっそりと、あまり目立たず営業を続けている蕎麦処だが、こだわりのおいしいソバを打っているので、今後の繁盛を期待したい。

味4、雰囲気3、対応4、CP3 計14

評価時期 平成16年4月6日

データ 小金井市梶野町1−6−22 рネし 11:00〜14:30 18:00〜20:00 木曜、第1・第3水曜休み

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「山 泉」(西国分寺)

 西国分寺駅から歩いて10分ほど、けっして立地条件がよいとは思えない場所に店を構えているが、日曜日など空き席待ちになるほどの繁盛ぶりである。この店も、石臼で手挽きの自家製粉にこだわっている。確かに、店内の座敷のガラス越しには、かなり広い石臼挽きと手打ちの作業スペースが確保されている。
 こだわりの手挽き・手打ちソバは、「せいろ」(700円)と「田舎」(800円)の2種類。
 「せいろ」は、みずみずしく風味抜群の細打ち。ツユをつけずに食べてもおいしい味わいである。
 「田舎」は、かなり黒っぽい色だが、同じく細打ち。ザラツキのある食感と蕎麦皮の野趣あふれる風味が特徴である。やや短く切れてしまっているのは残念だが、おそらく数秒単位の微妙な茹で具合なのだろう。

 ツユもこだわりのようで、個性的。熟成感のある、まろやかな醤油味が表に出ていて、まったりとしている。かなり濃い口なので、あまりたっぷりと浸すと、繊細なソバの風味が失われてしまう。個人的には、もう少し薄めのほうが、ここのソバの味わいを生かせるように思える。
 その他のメニューでは、鴨ダシのよくきいた「鴨せいろ」(1200円)もお薦めである。
 ソバを食べる前に、エビスビールや銘醸地酒をいろいろと味わうこともできる。ボリュームのある「そばがき」は、硬からず、軟らか過ぎず、よい食感で、酒の肴に最適である。他に、「たたきのり」、「とりわさ」、「厚焼玉子」、「焼みそ」、「さしみかまぼこ」など、蕎麦屋らしい定番の肴もそろっている。

 毎日毎日の石臼の手挽きは、好きでなければできない大変な作業である。ご主人の旨いソバに対する愛着を感じさせる蕎麦屋である。

味4、雰囲気4、対応3、CP3 計14

評価時期 平成18年2月19日

データ 国分寺市西元町2−17−16 042−327−7400 11:30〜16:00頃 木曜、第2水曜休み

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